就労継続支援B型事業所における工賃の基準についてわかりやすく解説
記事の概要:
障害福祉サービスの一つである就労継続支援B型では、利用者に対して「工賃」と呼ばれるお給料を支払う決まりがあります。工賃の支払いについては、厚生労働省の定める運営基準(基準第201条)で詳しくルールが規定されています。本記事では、このB型事業所における工賃の支払いルールについてやさしくシンプルに解説します。平均月額3,000円以上という工賃基準の意味や、工賃の計算方法、事業運営上の注意点など、丁寧に説明します。
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工賃とは?就労継続支援B型における「お給料」の位置づけ
就労継続支援B型(以下、B型事業所)では、利用者と雇用契約を結びません。そのため利用者に支払われるお金は、一般の労働者に支払われる「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれます。工賃とは、利用者が事業所内の作業(生産活動)に参加した成果として受け取る報酬のことです。B型事業所で働く利用者は最低賃金法の対象外となりますが、その代わりに事業所ごとの平均工賃が月額3,000円以上という基準が法律で定められています。
工賃は事業収入から支払う(基準第201条第1項)
B型事業所では、利用者に支払う工賃の財源は事業所の生産活動による収入で賄うことが原則です。つまり、事業所で利用者が作業して得た売上から材料費など生産活動に必要な経費を引いた残りを、利用者に工賃として配分しなければなりません。なお、工賃の原資として国や自治体からの給付金(自立支援給付)を用いることは原則禁止されています。これは事業所の自主事業による利益を利用者に還元するというB型の趣旨によるものです(※大規模災害等で事業収入が激減した場合など、行政が必要と認めたときは例外的に給付金の一部を工賃補填に充てることも可能とされています)。
工賃の平均額は月3,000円以上(基準第201条第2項)
B型事業所では、「利用者一人あたりの工賃の平均額(月額)」が3,000円を下回ってはならないと定められています。事業所がある月に支払った工賃総額をその月の利用者数で割った平均額が3,000円以上になるようにしなければなりません。例えば、利用者10人に計30,000円の工賃を支払えば平均3,000円(基準クリア)、20,000円なら平均2,000円(未達)となります。
重要なのは、この3,000円という基準は事業所全体での平均値だという点です。したがって、利用者の中には月によって工賃が3,000円未満の方がいても問題ありません(他の利用者の工賃が高ければ平均で3,000円を超えます)。ただし平均額が基準を下回れば、運営が適正でないとみなされ行政から工賃向上の指導を受けます。
工賃水準を高める努力義務(基準第201条第3項)
B型事業所の運営者は、利用者がより自立した日常生活を営めるよう、工賃の水準を引き上げるよう努める義務があります。単に平均3,000円を満たせば良いというわけではなく、できる限り工賃を高くできるよう継続的に工夫することが求められています。
工賃目標の設定と報告(基準第201条第4項)
B型事業所は、毎年度ごとに工賃の目標水準を設定する必要があります。設定した目標値と前年度の実績(平均工賃額)を利用者に周知し、所管の自治体へ報告しなければなりません。目標と実績を利用者と行政に共有することで、事業所内で工賃アップへの意識を高めるとともに、行政側も各事業所の状況を把握して適切な指導・助言を行いやすくなります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 非雇用型B型事業所の工賃支払義務:事業所は利用者と雇用契約を結ばなくても、作業による収入から必要経費を差し引いた残額を「工賃」として利用者に支払わなければなりません。
- 平均工賃月額3,000円以上の維持:事業所が支払った工賃総額を利用者数で割った平均額が月3,000円を下回らないように運営し、平均未達の際は自治体からの改善指導を受けることがあります。
- 工賃向上の継続的努力:利用者の自立支援を目的に、平均工賃を基準値以上に維持するだけでなく、可能な限り工賃を引き上げる取り組みを継続的に行う義務があります。
- 給付金の原資利用禁止:工賃の財源として国の自立支援給付金を充当することは原則禁止されており、事業所は事業収入内で工賃を賄う必要があります(大規模災害等で行政が特例を認めた場合を除く)。
【免責事項】
