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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第七(重度障害者等包括支援) 3 運営に関する基準 (3) 障害福祉サービスの提供に係る基準

準第132条の解説:重度障害者等包括支援における留意点


記事の概要:
重度障害者等包括支援の特徴である「一人の障害者に複数のサービスをまとめて提供する」、この観点において守るべき基準をわかりやすくシンプルにまとめます。この記事を読むと、事業者がサービスの質を確保し、公平に提供するためにどんな決まり(基準第132条)があるのかが理解できます。

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重度障害者等包括支援とはどんな制度?

まず背景として、重度障害者等包括支援は、常に介護が必要な最重度の障害者に対し、居宅介護や生活介護など複数の障害福祉サービスを一体的に提供できるようにした制度です。一つの事業者(指定重度障害者等包括支援事業者)が利用者の生活全般を包括的に支援するため、サービス提供の責任が集中します。そのため厚生労働省は通知で「障害福祉サービスの提供に係る基準」(基準第132条)を定め、包括支援を行う事業者が満たすべき要件を規定しています。

基準第132条が求める主な要件

基準第132条では、大きく3つのポイントでルールが定められています。それぞれ具体的に見ていきましょう。

  1. 日中活動サービス等は通常の基準を満たすこと … 重度障害者等包括支援で提供されるサービスのうち、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助などについては、提供する事業所がそれぞれ通常の指定障害福祉サービス事業の基準(人員配置や設備運営基準)または障害者支援施設の基準を満たしていなければなりません。包括支援だからといって独自の簡易なやり方で提供してよいわけではなく、自社で提供する場合でも他事業者に委託する場合でも、各サービスごとに法律で定められた水準をクリアした事業所からサービス提供を受ける体制を確保する必要があります。例えば、生活介護サービスを包括支援に組み込むなら、そのサービスを提供する事業所は通常の生活介護事業所と同じ基準を満たしていることが求められるわけです。この要件により、包括支援であっても利用者が受ける生活介護や就労支援の質が担保されます。
  2. 従業者が自分の同居家族にサービス提供することの禁止 … 重度障害者等包括支援で提供する居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護といった居宅系サービスについて、事業所の従業員がその同居する家族(利用者)を担当してサービスを提供することは禁止されています。簡単に言えば、スタッフが自分の親族(同居の家族)の介助を、自分の勤める事業所のサービスとして行うことはできません。これは公的サービスの公平性を保ち不正や利益相反を防ぐ観点から設けられたルールです。例えば、事業所が家族をスタッフとして雇用し、そのスタッフが自分の障害のある兄弟に重度訪問介護を提供するようなケースは、この基準に抵触します。この禁止事項により、事業者は第三者による適正なサービス提供を徹底し、身内による甘い運営や不正受給が起きないようにしています。
  3. 短期入所・共同生活援助利用時の基準遵守 … 重度障害者等包括支援で短期入所(ショートステイ)や共同生活援助(グループホーム)のサービスを利用者に提供する場合には、それぞれ短期入所事業や共同生活援助事業の基準を満たした事業所で行わなければなりません。要するに、包括支援の一環で短期入所やグループホームを使うときも、通常のこれら施設系サービスと同じ水準の人員・設備・運営体制で提供されていなければならないということです。例えば、包括支援の利用者を提携先のグループホームで受け入れる場合、そのグループホームは定められた基準(世話人や生活支援員の配置基準、居室設備基準など)を満たしている必要があります。これも前述の1と同じくサービスの質確保が目的であり、包括支援だからといって基準未達の施設を利用者に利用させてはならないとしています。

以上のように、基準第132条は包括支援を提供する事業者が負う責任の重さを踏まえ、サービス内容ごとに質の確保や公正性の担保のための具体的な条件を課したものです。重度障害者等包括支援事業者は、これらの基準を遵守してはじめて、安全で質の高い包括的支援を利用者に提供できることになります。

提供されるサービスの種類事業者に求められる条件(基準第132条)
生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援・就労定着支援・自立生活援助等(日中活動系サービス各サービスについて通常の指定障害福祉サービス事業 or 障害者支援施設の基準を満たす事業所が提供すること。
居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護(居宅系サービス従業員が自己の同居家族(利用者)の担当者になってサービス提供することは禁止。
短期入所・共同生活援助(施設系サービス各サービスについて通常求められる基準(短期入所基準・共同生活援助基準)を満たす事業所が提供すること。


事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 包括支援でもサービス基準は厳守: 生活介護や就労支援など日中サービスを包括提供する場合、自社提供でも外部委託でも、それぞれのサービスについて通常の指定基準(または障害者支援施設の基準)を満たす体制が必要です。
  • スタッフが家族をケアするのは禁止: 居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護では、スタッフが自分の同居する家族(利用者)を担当してケアすることはできません。
  • 短期入所やGH利用も基準どおりに: 包括支援の中でショートステイやグループホームを利用させる場合も、それぞれ短期入所事業・共同生活援助事業の基準を遵守した施設・事業所で提供する必要があります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。