児童発達支援における安全計画と車両運行管理の新ルール解説
記事の概要:
児童発達支援事業所において、子どもの安全確保のためのルールが強化されました。具体的には、「安全計画」の策定義務と送迎時の子どもの所在確認および車内安全装置の設置義務が新たに設けられています。これは、近年発生した送迎バスでの痛ましい事故を踏まえ、子どもの安全対策を徹底するための省令改正によるものです。本記事では、これら新ルールの内容をやさしくシンプルに解説します。
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安全計画の策定義務とは?
児童発達支援事業所では、障害のある子どもの安全を確保するための「安全計画」を、事業所ごとに作成し実施することが義務づけられました(基準第40条の2第1項)。安全計画とは、施設設備の安全点検や日常生活・外出時の安全指導、そして職員への研修・訓練など、子どもの安全確保に関する取り組みを盛り込んだ計画書です。各事業所はこの計画に沿って必要な措置を講じ、定期的に見直しを行うことが求められます。なお、安全計画を策定する際には、行政から示される予定の「安全確保の手引き」(ガイドライン)を参考にするとよいでしょう。
なぜ安全計画が必要なのか?
児童発達支援の現場では、送迎や散歩、公園での活動、室内での遊びや療育など、さまざまな場面でリスクが存在します。過去には施設内外での事故やヒヤリハットも報告されており、事前に対策を講じておくことが重要です。安全計画を立てることで、年間を通じて計画的に安全対策を実施できます。例えば、設備の定期点検を行い記録することで故障や危険箇所を早期発見・改善できますし、避難訓練や不審者対応訓練を予定に組み込めば、職員と子どもの準備度を高められます。また、安全に関するルールをマニュアル化して職員間で共有しておけば、新人スタッフや非常勤スタッフでも迷わず対応できるでしょう。こうした取り組みを体系的にまとめたものが安全計画であり、子どもの命と健康を守る礎となります。
安全計画に含める内容の例:事業所によって具体的な計画内容は異なりますが、一般的に以下のような項目を盛り込みます。
このように安全計画では、「いつ・どのような安全対策を行うか」を年間スケジュールで示し、着実に実行していくことが大切です。ちなみに、安全計画の策定は2023年度(令和5年度)は努力義務とされ、2024年4月以降(令和6年度)に完全義務化されました。
送迎時の所在確認義務と車内安全装置とは?
児童発達支援では、送迎サービス(通所のため自宅と事業所間の送迎や、事業所外での活動への移動)を提供することがあります。こうした車両送迎を行う場合、乗車・降車の際に子どもの所在を確実に確認することが義務づけられました(基準第40条の3第1項)。具体的には、乗り降りの際に点呼や目視確認を行い、置き去りや行方不明を防ぎます。「全員乗ったか?降りたか?」を毎回しっかりチェックするルールとお考えください。
さらに、送迎に使う自動車(送迎バスやワゴン車など)には、車内に子どもの置き去りを防止するための安全装置を備え付けることが義務化されました(基準第40条の3第2項)。代表的なものが降車時確認ブザーと呼ばれる装置です。エンジンを切った際、運転者や職員に車内確認を促すブザー音や音声が鳴り、すべての子どもが降車したことを確認した上でスイッチを切らない限り警報が止まらない仕組みになっています。これにより、万一職員がうっかり子どもを乗せたまま車を離れてしまった場合でも、ブザー音が鳴り響き「まだ子どもが残っていませんか?」と注意喚起してくれるわけです。
車内置き去り防止装置の一例(降車確認ブザーのシステム)。赤い「降車確認ボタン」は職員が最後に車内を確認した後、車両後方で押すボタンで、確認を実行するとブザー音を停止できます。一方、黄色い「非常ボタン」は子どもが万一閉じ込められてしまった場合に自ら押して外部に助けを求めるためのボタンです。また、スピーカーからは音声ガイダンスや警報音が流れます。このような装置を送迎車に設置し、降車時には必ずスイッチONの状態で子どもの所在確認を行うことが新ルールとなりました。
安全装置の設置についても経過措置が設けられ、2024年3月末までに装置を導入することが求められました(それ以前は代替措置で対応可能とされていました)。現在では、国の補助金を活用して多くの事業所がブザー等を導入済みです。未設置の場合は早急に対応を検討しましょう。たとえ小規模な車両送迎であっても、「置き去りゼロ」の徹底が事業者の責務です。子どもの命を守るため、アナログな点呼確認とデジタルな安全装置の併用で万全を期してください。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 安全計画の策定・実施: 児童発達支援事業所ごとに、安全確保のための年間計画(安全計画)を作成し、計画に沿って設備点検や訓練を着実に実施すること。定期的な見直しも忘れずに。
- 送迎時の所在確認の徹底: 子どもの送迎を行う際は、乗車時および降車時に必ず点呼や目視で全児童の所在を確認すること。降車後は車内に取り残された子がいないか二重チェックを習慣づける。
- 送迎車への安全装置設置: 通所送迎用の車両には車内置き去り防止装置(ブザー等)を必ず設置し、降車時には作動させて確認に使用すること。装置未導入の場合は早急に対応し、子どもの安全を最優先に運営を行う。
【免責事項】
