障害福祉サービス「重度障害者等包括支援」の人員基準をやさしく解説(基準第127条)
記事の概要:
「重度障害者等包括支援」は、特に重い障害がある方に対して生活全般の支援をまとめて提供する障害福祉サービスです。事業所がこのサービスを提供するためには、法律に定められた人員基準を満たす必要があります。本記事では、厚生労働省の通知文書に基づき、基準第127条で定められた「従業者の員数」に関する要件――特にサービス提供責任者の配置とその条件について、やさしくシンプルに解説します。
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重度障害者等包括支援とはどんなサービス?
重度障害者等包括支援とは、常に介護が必要なほど重度の障害がある方に、複数の障害福祉サービスを組み合わせて包括的に提供するサービスです。たとえば、居宅介護(ホームヘルプ)や重度訪問介護、短期入所(ショートステイ)などを一人ひとりのニーズに合わせてまとめて提供します。これにより、最重度の障害がある方でも安心して地域で生活を続けられるよう支援します。重度障害者等包括支援では、利用者ごとに幅広い支援計画を立ててサービスを調整する必要があります。そのため専門的な役割を担う職員が欠かせません。
サービス提供責任者って何?どんな役割?
サービス提供責任者(サ責)は、障害福祉サービス事業所においてサービスの提供を取りまとめる重要な役職です。具体的には、利用者一人ひとりのサービス計画(ケアプラン)を作成し、適切な介護サービスが提供されるようヘルパー等スタッフの調整・指導を行います。簡単に言えば、サービス提供責任者は利用者に対するサービスのコーディネーター兼管理者です。重度障害者等包括支援では、利用者のニーズが多岐にわたるため、このサービス提供責任者が特に重要になります。
人員基準(基準第127条)で求められる配置と人数
法律の基準第127条では、重度障害者等包括支援を行う事業所ごとにサービス提供責任者を1人以上配置しなければならないと定められています。重度障害者等包括支援の利用者は様々なサービスを必要とするため、臨機応変な対応や総合的なサービス調整が求められます。そのため事業所には最低でも1名、サービス提供責任者という役割の職員を置く必要があるのです。
ポイント: 複数のサービス提供責任者を配置することも可能ですが、少なくとも1人は常勤(フルタイム)である必要があります。非常勤のみで運営することはできないので注意してください。
サービス提供責任者になるための2つの条件
では、誰でもサービス提供責任者になれるのでしょうか? 実は法律でサービス提供責任者に就ける人の条件が決められています。重度障害者等包括支援のサービス提供責任者は、次の2つの要件両方を満たす人でなければなりません:
相談支援専門員であること
相談支援専門員とは、障害福祉分野のケアマネージャーのような存在で、サービス等利用計画(ケアプラン)を作成する専門資格を持つ人のことです。自治体から指定を受けて相談支援業務を行うプロフェッショナルで、福祉サービス利用者の相談に乗り計画を立てる役割を担います。
重度障害者等包括支援の対象となる重度の障害者への介護経験が3年以上あること
具体的には、対象となる重度障害者の方に対して、入浴、排せつ、食事など日常生活上の介護やそれに準ずる業務に3年間以上従事した経験が必要です。言い換えると、重度の障害を持つ方の介護現場で3年分の実務経験がある人でなければなりません。なお、この3年という経験期間については、厚労省の通知で「都道府県知事が同等と認める業務」を含めて計算してよいことが示されています。つまり、類似する支援業務の経験も合算して3年相当になれば条件クリアとみなされます。
以上の資格要件を満たした人だけが、重度障害者等包括支援のサービス提供責任者として配置できます。このようにハードルが高いのは、重度の障害がある利用者の生活全般を支える計画作りと調整を行うため、高い専門性と経験が求められるからです。
管理者との兼務は可能?
事業所には通常管理者(事業所全体の運営責任者)も配置しますが、その管理者がサービス提供責任者を兼ねることも認められています。たとえば小規模な事業所では、管理者とサービス提供責任者を同一人物が担当しても構いません。ただし先述のとおり、常勤者が1名以上という条件は満たす必要がありますので、管理者が非常勤の場合は別途常勤のサービス提供責任者を置く必要があります。
また、重度障害者等包括支援の事業所が計画相談支援(サービス等利用計画の作成支援サービス)を行っている場合には、その計画相談に従事する相談支援専門員がサービス提供責任者を兼務することも可能です。これも法律上「差し支えない(問題ない)」とされています。要するに、一人の職員が複数の役割を兼ねることができる柔軟な体制が許容されています。人材が限られる中小規模の事業者にとって、この兼務可能な規定は大きな助けとなるでしょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- サービス提供責任者の配置義務: 重度障害者等包括支援という障害福祉サービスを提供するには、必ず有資格者であるサービス提供責任者を1名以上配置しなければなりません。事業開始前に該当する人材を確保するか、自社職員に資格取得・経験を積ませる計画を立てましょう。
- サービス提供責任者の資格要件: サービス提供責任者には「相談支援専門員の資格」と「重度障害者の介護3年以上」の両方が求められます。片方だけでは不十分です。自社で人員配置を考える際は、この2条件を満たす人を人選してください。該当者がいない場合は、新たに資格取得を目指すか、採用活動で条件を満たす人材を探す必要があります。
- 常勤者の確保と兼務の活用: 複数名のサービス提供責任者を置くときは、そのうち最低1名は常勤にする必要があります。常勤職員を確保できないと基準を満たせないので注意が必要です。一方で、人員に余裕がない事業所では兼務の規定を上手に活用しましょう。管理者が条件を満たせばサービス提供責任者を兼ねることができますし、計画相談支援の相談支援専門員がいればその人が兼務することも可能です。兼務により人件費負担を抑えつつ基準を満たすこともできますが、兼務者の業務過多にならないよう運営上の配慮も必要です。
- 基準遵守の重要性: 人員基準を満たさないまま障害福祉サービス事業を行うと、指定の取得や継続ができず、行政処分の対象となるリスクがあります。基準第127条の要件は法律上の最低条件であり、事業者は必ずこれを遵守しなければなりません。基準を満たした上で、利用者にとって質の高い支援を提供できるよう、日々の人員体制の点検・改善を心がけましょう。
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