グループホームにおける介護・家事支援のポイント
記事の概要:
障害者グループホーム(共同生活援助)は、障害のある方が地域で安心して共同生活を送るための場です。この記事では、グループホームでの介護や家事支援のあり方について、やさしくシンプルに解説します。利用者の自主性や人格の尊重、家事支援の方法(家庭的な環境づくり)、他のサービス利用の制限、そしてサテライト型住居での支援と自立への移行支援について、それぞれポイントを押さえて説明します。
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支援の基本方針(利用者の自主性・人格の尊重)
グループホームで支援を行う基本の方針は、利用者一人ひとりの自主性を大切にし、前向きに生活できるよう支援することです。具体的には、利用者の障害の状態や体調、得意なこと・苦手なことに応じてサポートし、利用者が自分の意志でできるだけ積極的に日常生活を送れるように手助けするという意味です。また、支援を提供する際には利用者の人格(人としての尊厳や個性)に十分配慮することが求められています。簡単に言えば、たとえ支援が必要であっても一人の人間として尊重し、その人らしさを大切にしながらサポートしましょう、ということです。
例えば、できることまでスタッフが代わりにやってしまうと、利用者の自主性が損なわれてしまいます。そうではなく、利用者が自分でやりたいこと・できることは可能な限り自分で行い、スタッフはそれを見守ったり必要な部分だけサポートしたりするのが望ましい支援の形です。これにより、利用者は「自分でできた」という達成感を持ち、日々の生活に意欲を持って取り組むことができます。またスタッフは、利用者それぞれのペースややり方を尊重し、その人の意思決定をできるだけ尊重する姿勢が重要です。
家事支援の方法(共同作業で家庭的な環境づくり)
グループホームでは、食事の調理や洗濯、掃除、買い物などの家事支援もサービスに含まれています。しかし、その支援のやり方には工夫が必要です。スタッフがすべて代行するのではなく、利用者とスタッフが一緒に家事を行うことが基本となります。例えば、料理をするときはスタッフが一方的に作るのではなく、利用者と相談しながら一緒に料理を作ったり、掃除もみんなで分担して行ったりします。こうした共同作業を通じて利用者同士および利用者とスタッフとの良好な人間関係を築き、日常生活を送る場をできるだけ家庭的な雰囲気に近づける狙いがあります。家庭的な生活環境とは、単に施設っぽさを無くすだけでなく、入居者が自宅にいるようにくつろげて、自分らしく生活できる環境という意味です。
たとえば、夕食の準備をみんなで行えば「一緒に暮らしている」という実感が生まれ、入居者同士のコミュニケーションも活発になります。洗濯物を干す・畳むといった作業も、声を掛け合って協力することでチームワークやお互いの信頼関係が育まれます。スタッフにとっても、利用者の普段の様子や得意なことを理解する機会になりますし、利用者にとっても役割や居場所を感じられる効果があります。「支援」と聞くとスタッフが何でもしてあげるイメージがあるかもしれませんが、グループホームで*「一緒に行う支援」が大切なのです。
他サービス利用の制限(自己負担での利用は不可)
グループホームに入居している障害者の方が、グループホーム以外の介護サービス(例:居宅介護など)を自分でお金を払って利用することは、原則として認められていません。これは、グループホームの支援が基本的に生活全般を包括するサービスであり、必要な介助はグループホームのスタッフが担うことを前提としているためです。たとえば、「夜間はグループホームの世話人さんがいるけど、日中に自費でヘルパーさんを呼んでお世話してもらおう」といったことはできないルールになっています。
ただし、事業者(グループホーム運営側)が費用を負担する場合には、外部のサービスを利用者に提供しても問題ありません。つまり、利用者の自己負担でなければ、必要に応じて居宅介護など他のサービスを組み合わせることができます。また、例外として「重度障害者等包括支援」によるグループホームの場合はこの制限の対象外とされています。重度障害者等包括支援とは、重い障害のある方に対し包括的にサービスを提供する仕組みで、グループホームもその一部として位置付けられるケースです。そのような包括支援の枠組みで提供されるグループホームについては、自費で他サービスを利用する制限は適用されません。
グループホーム事業者や計画担当者にとって重要なのは、入居者が必要とする支援は基本的にグループホーム内で賄うという考え方です。万一グループホームの支援内容で足りない部分があるなら、事業者側が責任をもって外部サービスを手配し、その費用も事業者が負担する形で提供します。このルールを押さえておかないと、入居者に不必要な自己負担をさせてしまったり、サービスの重複利用によるトラブルにつながる可能性がありますので注意が必要です。
サテライト型住居の支援と移行支援(訪問頻度・柔軟対応・3年目安)
近年、グループホームの形態の一つとしてサテライト型住居という仕組みが整備されました。サテライト型住居とは、本体となる共同生活住居(メインのグループホーム)とは離れた場所にある、定員1名の小規模な住まいのことです。利用者はサテライト型の部屋で一人暮らしに近い生活を送りつつ、グループホームの一員として必要な支援を受けます。このようなサテライト型住居に入居している利用者への支援については、以下のポイントが定められています。
まず、支援の方法については、サテライト入居者に対してスタッフが定期的に巡回訪問する形で日常生活の支援を行うことになっています。具体的には、事前に立てた共同生活援助計画(個別支援計画)に沿って、スタッフが定期的にサテライト住居を訪問し、相談対応や入浴・排せつ・食事の介助など必要なケアを提供します。原則として1日に複数回(朝と夕方など)訪問することが想定されていますが、訪問の回数や時間帯は利用者の状態や希望に合わせて柔軟に決めることができます。たとえば、日中は本体のグループホームや就労先で過ごし夜だけ戻るような利用者であれば、日中の訪問は省略するといった運用も可能です。「必ず毎日決まった回数を訪問しなければならない」という硬い決まりではなく、利用者と話し合いながら必要な頻度・時間で訪問支援を行うイメージです。また、訪問時間についても柔軟に考えられており、短時間の見回りだけでなく必要に応じて長めの訪問やケアも行えるとされています。要は、サテライトに住む人それぞれに合った支援を提供することが大事だということです。
次に、利用期間と自立(地域生活への移行)支援についての方針です。サテライト型住居に入居した利用者については、入居開始から原則として概ね3年以内を目安に、一般のアパートや自宅など地域の中で単身生活に移行できるよう支援することとされています。サテライト型は一人暮らしの訓練の場という位置付けもあるため、「ずっとサテライトに住み続ける」のではなく、3年程度をめどに完全な自立生活にステップアップすることを目標にするのです。そのために、グループホームのスタッフだけでなく就労先の支援員や相談支援専門員など他の支援機関とも連携し、定期的に支援内容や利用者の様子を検討することが求められます。たとえば、「そろそろ一人暮らしできそうだけど、福祉サービスの利用体制はどうするか」「引っ越し先の物件は確保できるか」など、関係者みんなで話し合い計画を進めます。
しかし、中には3年経ってもすぐには自立が難しいケースもあるでしょう。そこでルールでは、3年を超えてサテライト型住居を利用している場合でも、「引き続きそこを利用することで将来的に自立生活へ移行できる見込みがある」ような場合には、市町村の審査会で個別に判断して3年を超える利用継続も認められるとされています。要するに、「3年経ったら絶対出て行かなければならない」ということではなく、もう少し時間が必要な人は延長も可能という柔軟な対応です。ただし延長の可否は行政(市町村)の判断となるため、事業者は利用者の状況をしっかり市町村に伝えて協議する必要があります。
さらに、自立が見込まれるケースではユニークな選択肢も示されています。グループホームの支援自体が不要になった場合でも、今住んでいるサテライトの部屋から退去しなくてもよいように配慮しましょうというものです。具体的には、そのサテライト型住居の賃貸契約を事業者名義から利用者本人の名義に切り替えて、支援終了後もそのまま住み慣れた部屋で暮らし続けられるようにするといった対応が考えられています。新しい環境に移ることなく、その人にとって安心できる住まいを継続利用できるのは大きなメリットです。このようにサテライト型では、利用者の自立に向けて柔軟な運用や配慮を行うことが求められているのです。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者の尊厳と自主性の尊重:支援は、できることは利用者本人に行ってもらい、スタッフは必要な部分だけをサポートします。その際、利用者を一人の人間として尊重し、命令口調を避けて意向やペースを大切にすることが求められます。
- 家事支援と外部サービス利用のルール:調理・掃除・洗濯・買い物などの家事は、スタッフが一方的に行うのではなく、利用者と一緒に取り組むことで家庭的な環境を作ります。また、グループホーム入居者が自己負担で他の介護サービス(居宅介護等)を利用することは原則禁止ですが、事業者負担での外部サービス利用は可能です(重度包括支援の場合はこの制限が適用されません)。
- サテライト型住居の柔軟支援と移行支援:定期的な巡回訪問による支援は、原則1日複数回を想定しつつ、訪問回数や時間帯は利用者の希望や状況に合わせて柔軟に調整できます。入居後は概ね3年以内に一般住宅での単身生活へ移行する計画を立て、必要に応じて市町村判断で利用延長や、契約名義を利用者本人に切り替えて住み慣れた住居を継続利用できる配慮も行います。
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