指定小規模多機能型居宅介護事業所等の特例(基準第94条の2)をわかりやすく解説
記事の概要:
高齢者向けの介護施設をうまく活用して障害福祉サービスを提供できる「指定小規模多機能型居宅介護事業所等に関する特例」という制度があります。この特例は障害福祉サービスの起業を考える人にとって知っておきたい重要ポイントです。
本記事では、この規模多機能型居宅介護事業所の特例(基準第94条の2)について、シンプルにやさしく解説します。
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特例とは何か? ~高齢者施設で障害者のデイサービスができる!~
まず「指定小規模多機能型居宅介護事業所等に関する特例」とは何でしょうか。ひと言でいうと、地域に障害者向けのデイサービス(生活介護)が足りない場合に、高齢者向けの小規模多機能型居宅介護事業所を活用して障害者のデイサービスを提供できるようにする特別な仕組みです。難しく聞こえるかもしれませんが、要はお年寄り向けの施設を使って、障害者向けサービスも提供してOKですよという制度だと考えてください。
※参考: 小規模多機能型居宅介護とは、高齢者向け介護保険サービスの一つです。デイサービス(通い)、ショートステイ(泊まり)、ホームヘルプ(訪問)の3つのサービスを一体的に提供できる地域密着型の介護事業所のことを指します。
この特例が生まれた背景には、「共生型サービス」という考え方があります。共生型サービスとは、介護保険サービス(高齢者向け)と障害福祉サービスを同じ事業所で提供できるようにする仕組みで、2018年(平成30年)から始まりました。高齢者も障害者も地域で一緒に支え合うための制度で、例えば生活介護(障害者のデイサービス)が地域に無い場合、代わりに高齢者施設でデイサービスを受けられるようにすることで、サービスの空白地帯を埋める目的があります。
基準第94条の2はまさにこの共生型サービスの一環で、法律上は「障害者総合支援法に基づく厚生労働省令(障害福祉サービス基準)の第94条の2」に定められています。内容は少し法律的ですが、ポイントをかみ砕いて説明していきます。
特例の具体的な内容 ~生活介護サービスが「みなし指定」される~
特例の仕組みを具体的に説明しましょう。通常、障害福祉サービスの生活介護(障害者の日中活動支援サービス、いわゆるデイサービス)を提供するには、都道府県などから指定生活介護事業所として指定を受ける必要があります。しかし、この特例では、既に介護保険で指定を受けている小規模多機能型居宅介護事業所が一定の条件を満たす場合に、その事業所で提供する障害者向けの通いサービス(デイサービス)を「基準該当生活介護」として扱います。簡単に言うと、正式な指定はないけれど基準を満たしている生活介護サービスとしてみなして良いということです。
この特例を活用すると、小規模多機能型居宅介護事業所が障害者に提供する日中サービスが、実質的に障害福祉サービスの生活介護と同じように認められます 。その結果、利用者である障害者はその小規模多機能の事業所でデイサービスを受けられ、事業所側も障害福祉サービスとしての報酬(給付費)を請求できるようになります。まさに「高齢者施設で障害者サービス」を可能にするルールなのです。
ただし、この特例を使うにはいくつかの条件があります。地域に生活介護の事業所が少なくて障害者がサービスを受けにくい場合に限られるため、誰でもどこでも適用できるわけではありません。次に、その適用条件をひとつずつ見ていきましょう。
特例の適用条件 ~5つの要件をチェック~
指定小規模多機能型居宅介護事業所等の特例を利用するためには、事業所が次の5つの条件を満たす必要があります 。それぞれ順番に解説します。
登録定員は29人以下であること。
小規模多機能型居宅介護事業所の登録定員とは、その事業所に利用登録できる利用者の最大人数のことです。特例では、この登録定員を29人以下にする決まりです。要するに、お年寄りと障害者を合わせて登録できる人数は30人未満に抑えてねということです。
1日あたりの通いサービス利用定員は、登録定員の1/2~15人までの範囲内に収めること。
小規模多機能型居宅介護事業所が1日に提供できる通いサービス(デイサービス)の利用者数にも上限があります。条件では、「登録定員の半分から15人までの範囲内」と定められています。ちょっと分かりづらい表現ですが、具体的には登録定員25人なら最大12~13人程度、登録定員が29人であっても1日あたり18人までというイメージです(※例えば登録定員が26~27人なら1日最大16人、28人なら17人、29人なら18人まで利用可能とされています)。つまり、施設に登録している人全員が一度に来るわけではなく、日々利用する人数は絞って運営する必要があります。
居間および食堂は機能を十分発揮できる広さであること。
施設の設備面の条件です。小規模多機能型居宅介護事業所の共用スペースである居間や食堂が、利用者にとって狭すぎず適切な広さを持っていなければなりません。要は、障害者も含め皆が集まる部屋は、ちゃんと余裕をもって活動できる広さを確保しましょうということです。狭すぎると安全面でも支障が出ますし、ゆったり過ごせる空間が必要ですね。
スタッフの人数が利用者数に見合った基準を満たしていること。
サービスを提供する従業員(スタッフ)の配置基準に関する条件です。高齢者向けと障害者向けの利用者を合わせた場合でも、必要な職員数をちゃんと満たしていることが求められます。具体的には、障害者が増える分だけヘルパーや介護職員をきちんと追加配置して、高齢者だけの場合と比べて手薄にならないようにする必要があります。簡単に言えば、お年寄り+障害者の合計人数に対して十分なスタッフを確保しておきましょうということです。スタッフ体制が不足すると良い支援ができませんので、この点は重要です。
障害者へのサービス提供にあたり、専門の事業所から技術的支援を受けていること。
最後は外部からの支援についての条件です。障害者に適切なサービスを提供するために、指定生活介護事業所などの関係施設から必要な技術的支援を受けていることとされています 。簡単に言うと、障害者支援のプロ(例えば既存の障害者支援施設や先輩事業所)に助言や協力を仰いでくださいねということです。高齢者介護のノウハウだけで障害者のケアをするのは難しい場合があります。ですから、例えば生活介護事業所や障害者支援センターと連携して、スタッフ研修を受けたり相談できる体制を作ったりすると良いでしょう。
以上が特例を利用するための5つの条件です。まとめると、「定員に余裕を持たせ、設備と人員をきちんと整え、専門家のサポートも受けながら運営すること」がポイントだと言えます。条件だけ見ると少し大変そうですが、地域で障害者を受け入れるために必要な最低限の配慮と考えれば納得ですね。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 地域のニーズに基づいて特例を活用するかを確認: 特例は地域に生活介護のサービスが不足している場合に適用されます。まずは自治体の福祉担当部署に相談し、特例の適用条件を確認しましょう。
- 小規模多機能型居宅介護事業所の指定を受ける:この特例を活用するためには、介護保険の小規模多機能型居宅介護事業所の指定を受けることが前提です。すでに運営している場合は、その施設で障害者向けサービスを提供できるよう整備しましょう。
- 定員や利用人数の上限を守る:登録定員は最大29人まで、1日の通いサービス利用人数は登録定員の半分~15人以内に収めることが求められます。利用者数が増えすぎないよう、柔軟に対応することが大切です。
- 施設の広さや設備に十分な余裕を持つ:居間や食堂などの共用スペースの広さが十分でないと、障害者を受け入れるのが難しくなります。施設内の設備をチェックし、広さや安全面を確保しましょう。
- スタッフ数と専門的支援の確保:利用者数に見合ったスタッフ数を確保し、障害福祉サービスの提供に必要な専門的支援を受ける体制を整えましょう。障害者向けのケアに関しては、近隣の支援施設と連携するのも良い方法です。
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