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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第五(生活介護) 3 運営に関する基準 (4)の2 職場への定着のための支援等の実施

活介護事業における職場定着支援のポイント(基準第 85 条の2)


記事の概要:
指定生活介護事業者は、利用者が企業などに新たに就職した場合、その方が職場になじんで長く働き続けられるよう支援する義務があります。この職場定着のための支援は、障害者総合支援法に基づく運営基準(基準第85条の2)で定められた重要な取り組みです。簡単に言えば、生活介護を利用していた障害者が就職した後も、少なくとも6か月間は生活介護事業所がフォローし、職場への定着(=仕事を続けること)をサポートするというものです。この記事では、この「職場への定着のための支援等」の内容について、やさしくシンプルに解説します。

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就職した利用者を6か月フォローする義務とは?

生活介護は本来、障害者の日中活動を支える障害福祉サービスです。しかし近年、生活介護を利用していた障害者が企業で採用されて働き始めるケースも出てきました。その際に大事なのが「職場への定着のための支援」です。法律の基準第85条の2では、生活介護の利用者が一般企業等に新しく雇用されたとき、事業所はその人がスムーズに職場になじむように少なくとも就職後6か月間は継続して支援を行うことと定めています。6か月という期間は最低限であり、必要に応じてそれ以上の支援を続けることも想定されています。例えば就職直後の不安定な時期に手厚くフォローすることで、「せっかく就職したのにすぐに辞めてしまう…」という事態を防ぐ狙いがあります。

なお、「6か月間」というのは就職した日から起算して6か月です。仮に利用者が一時的に休職して生活介護や他の就労支援サービス(就労移行支援や自立訓練など)を利用し、その後復職・労働時間延長したような場合でも、復帰後改めて6か月間は支援を続けるイメージです。要は、「働き始めてしばらく(最低半年)は引き続き見守ってサポートすること」が事業者の責務なのです。

職場定着を支える具体的な支援内容

では、具体的に生活介護事業所はどんな支援をするのでしょうか。基準では以下のようなポイントが挙げられています。

  • 専門機関との連携: 事業所単独で抱え込まず、障害者就業・生活支援センターや職場適応援助者(ジョブコーチ)といった就労支援の専門機関としっかり連携します。障害者就業・生活支援センターは各地域に設置された、公的な障害者の就労相談機関です。職場適応援助者(ジョブコーチ)は職場に出向いて働く本人や受け入れ企業を支援する専門家です。こうしたプロの力も借りながら、チームで利用者の職場定着を後押しします。
  • 事業主(雇用先)への助言: 就職先の企業側にも働きかけます。障害のある方を初めて雇用する企業は、職場でどんな配慮をすれば良いか戸惑うこともあります。生活介護事業所は雇用主に対して助言を行い、障害特性に応じた業務上の工夫や職場環境の調整についてアドバイスします。例えば「休憩時間を柔軟に設定してみましょう」「通勤経路で困り事がないか確認しましょう」など、企業側と相談しながら職場環境を整える支援をします。
  • 利用者や家族への相談支援: 就職後には本人も緊張や不安を抱えがちです。職場での不適応(なじめない、困りごとがある 等)への対応として、生活介護事業所のスタッフが職場訪問や家庭訪問を行い、本人やその家族から相談を受けたりアドバイスしたりします。職場訪問では実際の働く様子や職場の人間関係を把握し、必要に応じて職場の上司や同僚とも情報交換をします。一方、家庭訪問では家族から体調管理やメンタル面の変化について話を聞き、必要な支援につなげます。こうしたきめ細かな相談支援により、利用者が「働き続けられそうだ」という安心感を持てるようサポートします。

以上のように、生活介護事業所は「就職した後も見守り隊」としての役割を担います。ポイントは、本人・家族・企業・支援機関の四者で協力し合い、問題が起きそうなら早めに対処することです。定期的なコミュニケーションとフォローアップにより、利用者が新しい職場で徐々に自信をつけ、安定して働き続けられるよう支援します。

支援内容のまとめ表

以下に、職場定着支援の主な内容を表にまとめます。

支援内容具体例・ポイント
専門機関と連携障害者就業・生活支援センターへの相談依頼、ジョブコーチとの打合せ
雇用先への助言配慮事項の提案(業務手順の工夫、通勤方法の調整など)
職場・家庭での相談支援定期訪問による本人・家族からの聞き取り、職場での困り事の早期発見
継続的なフォロー電話やメール等での定期的な状況確認、関係機関との情報共有


就労定着支援サービスへの円滑なつなぎ

支援期間の6か月が過ぎた後はどうなるのでしょうか? ここで登場するのが新しく創設された「就労定着支援」という障害福祉サービスです。就労定着支援は、企業に就職した障害者が長期的に安定して働けるように支援する専門サービスで、最長3年間にわたり(就職後から3年半まで)定期的な面談や職場訪問などを行うものです。生活介護事業所は、利用者が就職後6か月を経過したタイミングで、この就労定着支援サービスにスムーズにつながるよう橋渡しをする役割も求められています。

具体的には、生活介護事業所が自社で就労定着支援事業を行っている場合は、就職から6か月が経過する頃合いで利用者本人の希望を確認し、希望があれば引き続き同じ事業所内で就労定着支援の利用を開始できるよう準備します。ここで重要なのが計画相談支援事業者(相談支援専門員)との連絡調整です。相談支援専門員は利用者ごとのサービス等利用計画を作成するケアマネージャー的存在ですので、就労定着支援を利用するには計画の見直しや給付費の手続きが必要です。生活介護事業所は相談支援専門員やその他関係機関と協議し、途切れなくサービス移行できるよう手続きを進めます。

一方、生活介護事業所が就労定着支援事業を実施していない場合でも心配いりません。他の法人が提供している就労定着支援サービスを紹介・利用調整します。この場合も相談支援専門員や地域の就労支援機関と連携し、利用者が希望すれば適切な就労定着支援事業所につながるよう努めます。大切なのは、「就職後6か月経ったらハイ終わり」ではなく、その先も見据えてしかるべき支援者へバトンタッチすることです。

なお、利用者本人が「もう十分慣れたので専門的な支援サービスは利用しない」と希望する場合もあります。そのようなケースでも、生活介護事業所は関係機関と情報共有し、必要に応じて相談対応できる体制を続けるよう調整する責任があります。たとえば相談支援専門員に経過を報告し、いつでも相談できる窓口があることを利用者に案内する、といった配慮です。いずれにせよ、就職した障害者が孤立せず安心して働ける環境を整えることがゴールになります。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 生活介護も就労支援を担う: 「うちは生活介護だから就労支援は関係ない」と思いがちですが、制度上は生活介護も就労支援の一端を担うことになります。利用者が就職した際には、少なくとも6か月間は責任を持ってフォローする義務があると心得ましょう。
  • 支援開始のタイミング: 支援は「就職したその日からスタート」します。特に退所や利用終了の手続きを待つ必要はありません。利用者が企業で働き始めたら、速やかに体制を整えましょう。「おめでとう、そしてこれからが大事です!」という姿勢で初日から伴走します。
  • 関係機関とのネットワーク作り: いざ支援が必要になってから慌てて探すのではなく、平時から障害者就業・生活支援センターやジョブコーチとのネットワークを構築しておくと安心です。地域の就労支援担当者との情報交換会や勉強会に参加し、顔の見える関係を作っておくと、連携もスムーズになります。
  • 支援内容の記録・共有: 就職後の訪問支援や助言内容はしっかり記録し、チーム内で共有しましょう。誰がいつどんな支援を提供したか履歴を残すことで、支援の抜け漏れ防止と質の担保につながります。また、行政による監査や運営指導の際にも「基準第85条の2に基づく支援を実施しているか」はチェックされる可能性があります。記録があればエビデンスとなり、事業所の信頼にもつながります。
  • 就労定着支援サービスの活用: 利用者が希望する場合は、就労定着支援という専門サービスへの橋渡しをしっかり行いましょう。自事業所で就労定着支援を持っていれば事業内連携を、持っていなければ他事業所と連携を、という具合に事前準備が必要です。起業を考える方も、将来的に自社で就労定着支援事業を併設するか、地域資源を活用するか検討しておくと良いでしょう。
  • 利用者本人の意思尊重: 支援を進める上で、利用者本人の「こうしたい」「これは不要」といった意思を尊重することが大前提です。就労定着支援の利用を希望しない場合でも、代わりにどんなフォローがあれば安心して働けるか、本人とよく話し合ってください。「支援してあげる」ではなく「一緒に考える」というスタンスが、結果的に長期的な職場定着につながります。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。