共生型サービスとは?障害福祉と介護保険の制度をわかりやすく解説
記事の概要:
この記事では、障害福祉サービスと介護保険サービスを一体的に提供できる「共生型サービス」について、厚生労働省の解釈通知(令和6年度報酬改定関係通知)に基づいてシンプルにわかりやすく解説します。共生型サービスは、障害のある方が高齢になっても慣れた事業所を継続利用できるようにする制度であり、地域共生社会の実現を目指す政策の一環として注目されています。
共生型サービスの概要(背景と注目される理由)
共生型サービスとは、高齢者向けの介護保険サービスと障害者(障害児)向けの障害福祉サービスを、一つの事業所で一体的に提供できるようにした新しい制度です。平成30年4月の制度開始当初から、「介護」と「障害」の垣根を越えてサービスを提供することで、地域で誰もが安心して暮らせるようにすることを目的に導入されました。従来は障害のある方が65歳になると、それまで使っていた障害福祉サービスから介護保険サービスに原則として移行しなければならず(介護保険優先原則)、慣れた事業所を続けて利用できない課題がありました 。共生型サービスによりこの課題を解決し、年齢や障害の有無にかかわらず同じ事業所で継続した支援を受けられるようになります。
厚生労働省の通知文書を読み解く
厚生労働省から各自治体宛てに出された通知「(5)共生型サービスと称することについて」では、共生型サービスの制度趣旨と具体的な取り扱いが解説されています。ポイントをかみ砕いて説明しましょう。
まず「共生型サービス」とはどのサービスが該当するかですが、法令上規定されているものは介護保険と障害福祉の両制度に共通する以下の3種別が対象です。
- 共生型デイサービス(通所系):障害者の「生活介護」や「放課後等デイサービス」等と、高齢者の「通所介護(デイサービス)」等を一体的に提供
- 共生型ホームヘルプサービス(訪問系):障害者の「居宅介護」や「重度訪問介護」と、高齢者の「訪問介護(ホームヘルプ)」を一体提供
- 共生型ショートステイ(短期入所系):障害者の「短期入所」と、高齢者の「短期入所生活介護(ショートステイ)」を一体提供
上記のように、共生型サービスでは対応する障害福祉サービスの指定と対応する介護保険サービスの指定の両方を取得していることが前提になります。たとえば障害福祉サービス事業所で「居宅介護」や「重度訪問介護」の指定を持つところは、新たに 「共生型訪問介護」(介護保険の訪問介護)としての指定を受けることができます。逆に介護保険サービス事業所で「訪問介護」の指定を持つ場合は、「共生型居宅介護」や「共生型重度訪問介護」(障害者総合支援法に基づく居宅介護等)の指定を受けることが可能です。このように、お互いの制度で対応関係にあるサービスについて、それぞれ「共生型◯◯サービス」の指定を追加取得する形になります。
通知文書ではさらに、「上記以外のサービスであっても、障害福祉と介護保険の両方の基準を満たして両方の指定を受けているものも、『共生型サービス』と称することができる」ことが明確にされています。これはつまり、法律上は共生型サービスの対象とされていないサービス種別であっても、一つの事業所が障害福祉サービスと介護保険サービスの両方の指定を持ち、一体的に提供している場合は「共生型」と呼んでよいという意味です。例として、障害者向けのグループホーム(共同生活援助)と高齢者向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の両方の指定を取得して運営するケースも、「共生型サービス」に該当します。このような他分野にまたがるサービス連携も共生型サービスの一つとして位置づけ、地域共生社会の実現に向け積極的に推進することが望ましいとされています。
また、通知では次のようなパターンも「共生型サービス」と称することができるとしています。それは、介護保険サービスとして正式に指定を受けた事業所が、障害福祉サービスの「基準該当サービス」を活用して、一体的にサービスを提供しているケースです。
ここでいう「基準該当サービス」とは、正式な指定を受けていなくても、障害福祉制度上の基準を満たし、かつ実質的に同等のサービス提供が行われていると認められる場合に、自治体が“報酬上”の取り扱いを可能とする仕組みです。
この場合でも、介護保険の基準を満たし指定を受けた上で、障害福祉サービスについては「基準該当」として市町村の認定を受けた運用形態であれば、「共生型サービス」と称して問題ないとされています。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 対象サービスの確認: まず自事業所社が提供中のサービスに対応する介護保険 or 障害福祉のサービス種別を確認します。上記の通り、訪問系・通所系・短期入所系で対応関係にあるサービスが共生型の基本形です。該当する組み合わせであることが前提となります。
- 両制度の基準を満たす: 共生型サービスでは両方の制度の指定を取るため、それぞれの人員基準や設備基準を満たす必要があります。嬉しいことに、現在の障害福祉サービスの体制(人員配置や設備)をそのまま活用して介護保険サービスを提供することが認められており、追加の人員整備負担が軽減されています。とはいえ不足する資格者がいないか、記録や報告の方法など運営ルールの違いはないか、事前によく確認しましょう。必要に応じて研修の受講やマニュアル整備を行い、両制度の基準をクリアしてください。
- 指定申請の手続き: 共生型サービスとしてもう一方の制度の指定を受ける際は、所管行政(介護保険なら市町村、障害福祉なら都道府県等)への申請が必要です。申請時には一部提出書類が省略できる簡素化措置もありますので 、事前に窓口で確認するとよいでしょう。
【免責事項】
