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独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 1 人員に関する基準 (2) 

童発達支援センターの職員配置基準をわかりやすく解説


記事の概要:
令和6年の児童福祉法改正に伴い、児童発達支援センターの指定基準(職員や設備の最低基準)が変更されました。これまで福祉型・医療型などに分かれていた類型が統合され、原則として福祉型の基準をベースにしつつ、必要に応じて旧医療型の要件を追加する形となっています。また、経過措置として、改正前から指定を受けていた旧医療型や難聴児中心、重症心身障害児中心の施設については、令和9年3月31日まで(3年間)、従前の基準で運営できる猶予期間が設けられています。つまり、これらの施設は、2027年3月末までは旧基準での職員配置でも認められることになります。

では、新しい職員配置基準(基準第6条)の主なポイントを順番に見ていきましょう。

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1. 治療を行う場合は診療所並みの職員が必要

児童発達支援センターで肢体不自由のある障害児に対して治療行為(医療的ケアを伴う支援)を提供する場合、通常の福祉サービスの人員に加えて、医療法に定める「診療所」に必要な職員も配置しなければなりません。これは、センター内でリハビリテーションや医療的ケアを行うときは、小児科のクリニック等と同等の専門スタッフを揃える必要があるということです。具体的には、医師や看護師、理学療法士など、診療所開設に求められる職種を必要数確保する必要があります。障害児の安全と医療サービスの質を担保するため、「治療も行う児童発達支援センターは小さな病院でもある」という位置づけで人員体制を整えるイメージです。

2. 機能訓練担当職員は児童指導員等として算入可能(半数ルールあり)

機能訓練担当職員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士や心理指導担当職員など、発達支援の専門スタッフ)を配置する場合、そのスタッフが専従(その提供時間帯に専ら児童発達支援の業務に当たる)であれば、児童指導員または保育士の配置人数に含めることができます。例えば、あるクラスの活動時間中、理学療法士が常に障害児の支援を行っている場合、その理学療法士を児童指導員の一人として数えてよいということです。これにより、専門スタッフを効果的に活用しつつ、人員基準を満たしやすくなります。

ただし、児童指導員または保育士が過半数を占めることという条件があります。具体的には、専従の機能訓練担当職員等を児童指導員等の数に含める場合でも、少なくとも半数以上は児童指導員または保育士でなければなりません。例えば、基準上4人の「児童指導員または保育士」が必要な場合、そのうち2人以上は実際に児童指導員か保育士の有資格者を配置し、残りを機能訓練担当職員等で充当することが可能です(※必要人数が奇数の場合は切り上げて半数以上と考えます)。この「半数ルール」によって、専門職ばかりでなく保育・指導の専門性も確保し、バランスの取れた支援体制を維持する狙いがあります。

3. 栄養士・調理員は併設施設と兼務可能

児童発達支援センターでは、食事提供や栄養管理のために栄養士および調理員の配置が求められています。しかし、新基準では栄養士と調理員については、併せて設置する社会福祉施設との兼務が認められるようになりました。つまり、センターが他の福祉施設(例えば障害者施設や保育所など)と同じ場所に併設されている場合、その栄養士や調理員をセンターと他施設で兼任させることが可能です。これにより、厨房スタッフを効率よく配置し、人件費の無駄を省くことができます。ただし、兼務によって児童への食事提供に支障が出ないよう、勤務シフトや業務配分には十分配慮する必要があります。

4. 医療スタッフの一部も併設施設と兼務可能

前述の治療行為に関連しますが、児童発達支援センターで医療的ケアを行う場合に配置が必要となる診療所スタッフについて、障害児の保護(ケア)に直接従事しない職員であれば、併設する社会福祉施設等との兼務が認められています。例えば、センターにおける嘱託医や理学療法士など、子どもたちの日常介助とは直接関わらない専門職は、同じ法人の別施設(診療所や他の福祉施設)と掛け持ちしても構わないということです。一方で、障害児の日常支援に直接あたるスタッフ(児童指導員や看護師等)は兼務できません。この規定により、医師やセラピスト等の専門職を効率的に配置しつつ、子どもたちのケアに集中すべき職員はしっかり専任で配置する、というメリハリのある運用が可能になります。

5. インクルージョン推進のため交流保育時の職員兼務を容認

近年重要性が高まっているインクルージョン(障害児の地域社会への参加及び包摂)を推進する観点から、新基準では障害児と健常児の交流活動に関する人員配置の柔軟化が図られました。具体的には、障害児が通う児童発達支援センターと、地域の保育所や幼稚園等に通う子どもたちを交流させる場合において、障害児の支援に直接従事する職員が、交流相手である健常児への保育も同時に担うことが認められたのです。これは「交流保育」のような場面を想定した規定で、例えばセンターの児童指導員が近隣保育園の子どもたちとセンター利用児童の合同遊びを見守る場合などに、その指導員が健常児の面倒を見ることもできるという意味です。ただし条件として、障害児への支援に支障がない範囲であることが求められます。あくまで主役は障害児支援であり、それをおろそかにしない範囲で健常児との交流をサポートする形です。この緩和策により、地域の子どもたちとの交流イベント等を実施しやすくなり、障害児の社会参加の機会拡大が期待できます。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 福祉型・医療型の一元化と経過措置: 令和6年4月から児童発達支援センターの基準が統一され、原則福祉型ベースの新基準が適用。旧医療型や難聴児・重症心身障害児向けのセンターは2027年3月末まで旧基準で運営可能という経過措置があります。新規で開業する場合は最初から新基準に沿った人員配置が必要です。
  • 専門職の活用と配置基準: 理学療法士などの機能訓練担当職員を配置する場合、その専従スタッフを児童指導員/保育士としてカウント可能です。ただし、児童指導員または保育士が半数以上というルールを忘れないようにしましょう。専門職ばかりに頼らず、保育・指導職とのバランスを取ることが求められます。
  • 職員の兼務ルール: 栄養士・調理員は併設施設と兼務OK、医師やセラピスト等の医療スタッフも障害児の直接支援に当たらない範囲で兼務OKとされています。また、インクルージョン(交流保育)の場面では、センター職員が健常児の保育を一時的に兼務しても良いなど、柔軟な運用が可能です。これらの兼務ルールを上手に活用し、人員体制の効率化と質の向上を図りましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。