児童発達支援における業務継続計画(BCP)策定のポイント
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児童発達支援事業所における業務継続計画(BCP)策定の義務化について、2024年度の制度改正で新たに規定されました。感染症の流行や自然災害が起きても障害のあるお子さんへの支援を止めないために、事業所ごとに非常時の業務継続計画(BCP)を作成し、職員に対して訓練を行うことが義務付けられています。本記事では、このBCP策定義務の内容と具体的な計画項目について、やさしくシンプルに解説します。
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業務継続計画(BCP)策定と研修の義務化
業務継続計画(BCP)とは、感染症のまん延や大地震など非常事態が起きた際に、事業をどう継続するかを定めた計画のことです。児童発達支援事業所など障害福祉サービスの現場では、新型コロナウイルス感染症の流行や大規模災害を受けて、このBCPの策定が強く求められるようになりました。2024年度の報酬改定により、各事業所は「感染症発生時用BCP」と「自然災害時用BCP」の両方を策定し、さらにその計画に沿って必要な研修やシミュレーション訓練を職員に実施することが義務化されています。単に計画書を作るだけでなく、実際に職員が非常時に動けるよう訓練まで行う必要がある点が重要です。
この義務は法令上「指定児童発達支援事業者はBCPを策定し職員研修等を行わなければならない」と規定されたもので、現在はBCP未策定の場合に報酬が減算される仕組み(BCP未策定減算)も導入されています。
なお、業務継続計画の策定や研修の実施は一つの事業所単独でも他の事業所と連携して行っても構いません。地域の関連施設と協力して共同で訓練を行うなど、互いに支え合う体制を築くことも可能です。特に非常時は関係機関との連携が鍵になるため、平時からネットワークを作っておくと良いでしょう。また、緊急時の対応訓練には可能な限り全ての職員が参加することが望ましいとされています。災害や感染症対応ではスタッフ一人ひとりの役割分担とチームワークが欠かせないため、全員で訓練し非常時の動きを共有しておくことが重要です。
業務継続計画に盛り込むべき内容
では、具体的にBCPにはどのような内容を盛り込む必要があるのでしょうか。ポイントは「感染症発生時に備える計画」と「自然災害発生時に備える計画」をそれぞれ用意することです。それぞれの計画には共通して、「平常時からの事前準備」「緊急事態発生時の初動対応」「被害拡大防止や外部連携の体制確立」といった観点を含めます。厚生労働省・こども家庭庁からは計画策定の参考に「障害福祉サービス事業所等における感染症発生時の業務継続ガイドライン」や「...自然災害発生時の業務継続ガイドライン」が示されています。地域によって起こりやすい災害も異なるため、BCPの項目は各事業所の実情に応じてカスタマイズすることが大切です。なお、感染症用と災害用の2つのBCPを別々に作成するかたちでも、一体型の総合BCPとして一本化するかたちでも問題ありません。
以下に、感染症発生時と災害発生時それぞれでBCPに含めるべき主な項目を整理します。平常時からの備えとして何をしておくか、緊急時にはどう動くか、誰と連携し情報共有するか、といった観点で計画を作成しましょう。
上記のような項目を平時から計画書にまとめ、定期的に見直しておくことが求められます。感染症・災害ともに起こってから慌てないよう、普段から備蓄や手順をチェックしておきましょう。計画策定時には想定シナリオ(例えば「施設内で陽性者が出た」「大地震で停電した」等)ごとに具体的な対応を洗い出すと効果的です。作成したBCPは事業所内で共有し、新人職員にも周知することで、いざというとき全員が迷わず動けるようになります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 児童発達支援でBCP策定は必須(2024年義務化): 感染症流行時と自然災害時、両方に対応した業務継続計画(BCP)を立て、職員への研修・訓練を行うことが法律で義務化されました。未策定の場合は2025年以降、報酬減算(ペナルティ)の対象となるため注意が必要です。
- BCPに盛り込むべき主要項目: 感染症BCPには「平常時の備え」「初動対応」「感染拡大防止策」、災害BCPには「平常時の備え」「緊急時の対応」「他施設や地域との連携」をそれぞれ含めます。公式ガイドラインも参考に、自事業所に必要な項目を洗い出して計画しましょう。
- 全職員への周知と連携体制: BCPは作っただけでは不十分です。計画に沿った研修やシミュレーション訓練を定期的に実施し、全職員が非常時対応を理解・共有することが重要です。また、地域の他事業所や行政とも平時から連携を図り、いざという時に協力できるネットワークを構築しておきましょう。
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