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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第六(短期入所) 4 運営に関する基準 (6) (7)

害福祉サービス「短期入所」の運営規程と定員遵守とは?厚労省通知をわかりやすく解説


記事の概要:
短期入所(ショートステイ)は、障害のある方が 短期間お泊まりで介護や支援を受けられる 障害福祉サービスです。本記事では、短期入所事業者が押さえるべき 運営規程(基準第123条) と 定員遵守(基準第124条) のポイントを、やさしくシンプルに解説します。

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短期入所サービスの形態:併設型・空床利用型・単独型の違い(概略)

短期入所事業所には運営形態の違いによって大きく3つのタイプがあります。それぞれの特徴を理解しておくことが、運営規程を作成したり定員を考えたりする上で重要です。

併設型事業所(へいせつがた)

既存の障害者支援施設などに 併設(くっついて)運営される短期入所です。例えば、障害者支援施設やグループホームの建物内に短期入所専用の部屋を設けてサービスを提供する形態です。短期入所部分と本体施設が一体的に運営されますが、本体の入所者の生活に支障が出ない範囲で行うことが条件です。また併設型では、短期入所用に専用のお部屋(ベッド)を確保して提供します。

空床利用型事業所(くうしょうりようがた)

空いているベッドを利用して行う短期入所です。たとえば定員に空きがある障害者支援施設やグループホーム等で、その空室を短期入所の利用者に提供する形態です。専用の部屋を設けるのではなく、本来は他の入所者向けの部屋で現在使われていない「空床(空きベッド)」を活用します。空床利用型では本体施設に空きがあるときのみ受け入れ可能で、日によって受け入れ可能人数が変動する点が特徴です。

単独型事業所(たんどくがた)

他の施設に併設せず、単独の施設で提供する短期入所サービスです。一軒の建物まるごと短期入所専用に運営するイメージです。他の入所施設等に依存しないため、設備や人員をすべて自前で整えます。小規模なショートステイ専門施設などがこれにあたります。また、生活介護事業所など、障害者支援施設以外の障害福祉サービス事業者がショートステイ事業を併設する場合にもこのカテゴリに該当します。

以上のように、「併設型」は既存施設に専用室を持つタイプ、「空床利用型」は既存施設の空きベッドを活用するタイプ、「単独型」は独立したショートステイ施設です。それぞれの形態で運営の仕方や定員の考え方が少しずつ異なります。この後の解説で触れる「運営規程」や「定員遵守」の具体的内容も、これらの形態によって注意点が変わってきます。

運営規程(基準第123条)とは何か?

運営規程とは、事業所がサービスを適正に運営するために定めるルールブック(規則集)です。基準第123条で短期入所事業者に対し、この運営規程を事業所ごとに作成することが義務付けられています。運営規程にはサービス提供に関する重要な事項を網羅する必要があり、具体的には次のような内容が盛り込まれます(条文上は第1号〜第10号で規定):

  1. 事業の目的および運営方針:事業所が目指すサービスの目的や方針(例:利用者の安心安全な生活の支援)。
  2. 従業者の職種・人数・職務内容:サービスを提供するスタッフの種類・人数、それぞれの役割。
  3. 利用定員:同時に受け入れ可能な利用者の最大人数(空床利用型は除く)。
  4. サービスの内容と利用料:提供するサービスの具体的内容と、利用者から受け取る料金。
  5. サービス利用時の注意事項:利用者に守ってもらいたいルールや注意事項。
  6. 緊急時等の対応方法:利用者が急病や事故になった場合の対応策や連絡体制。
  7. 非常災害対策:火災や地震などの災害発生時の避難方法・訓練方法。
  8. 対象となる障害の種類(定めている場合):特定の障害を専門的に受け入れる場合、その障害種別。
  9. 虐待防止の措置:虐待防止のための取り組みや相談窓口の設置など。
  10. その他運営に関する重要事項:上記以外に重要なルールを定める(例:地域生活支援拠点として指定されている場合は、その旨を明記)。


ポイント① 利用定員の明記(第123条第3号)

運営規程の中でも特に重要なのが「利用定員」をしっかり記載することです。定員とは、その短期入所事業所が同時に受け入れ可能な利用者の最大人数を指します。通知では、「空床利用型事業所を除く短期入所事業所では、利用定員を短期入所専用の部屋(ベッド)の数と同じにすること」と示されています。つまり、専用ベッドを持つ併設型や単独型の場合は、そのベッドの数=定員です。例えば短期入所用にベッドを3床用意しているなら定員3名となります。

では空床利用型の場合はどう考えるのでしょうか?空床利用型は専用ベッドを持たないため、定員の決め方が特殊です。この場合、基本的には「受け入れに利用できる本体施設の居室のベッド数」が短期入所の定員となります。例えば本体施設(併設先)の定員が50名の施設で空きベッドを利用するなら、理論上は短期入所の定員も50名とみなす、という考え方です。ただし実際には本体の入所者がいる限り全ベッドが空くことはありません。そのため、多くの運営現場では「空床がある場合にその範囲で受け入れ可能」といったただし書きを運営規程に記載し、柔軟に対応しています。重要なのは、空床利用型であっても事業所として定員をきちんと定めておくか、空床利用である旨を明記しておくことです。定員を明らかにしておくことで、利用希望者にも「最大◯名まで受け入れられます」と説明できますし、行政から指定を受ける際も運営内容が明確になります。

ポイント② 地域生活支援拠点等の場合の明記(第123条第10号)

運営規程の最後には「その他運営に関する重要事項」を定める項目があります。ここで通知では、「指定短期入所事業所が市町村により地域生活支援拠点等として位置付けられている場合は、その旨を明記すること」とされています。

地域生活支援拠点等(ちいきせいかつしえんきょてん)とは、障害のある人の地域生活を支えるための地域拠点です。重度の障害者の方が緊急時(例えば介護者である家族が病気になった時など)に一時的に宿泊できる受け皿を提供したり、将来的に親亡き後も安心して暮らせるよう支援体制を整えたりするために、市町村が設置・指定する仕組みです。短期入所事業所は、この地域生活支援拠点の重要な機能(緊急時のショートステイ受入)を担うことがあります。そのため、市町村から「あなたの事業所は地域生活支援拠点の一つです」と位置付けられた場合には、運営規程の中に「当事業所は〇〇市の地域生活支援拠点等に位置付けられています」といった内容を記載しておく必要があります。こうすることで、地域の関係機関との連携や緊急対応の役割を自覚し、利用希望者や行政にも役割が明確になるという狙いがあります。

定員遵守(基準第124条)とは何か?

定員遵守とは、一言でいえば「決められた利用定員をきちんと守って運営しましょう」ということです。基準第124条で短期入所事業者は自ら定めた定員を超えてサービス提供しない義務が定められています。簡単に言えば、定員オーバーで利用者を詰め込みすぎてはいけないというルールです。

なぜ定員遵守がこれほど強調されるのでしょうか?理由は、安全で質の高いサービス提供のためです。短期入所に限らず障害福祉サービスでは、定員を超えて人を受け入れてしまうと、十分なケアが行き届かなくなったり、事故やトラブルのリスクが高まります。部屋やベッド、職員体制も定員に合わせて用意しているため、それ以上受け入れると物理的にも対応が難しくなります。そのため基準上、「事業所は自分の定めた定員内でサービス提供しなければならない」と規定しているのです。

短期入所サービスの場合、先に述べたように定員の考え方は事業形態によって若干異なりますが、定員遵守の原則はすべての形態で共通です。

  • 併設型や単独型なら、運営規程で定めた「短期入所専用ベッド数」が定員ですから、そのベッド数を超える人数は泊めないようにします。例えば定員5名なら、一度に6名は受け入れません。
  • 空床利用型の場合も、たとえ本体施設に空きベッドがあるとはいえ、実質的な定員を踏まえて受け入れます。本体の入所者状況によって受け入れ可能人数が日々変わるため難しいところですが、運営規程上は「最大○名まで(空床状況による)」などと定めているはずです。その範囲を超えて、無理に受け入れを行ってはいけません。

要するに、「決められた範囲内でサービス提供する」のが定員遵守です。仮に利用希望が重なって定員以上の申し込みがあった場合には、他の事業所や地域支援拠点に協力を仰ぐ必要があります。基準違反を避け、安全を最優先にするための約束事といえるでしょう。


事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 運営規程の整備・届出:短期入所事業を開始する際は、必ず運営規程を作成し所轄行政(都道府県や政令市等)へ届け出ます。サービス内容や定員、緊急連絡先まで、必要事項が漏れなく記載されているか確認しましょう。運営開始後も内容に変更があれば速やかに改訂・届出することが大切です。
  • 利用定員の設定と遵守:運営規程に定員を明記し、その範囲内でサービス提供することを徹底しましょう。定員は行政から指定を受ける際の重要な審査ポイントでもあります。無理のない定員数を設定し、利用申込みが重なっても定員以上は受け入れないルールを職員にも周知しておきます。
  • 空床利用型の特例対応:空床利用型の場合、運営規程に「本体施設に空床がある場合のみ受け入れ可能」などの特記事項を入れておくと親切です。実際の受け入れ可否は本体側と常に連携し、空床状況を把握して判断しましょう。本体施設との連絡調整体制を日頃から整えておくことも重要です。
  • 地域生活支援拠点等への協力:自事業所が地域生活支援拠点等に位置付けられている場合は、その旨を運営規程に記載するだけでなく、その役割を果たせる準備をしておきましょう。緊急のショートステイ依頼が来た時に迅速に対応できるよう、受け入れ手順や連絡系統を確認しておきます。拠点事業所同士のネットワーク会議などにも可能な範囲で参加し、地域の支援体制づくりに貢献すると良いでしょう。
  • 法令遵守とサービス品質:運営規程や定員遵守といった基準は法令上の最低ラインです。基準を守ることはもちろん、利用者により良い環境を提供するために職員研修や設備整備にも努めましょう。法令遵守は信頼の第一歩です。「定員内できっちり、安全に」が利用者や家族から選ばれる安心のサービスにつながります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。