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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第六(短期入所) 3 設備に関する基準

期入所事業所の施設要件を徹底解説


記事の概要:
短期入所事業所は、障害のある方が短期間宿泊して支援を受けるための施設です。例えば介護する家族の休息(レスパイト)や緊急時の一時預かりに利用され、その安全性や快適性を確保するためには設備基準を満たすことが重要です。厚生労働省が定める設備基準に適合しなければ事業の指定が受けられず、利用者の安心・安全も損なわれかねません。そこで本記事では、短期入所事業所に求められる設備基準について、併設事業所・空床利用型事業所・単独型事業所という形態ごとの違いを、シンプルに分かりやすく解説します。

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短期入所事業所の設備基準:併設型・空床利用型・単独型ごとの要件

短期入所事業所には運営形態によって設備基準に違いがあります。大きく分けて、他の入所施設に併設するタイプ、既存施設の空きベッドを活用するタイプ(空床利用型)、そして独立した単独型の施設があります。それぞれで必要な設備や条件が異なるため、順番に解説します。

併設事業所の設備基準(他施設に併設する場合)

併設事業所とは、障害者支援施設など既存の入所施設()の一部を利用して短期入所サービスを提供する事業所を指します。簡単に言えば、既存の入所施設に短期入所の部屋を併設して運営するケースです。この場合、短期入所事業所専用の居室(宿泊部屋)を新たに設ける必要があります。既存施設の入所者が使っている居室をそのまま短期入所に使うことは認められていません。つまり、短期入所利用者のために専用の部屋を確保しなければならないということです。

ただし併設型では、居室以外の設備(食堂や浴室など)については本体となる既存施設と共用することが可能です。厚生労働省の基準では、「併設本体施設の設備(居室を除く)を短期入所の用に供することができる」とされています。これは、既存の施設設備を有効活用することで効率的な運営ができるようにするためです。ただし共用するにあたっては、本体施設の入所者へのサービスに支障が出ないことが条件です。例えば、食堂や浴室の利用時間帯が重なって入所者側に不便が生じないよう調整するなど、運営上の配慮が求められます。

併設本体施設となる既存の入所施設…障害者総合支援法に定められた入所施設等(例:障害者支援施設や障害児入所施設など、入浴・排せつ・食事の介護等を適切に行える施設)を指します。

空床利用型事業所の設備基準(既存施設の空き居室を利用する場合)

空床利用型事業所とは、既存の入所施設において現在使われていない居室(空きベッド)を活用して短期入所サービスを提供する事業所です。イメージとしては、障害者支援施設等で入所定員に空きがある場合に、その空きベッドを短期入所の利用者に提供する形態です。この場合、短期入所事業所自体が独自の建物や設備を持つわけではなく、受け入れ先の施設(ホストとなる施設)の居室や設備をそのまま利用します。基準上も「空床利用型事業所にあっては、当該施設として必要とされる設備を有することで足りる」とされています 。つまり、受け入れ先の施設がその種別で求められる設備を備えていれば、それ以上に特別な設備を新設しなくても良いということです。

実務上、空床利用型を行うには受け入れ先となる施設との緊密な連携が必要です。居室やお風呂・トイレなど施設側の設備を借りて運営するため、受け入れ先の施設が設備基準を満たしていることが大前提となります。また、空床を利用するとはいえ短期入所の利用者も滞在する以上、受け入れ先の入所者と混在する場面でトラブルがないよう配慮が必要です。例えば、他の入所者と同室になる場合はプライバシーへの配慮や人員配置などにも注意しなければなりません。このように空床利用型は設備面の負担が軽い反面、運営面では既存施設との調整が重要になります。

単独型事業所の設備基準(短期入所専用の独立施設を設置する場合)

単独型事業所とは、入所施設等に併設せず独立して短期入所サービスを提供する施設です。この単独型の場合、法律で求められる設備の種類が明確に定められており、必要な設備をすべて備えていなければなりません。基準では「単独型事業所は、居室、食堂、浴室、洗面所及び便所その他運営上必要な設備を設けなければならない」と規定されています。つまり、利用者が宿泊し生活するための基本的な設備一式(居室・食堂・浴室・洗面所・トイレ等)をすべて単独型事業所内に備える必要があるということです。併設型や空床利用型のように他施設の設備を頼ることはできないため、施設開設時にはこの点を踏まえて計画を立てる必要があります。

単独型事業所における各設備には、さらに細かな設備基準(仕様や条件)が設けられています。具体的には以下のような基準があります:

  • 居室(宿泊部屋):1つの居室に入れる利用者は最大で4人までと定められています。また、居室を地階(地下)に設けることは禁止されています。広さについては、利用者一人あたり床面積が8㎡以上(押入れ等の収納部分を除いた面積)必要です 。8㎡は約4.5畳程度の広さに相当します。さらに、各利用者に寝台(ベッド)またはそれに代わる寝具を用意し、非常時に呼び出しができるブザー(呼び出しベル)を設置しなければなりません。
  • 食堂:利用者が食事をとる食堂は、食事の提供に支障がない広さを確保する必要があります。狭すぎて車いすでの移動が困難だったり、一度に全員が座れなかったりすることのないようなスペースが求められます。また、食堂には食事に必要な備品(テーブルや椅子等)を備えなければなりません 。
  • 浴室:入浴の設備である浴室は、利用者の心身の特性(障がいの状況や介助の必要度など)に応じたものであることが求められます 。例えば車いす利用者が多いならリフト付きの浴槽にする、視覚障害のある方には滑りにくい床材や手すりを設置する、といった配慮が該当します。安全かつ衛生的に入浴できる設備であることが大切です。
  • 洗面所:洗面所(手洗いや歯磨きなどに使う設備)は居室のある各フロアごとに少なくとも1か所設置しなければなりません 。2階建てで各階に居室がある場合は各階に洗面所が必要です。また、こちらも利用者の特性に応じた設備とすることが求められています(例えば車いすでも利用しやすい高さの洗面台にする、補助器具を設置する等)。
  • トイレ(便所):トイレも洗面所と同様に、居室のある階ごとに設置する必要があります。一般的な住宅と違い、1フロアに居室があるならそのフロアにトイレが無いと認められません。そして設備の内容も利用者の特性に応じていることが求められます。例えば車いす利用者向けに手すりや十分なスペースを確保したバリアフリー仕様のトイレを設置するといった対応が必要です。


事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 専用居室の確保(併設型):併設事業所では、必ず短期入所利用者のための専用居室を設けましょう。本体施設の入所者用居室を転用することはできません 。専用居室を用意しつつ、本体施設の入所者にも短期入所利用者にも無理のない配置を検討する必要があります。
  • 本体施設との調整(併設型・空床型):併設型や空床利用型では、食堂・浴室・トイレ等の共用によって本体施設側のサービスに支障が出ないよう運用面の工夫が求められます。タイムスケジュールや利用ルールを決め、スタッフ間で情報共有を徹底しましょう。
  • ホスト施設の設備確認(空床型):空床利用型を検討している場合、受け入れ先となる施設が必要な設備基準を満たしているか事前に確認しましょう。その施設自体が指定基準をクリアしていることが前提ですが、念のため居室の広さやバリアフリー状況、避難経路などをチェックし、必要に応じて改善を依頼します。
  • 設備基準を盛り込んだ設計(単独型):単独型事業所を新設する場合、計画・設計段階から法定の設備基準を満たすようにしましょう。特に居室の定員や面積、各フロアの洗面所・トイレ設置などは建築後に変更が難しいポイントです。建築士や福祉専門家と相談しながら、基準に沿った施設計画を立ててください。
  • 利用者の特性への配慮(共通):どの形態でも、設備は利用者の障がい特性に配慮したものにする必要があります。車いす対応や視覚障害者への工夫など、安全かつ利便性の高い設備となるよう検討しましょう。特に浴室やトイレは事故防止のためにもゆとりある空間設計や手すりの設置などが望まれます。
  • 衛生管理の徹底(共通):設備や備品、水回りについては常に衛生的な環境を維持しましょう。設備基準とは別に、事業者には利用者が使う設備や飲料水の衛生管理を適切に行う責務があります。定期的な清掃・消毒や設備点検を行い、利用者が安心して過ごせるよう努めてください。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。