医療型障害児入所施設における利用者負担額の受領と追加費用
記事の概要:
本記事では、医療型障害児入所施設の運営基準第54条「入所利用者負担額の受領」について、やさしくシンプルに解説します。利用者負担額の考え方、施設が追加で請求できる費用の範囲、領収証の発行義務や保護者の同意の必要性など、重要ポイントを丁寧に整理しました。
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入所利用者負担額の受領について
医療型障害児入所施設とは、医療的ケアが必要な障害児が入所して支援を受ける施設です。この施設の運営に関する基準第54条では、保護者から受け取る費用のルールが定められています。ポイントは大きく5つありますので、順番に見ていきましょう。
入所利用者負担額の受領(第54条第1項): まず、施設は児童福祉法に基づく入所支援サービスを提供した際に、保護者から利用者負担額を受け取らなければなりません。利用者負担額とは、子どもの保護者の収入状況に応じて定められる自己負担金のことです。例えば、世帯収入が一定以下の場合は負担上限額が低く抑えられるなど、詳細は児童福祉法施行令で定められています。施設側は法定代理受領という仕組みを通じて、市町村から給付費(公費負担分)の支払いを直接受け取り、保護者からは定められた自己負担分のみを徴収します。要するに、保護者は法律で決まった金額だけを施設に支払い、それ以外の費用は行政から施設に支払われるという形です。なお、障害児入所医療費(医療サービス部分の費用)についても同様に扱われます。
法定代理受領を行わない場合の対応(第54条第2項): 通常は法定代理受領方式を採りますが、何らかの理由で施設が法定代理受領を行わない場合もあり得ます。この場合、施設は保護者に対して利用者負担額に加えて、障害児入所給付費(公費負担分)も直接受け取ることになります。つまり、保護者から施設へ一旦全額を支払ってもらい、後から保護者が市町村に給付費を請求するという「償還払い」の形になります。ただし、この方式は手続きの負担が大きいため、実務上はほとんどの施設が法定代理受領を利用するのが一般的です。
追加で受領できる費用の範囲(第54条第3項): 次に、施設が利用者負担額以外に受け取れる費用についてです。第3項では、入所支援サービスの提供に伴って必要となる便宜(サービス)のうち、以下のような費用を施設が別途受領できると規定しています。
- 日用品費: 利用児童の日常生活で使う日用品の費用です(例: おむつ代やティッシュペーパーなどの消耗品)。
- その他日常生活に通常必要となるものの費用: 日常生活上必要なもので、保護者に負担してもらうことが適当と認められるものの費用です。例えば、子どもの個人的な希望による嗜好品や娯楽費用ではなく、通常の生活に欠かせない身の回りの品が該当します。具体的な範囲については、厚生労働省の通知(平成24年3月30日付「障害児通所支援又は障害児入所支援における日常生活に要する費用の取扱いについて」)で細かく示されています。
上記の費用は、公的給付の対象外ですが、適正に説明し同意を得ることで施設が保護者から徴収できます。すべての利用者に一律に提供されるサービスではなく、各児童の生活上必要となる個別の費用が念頭に置かれています。施設は経費の範囲が逸脱しないよう、この通知を参考に適切に判断する必要があります。
領収証の交付義務(第54条第4項): 施設が第1項から第3項までで述べたいずれかの費用を保護者から受け取った場合は、必ず領収証を発行して保護者に渡さなければなりません。領収証は、どの費用をいくら受け取ったかを証明する大切な書類です。保護者側にとっても支払った証拠が残るため、金銭トラブルを防ぐ効果があります。事業者は領収証を適切に発行・保管し、経理の透明性を確保しましょう。
保護者の同意の必要性(第54条第5項): 最後に、追加費用を伴うサービス提供時の手続きについてです。施設が第3項に該当するような日用品費等の追加費用を保護者に負担してもらうサービスを提供する場合、事前にそのサービス内容と費用を保護者へ説明し、同意を得なければなりません。例えば、「◯◯という日用品を毎月◯円で提供しますが、費用をご負担いただいてよろしいですか?」という具合に、内容と金額を具体的に伝え、文書や口頭で了承をもらいます。この同意をきちんと取っておけば、後から「聞いていない費用を請求された」といったトラブルを防止できます。利用者負担の透明性を高め、保護者との信頼関係を築くためにも重要なステップです。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者負担額の適正な徴収: 医療型障害児入所施設では、法律で定められた利用者負担額を保護者から受領します。法定代理受領を利用すれば保護者からは自己負担分のみ徴収し、利用しない場合は保護者から全額を預かる形になります。まずは制度に沿った正しい請求方法を選択・実施することが重要です。
- 日常生活費など追加費用の扱い: 入所中の子どもの日用品費など、日常生活に必要な追加費用は別途徴収可能です。ただし、公費で賄われない範囲に限られ、国の通知で具体例が示されています。闇雲に請求せず、何が適切な自己負担か基準を理解した上で、適正に徴収しましょう。
- 領収証の発行と事前の同意・説明: 保護者からお金を受け取ったら必ず領収証を発行し、金銭のやり取りを明確に記録します。また、追加費用が発生するサービス提供時には、事前に内容と費用を説明し同意を得ることを徹底しましょう。この2点は信頼関係の土台であり、コンプライアンス上も重要な義務です。
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