厚労省『電磁的記録』通知から読み解く 障害福祉サービス文書の電子保存ルール
記事の概要:
厚生労働省から、障害福祉サービス分野の文書保存に関する省令が改正され、それに伴う通知が出されました。従来は紙で保存しなければならなかった各種書類を、一定の条件のもとで電子保存(電磁的記録による保存)できるようにし、事業者の負担軽減を図る内容となっています。今回の通知文書にある「電磁的記録について」の部分を、ポイントごとにやさしくシンプルに説明します。
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通知内容の解説
電磁的記録とは、コンピュータやスマートフォンなどで扱えるデータのことです。例えば、パソコンに保存したデジタルファイルや、USBメモリ・CDなどに記録したデータが電磁的記録に当たります。要は、紙ではなく電子データで情報を保存したものだと考えてください。
省令の改正により、障害福祉サービスに関する各種書類は、最初から紙に印刷せずに電磁的記録による作成が可能になりました。簡単に言えば、必要な書類をワープロソフトや支援システムなどで作成し、そのままパソコン内のファイルとして保存する方法です。つまり、紙の書類を作らず、データの形で公式な書類を作成できるようになったということです。
書類の電子保存には、通知で次の二つの方法が示されています。
- (A) データで作った書類をそのまま保存: パソコンで作成した書類データを、事業所のパソコン内やハードディスク、USBメモリなどにファイルとして保存する方法です。例えば、利用者との契約書をWordで作成し、そのWordファイルを社内PCや外部ディスクに保存しておけばこの方法に該当します。
- (B) 紙の書類をスキャンして保存: 紙で作成・受領した書面は、スキャナー等で読み取って電子データ化し、そのデータファイルを事業所のPCやディスク等に保存します。紙原本を残さなくても良くなりますが、スキャンする際は文字がはっきり読めるようにするなど記録の正確さに注意しましょう。
また、省令で電子的に行ってよいと定められたもの(情報)については、基本的に(A)や(B)と同様の方法で行えばよいとされています。つまり、他のどんな書類や手続きでも、規則上電磁的記録で実施してよいことになっているものは、上記と同じようにデータで作成・保存して問題ありません。
書類を電子データで扱う際には、個人情報保護委員会のガイドライン等を遵守することが求められています。利用者の個人情報を含む書類を電子化する場合、紙で保管する以上に慎重な情報管理が必要です。例えば、ファイルにパスワードを設定し、限られた職員だけが閲覧できるようにするなど、情報漏えい防止の対策を講じましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 紙の原本をすぐ廃棄しない: 電子保存できるとはいえ、スキャン後ただちに紙の書類を捨てるのは避けましょう。スキャンデータがきちんと読めるかを確認し、必要に応じて紙の原本も一定期間保管しておくと安心です。電子データに問題がないと確認できてから原本を処分するようにしましょう。
- 保存データの信頼性確保: 電子化した書類は、改ざん防止やバックアップに気を配りましょう。できれば保存時にPDF化するなど、後から内容を変更できない形にしておくと安心です。また、万一に備えてバックアップも必ず取りましょう。
- 提示や提出の方法: 電子保存した書類でも、行政の実地指導や監査の際には求められれば提出・提示しなければなりません。電子データしかない場合でも、画面を見せたり紙に印刷して提出できるように準備しておきましょう。「電子だから提出しなくていい」と誤解しないよう注意が必要です。
【免責事項】
