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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十 就労移行支援 1 人員に関する基準 (1) (2)

労移行支援の人員配置基準を解説(職業指導員・生活支援員、就労支援員)


記事の概要:
就労移行支援事業を始める・運営するためには、法律で定められた人員配置基準を正確に理解する必要があります。本記事では、厚生労働省の通知文書に基づき、就労移行支援における職業指導員・生活支援員および就労支援員の配置要件についてやさしくシンプルに解説します。

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就労移行支援とは何か?

就労移行支援とは、一般企業で働きたい障害者(65歳未満)に対し、最長2年間、仕事に就くための訓練や職場体験の機会を提供し、就職に必要な知識・能力の向上や就労に関する相談支援を行うサービスです。簡単に言うと、「障害者が安定して一般就労できるようサポートするための訓練サービス」です。利用者は企業と雇用契約を結ぶわけではなく、あくまで職場体験や講習を通じて就職の準備をします。そして、就労移行支援事業所の支援のもとで職場探しを行い、適切な企業に就職し、就職後も職場に定着できるようフォローアップを受けます。

職業指導員・生活支援員の配置基準

就労移行支援事業所では、職業指導員と生活支援員という2種類のスタッフを配置する必要があります。職業指導員は利用者の就職に必要な技術指導や職業訓練を担当し、例えばビジネスマナーやパソコンスキル、職場実習での指導など「仕事の技術面」で支援します。一方、生活支援員は利用者の日常生活面の支援を担当し、生活習慣の改善や身だしなみの助言、通所のフォローなど「生活面での困りごと」を支援します。簡単に言えば、職業指導員は仕事の先生、生活支援員は生活のサポーターと考えると分かりやすいでしょう。

法律上、この職業指導員と生活支援員については、それぞれ最低1名ずつ事業所に配置しなければなりません。加えて、利用者に対するサービス提供を安定させるため、どちらか一方の職種には常勤(フルタイム)職員を最低1名は置く必要があります。常勤職員とはフルタイムで勤務するスタッフのことで、少なくとも職業指導員か生活支援員のどちらかはフルタイム勤務者である必要があるという意味です。

さらに、職業指導員と生活支援員の合計人数は、事業所の利用者数に応じた一定の比率を満たさなければなりません。この比率は「利用者6人につき職員1人以上」です(常勤換算方式による)。常勤換算とは、パートタイム職員の勤務時間を合計して常勤職員の人数に換算する計算方法のことです。例えば、週の所定労働時間の半分ずつ働く非常勤スタッフ2名は、常勤換算で「1名分」に相当します。就労移行支援では、この常勤換算した職業指導員+生活支援員の人数が「利用者の数÷6以上」となるように配置しなければなりません。計算式で表すと:

  • 必要職員数 = 利用者数 ÷ 6 (少数は切り上げ)

端数は切り上げて考えるため、利用者が7人いれば7÷6=1.16…となり2名以上の配置が必要です。利用者がちょうど12人なら12÷6=2ちょうどなので2名で足りますが、13人になると13÷6=2.16…で3名以上必要になります。なお、利用者が1~6人でも職業指導員と生活支援員を各1名ずつ置く必要があるため、実質的には最低でも2名は配置することになります(例えば利用者5人の場合、計算上は0.83…→1名以上ですが、職種ごとに1名必要なため合計2名が必要)。

法律上、職業指導員と生活支援員になるための資格要件(資格・免許など)は特に定められていません。極端に言えば、特別な資格がなくても事業所が適任と判断した人を配置できます。ただし、実際には障害者支援の現場ですので、福祉現場での経験や知識を持つ人材が望ましいでしょう。また、多くの事業所では職業指導員と生活支援員の役割を兼任させるケースもあります。例えば2名のスタッフがいて、それぞれ職業指導員と生活支援員の役割を分担しつつ、日常業務では協力して利用者の支援全般に当たることもあります。重要なのは、利用者への支援に支障が出ないようにしながら、人員基準を満たすことです。

就労支援員の配置基準

就労支援員は、就労移行支援事業所において利用者の就職活動や就職後の職場定着支援を専門に担当するスタッフです。具体的には、企業への職場実習のあっせん(手配)、履歴書の書き方指導や面接練習といった求職活動の支援、そして利用者が就職した後に職場に馴染めるよう企業側と連絡を取りながらフォローする職場定着支援などを行います。利用者にとって「就職のエージェント」兼「就職後の相談役」のような存在であり、非常に重要なポジションです。そのため、就労支援員には障害者の就労支援の実務経験がある人が望ましいとされています。例えば、過去に障害者の就職支援や職業紹介、ジョブコーチの経験がある人であれば、利用者に適切な職場実習先を見つけたり、企業との調整役をスムーズに担えます。

就労支援員の配置基準も利用者数に応じた人数比率が定められており、その基準は「利用者15人につき職員1人以上」です。こちらも常勤換算で算出します。計算式は職業指導員等の場合と同様に:

  • 必要就労支援員数 = 利用者数 ÷ 15 (少数は切り上げ)

つまり、利用者が16人を超えたら2名以上、31人を超えたら3名以上の就労支援員を配置する必要があります。少人数の事業所でも最低1名の就労支援員は配置しなければなりません。また、就労支援員についても少なくとも1名は常勤スタッフであることが求められます。常勤職員でないと利用者の急な相談や企業対応に十分応じられない可能性があるため、フルタイムの就労支援員を置くことで安定した就職支援体制を確保します。

資格要件に関して言えば、就労支援員も法律上は特定の資格(例:キャリアコンサルタント資格など)を必須とはしていません。ただし前述のとおり実務経験がある人材が望ましく、事業者としては適切な人材を確保することが大切です。加えて、令和7年(2025年)4月1日から、厚生労働省が定める「基礎的研修」の修了が就労支援員に求められるようになります。この基礎的研修とは、福祉と雇用両方の分野にまたがる基礎知識やスキルを習得する研修のことで、障害者の就労支援に携わる人向けの全国共通の研修プログラムです。2025年以降に新たに就労支援員になる方は、この研修を受講しておくことが望ましいでしょう。ただし、施行から一定期間(令和10年3月末、つまり2028年3月31日までは)経過措置として、研修未修了でも就労支援員の業務に就くことが認められます。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 最低配置人数の遵守: 就労移行支援事業を行うには、職業指導員と生活支援員を各1名以上(うち1名は常勤)、さらに就労支援員を1名以上(常勤)配置することが必須です。この最低人数を満たさなければ事業所の指定が受けられません。
  • 利用者数に応じた増員: 利用者が増える場合は、人員配置が「職業指導員+生活支援員=利用者6:1」「就労支援員=利用者15:1」の比率以上になるようスタッフを適宜増員しましょう。
  • 常勤換算と兼務の活用: 人員算定は常勤換算で行われるため、パートタイム職員を組み合わせて配置基準を満たすことも可能です。ただし常勤職員を配置すべき要件は守る必要がある点に注意しましょう。また、一人の職員が複数の役割(例:生活支援員が就労支援員を兼務等)を担うことも現場ではありますが、その場合でも勤務時間の配分に応じて常勤換算されるため、結果的に必要な延べ人数は変わりません。
  • 人材育成と研修: 資格が不要とはいえ、職員の質がサービスの質につながります。経験豊富な人材の確保や、未経験者には十分な研修を受けさせることが重要です。特に就労支援員には2025年から基礎的研修修了が求められるため、計画的に研修を受講させましょう。研修未修了のままでは将来的に人員基準を満たさなくなるリスクがあるため注意が必要です。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。