社会福祉施設で看護師の日雇派遣が解禁〜その背景と実務上のポイント〜
記事の概要:
2021年4月の法改正によって、社会福祉施設等で看護師の日雇い派遣が特例的に認められるようになりました。もともと日雇い派遣(30日以内の短期派遣)は法律で原則禁止されており、看護職も例外ではありませんでした。しかし、慢性的な看護師不足への対応策として、この規制が緩和されました。本記事では、この制度変更の内容をやさしくシンプルに解説します。
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日雇派遣の禁止から特例解禁へ
「日雇い派遣」とは契約期間が30日以内の超短期派遣のこと。労働者保護のため、こうした短期派遣は長らく原則禁止されてきました。看護師も例外ではなく、福祉施設でも30日未満の契約は禁止でした。しかし2021年4月の改正で、社会福祉施設等に限り看護師の短期派遣が例外的に解禁されました。背景には、短期で働きたい看護師と急な欠員に悩む施設側、それぞれのニーズがありました。
- 派遣看護師ができること: 派遣で来た看護師が行えるのは、基本的に利用者の日常的な健康管理です。具体的には体温・脈拍などのバイタル測定、服薬管理、軽い処置や健康観察などが中心になります。施設によっては、食事や入浴の介助といった簡単な介護サポートをお願いすることもあります。
- 頼めない業務(注意点): 一方、専門的な医療的ケアは派遣看護師には任せられません。人工呼吸器の管理など高度な医療行為は対象外で、依頼できない決まりです。万一そうした処置が必要になった場合は、常勤の看護師や医師との連携で対応する必要があります。
- 対象は正看護師のみ: 今回の特例で日雇い派遣を利用できるのは正看護師だけです。准看護師や薬剤師など他の資格者は含まれていません。短期派遣を頼めるのは国家資格を持つ看護師に限られる点に注意してください。
- 事前準備(契約と研修): 派遣契約で業務範囲を「日常的な健康管理」に限定し、派遣元は必要に応じ研修を行い、派遣前に仕事内容を説明します。
- 受け入れ時の対応: 派遣先では看護師にオリエンテーションを実施し、利用者情報やルールを説明します。また利用者や家族にも派遣看護師が入ることを伝えて安心感を持ってもらいましょう。
- 労務管理と責任の明確化: 派遣先は受け入れた看護師の労働時間管理や安全対策など法定の責務を果たす必要があります。契約時には万一の事故に備え、損害賠償など責任の所在を決めておきましょう。
- 緊急時への備え: あらかじめ緊急時の対応策を決め、医師や病院との連携手順を整備しておきましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 活用できる場面と業務範囲を正しく理解することが重要
2021年の法改正により、社会福祉施設では正看護師に限って日雇い派遣が可能になりました。ただし、派遣看護師に任せられるのはバイタルチェックや服薬管理などの日常的な健康管理に限定されており、人工呼吸器の管理などの医療的ケアは対象外です。
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受け入れ体制の整備と法的責任の明確化が必須
派遣契約の段階から業務範囲を明確にし、事前説明やオリエンテーションを通じて情報共有を徹底することが求められます。あわせて、緊急対応体制や労務管理、損害賠償責任の所在など、受け入れ側のリスク管理も厳格に行う必要があります
