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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十五 共同生活援助 2 設備に関する基準 (3) 共同生活住居 前半

同生活援助の基準をわかりやすく解説 – グループホーム開設条件とユニット型例外とは


記事の概要:
本記事では、「共同生活援助」(グループホーム)の共同生活住居に関する基準について、やさしくシンプルに解説します。記事本文では、共同生活住居の定義、必要な構造や設備の基準、そして都市部での例外的なユニット型グループホームについて、具体例を交えて丁寧に見ていきます。

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共同生活住居の定義とは?

まず「共同生活住居」とは何かを説明します。共同生活住居とは、グループホームで入居者が生活する住まいのことで、複数の居室(個室)と、居間・食堂・トイレ・浴室などを共有する一つの建物のことをいいます。要するに、グループホームでは入居者一人ひとりの個室があり、みんなで使うリビングやダイニング、お風呂やトイレといった共用スペースがひとつ屋根の下に備わっているのが基本です。家庭的な雰囲気の中で共同生活を送る住環境を用意することが、共同生活援助(グループホーム)の大前提になります。

また、入居できる人数(入居定員)は2人以上で10人以下と決められています。1人きりでは共同生活にならないため最低でも2人、そして大人数になりすぎると家庭的な雰囲気から離れてしまうため最大でも10人というわけです。例えば5人用の一戸建て住宅を借りてグループホームにする場合、個室5部屋とリビング・キッチン・浴室・トイレ等を共有する形になります。「グループホーム 開設条件」として、このように日常生活を共に送れるだけの部屋数と共用設備を備えた住宅を用意する必要があるのです。

では、マンションの一室などを使ってグループホームを開設することはできるのでしょうか? 基本的には「1つの建物につき1つの共同生活住居(グループホーム)」と考えるのが原則です。しかしマンション等の建物で一つの部屋(住戸)が十分広くて数人の共同生活に適している場合は、その1住戸をまるごと共同生活住居として使うことも認められています。例えば3LDKのマンションの一室を借りて、3人の障害のある方がルームシェアのように暮らすケースです。この場合も、リビングや浴室などを入居者で共有しながら生活します。ただし、ワンルームマンションのようにもともと居間や食堂を共有できない間取りの部屋は単独ではグループホームの住居として適さないため、そのような場合にはマンション内の複数の部屋をまとめて一つの共同生活住居(グループホーム)として設定することになります。例えば、同じ建物内の隣り合う2部屋を使い、一方を居室スペース、もう一方をみんなが集まる居間・食堂スペースのように組み合わせて運用するケースが考えられます。

注意したいのは、マンション等の建物丸ごとをすべてグループホーム専用の住居にすることは原則認められていないという点です。法律上、ひとつの建物に複数の共同生活住居を設置する場合でも、その建物内のグループホームの入居者合計が一定の人数を超えてはいけないとされています。大規模な集合住宅の全戸を使って何十人もの障害者が暮らすような形態は、事実上大きな入所施設のようになってしまい「家庭的な少人数の暮らし」というグループホームの趣旨に反するためです。具体的な人数制限については後述しますが、「一棟まるごとグループホーム」にしてしまう計画はできないと心得ましょう。

共同生活住居の構造および設備の基準

次に、共同生活住居の構造や設備に関する基準です。グループホームの建物(共同生活住居)は、入居する障害のある方にとって安全かつ暮らしやすい工夫が求められます。基準では明確な細目まで規定されていませんが、入居者の障害特性に応じて必要な配慮をした構造設備でなければならないとされています。例えば、車いすを利用する方が入居する場合には廊下や出入口の幅を車いすが通れる十分な広さにする、段差があればスロープを設置したりフラットに改修するなどバリアフリー化が必要です。視覚障害のある方が生活するなら床の段差解消や手すりの設置、認知症のある方であれば転倒防止の床材や徘徊防止の工夫、といったように利用者にとって安全・快適に日常生活を営める環境を整えます。

また、設備面では最低限居間・食堂・台所・浴室・トイレ等の生活設備が共同生活住居に備わっていなければなりません。これは前述のとおり、入居者が共同で食事をしたりくつろいだりする場が必要だからです。特に食堂(ダイニング)と台所は、食事の提供をする上で欠かせません。グループホームでは職員(世話人や生活支援員)が調理を行ったり、入居者と一緒に簡単な料理をすることもあります。そのためのキッチン設備と、みんなで食卓を囲むダイニングが必要です。トイレや浴室も人数に見合った数が求められます。例えば入居者が5人に対しトイレ1つだけでは混み合って不衛生になりかねませんので、可能であれば複数設置することが望ましいでしょう。もちろん浴室やトイレもバリアフリー対応が大切です。手すりの設置や段差なしのシャワールーム、車いす対応トイレなど、入居者が安全に使えるよう設備を整えます。

住宅の構造についても、プライバシーと共同生活のバランスを配慮します。個室には鍵をかけられるようにしつつ、共用スペースには職員の目が行き届くような間取りが望ましいです。火災報知器やスプリンクラーの設置など安全設備も忘れてはいけません。これらは消防法等の別の法令で定められているポイントですが、グループホーム開設時には消防署のチェックも受けることになります。加えて、車いす利用者がいる場合はエレベーター付きの物件が適していますし、そうでない場合も将来を見据えてエレベーターやスロープの有無は検討しましょう。

まとめると、共同生活住居の構造設備で重要なのは「入居者がその家で安全・快適に暮らせるか」という視点です。アットホームな雰囲気を保ちつつ、必要なバリアフリー改修や設備設置はきちんと行いましょう。物件選びの段階で、可能な限り段差の少ない平屋やエレベーター付きの建物を選ぶ、浴室が広めで手すりを付けられるスペースがある、といった点に注意すると良いでしょう。

都市部での例外的な取扱い(ユニット型グループホーム)

最後に、都市部などにおける例外的な取扱いとしてユニット型グループホームについて解説します。土地や物件の確保が難しい都市部では、「1つの建物の中に複数のグループホームを設置する」というユニット型の方式が特例的に認められる場合があります。これは前述の「基本は一棟一住居」という原則の例外で、例えば大きなビルの各フロアごとに少人数のグループホームを作るようなイメージです。ただし、誰でも自由にこの方式を採れるわけではなく、都道府県知事が地域の事情から特に必要と認めた場合に限られます。ユニット型を導入するには満たすべき条件がいくつかあり、行政と十分に調整した上で計画する必要があります。

ユニット型の主な条件としては、以下のような点が挙げられます:

  • 入居定員の制限: ひとつの建物内に設置する複数ユニットの合計入居定員は20人以下であること(短期入所の利用者は除きます)。各ユニットあたりの入居者も原則2~10人以下ですが、ユニット型の場合は1ユニットあたり6人以下が望ましいとされています。少人数のユニットを複数集めることで、ビル一棟でもできるだけ家庭的な少人数ケアの形を保つ狙いがあります。
  • 建物構造上の独立性: 同じ建物内であっても各ユニットごとの独立性が確保されていなければなりません。例えば、ユニットごとに玄関やキッチンなど出入り口・主要設備が分かれていることが求められます。フロアごとに鍵付きのドアで区切られていれば玄関が別になりますし、ユニット間で居住空間が混ざらないよう明確に分離する必要があります。
  • 地域支援拠点としての機能: ユニット型グループホームを導入する場合、単に入居者が暮らす場を提供するだけでなく、地域の障害者支援拠点としての役割も期待されます。例えば、その建物内でショートステイ(緊急時の一時宿泊)を受け入れたり、地域の障害者に対する相談窓口機能を併設するなど、地域全体を支えるサービスを一体的に提供する計画になっていることが条件として示されています。これは都市部で貴重な物件を有効活用する代わりに、地域の福祉インフラとしての役割も担ってもらおうという趣旨です。自治体の障害福祉計画の中で位置づけられている事業であることが求められる場合もあり、ユニット型を実現するには事前に行政との十分な協議が必要です。

以上のように、ユニット型グループホームは都市部で土地不足を補い柔軟にグループホームを提供する手段ですが、その分クリアすべきハードルも高く設定されています。既存の一般住宅を利用する従来型のグループホームに比べて、行政から事前に特別な許可を得るプロセスが必要だったり、追加のサービス提供体制を求められたりする点に注意しましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 庭的な住環境の用意: 共同生活援助(グループホーム)を開設するには、居室(個室)と共有のリビング・ダイニング(食堂)・キッチン・浴室・トイレ等が備わった住宅を用意する必要があります。入居者同士が共同で生活できる間取りと設備を整えましょう。
  • 入居定員の遵守: グループホーム1ユニット当たりの入居者数は原則2~10人までです。定員が多すぎると許可が下りないだけでなく、家庭的な雰囲気が損なわれます。既存の大きな建物を転用する特例では20人(最大30人)まで認められるケースもありますが、新規開設では基本10人以下と覚えておきましょう。
  • バリアフリー等の設備対応: 入居者の障害状況に応じて住宅を改修・設備調整しましょう。車いす対応のスロープや手すりの設置、段差解消、十分な廊下幅の確保など、安全に暮らせる環境づくりが大切です。設備面では入居者が共同生活を送るためのリビング・台所・浴室等をしっかり整備し、必要に応じて福祉用具の導入も検討します。
  • ユニット型導入は要相談: 都市部でどうしても物件が確保できない場合は、一棟の建物に小規模ユニットを複数置く方法(ユニット型)もありえます。しかし、その際は都道府県との事前協議が必須です。ユニット型は一棟合計20人以下・各ユニット6人程度までといった厳しい条件に加え、緊急時の受け入れや地域支援拠点としての役割を果たす体制整備なども求められます。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。