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独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 3 運営に関する基準 (31) 後半

童発達支援事業所における感染症対策・研修・訓練の実務ポイント


記事の概要:
児童発達支援事業所を運営するうえで、感染症や食中毒の予防・まん延防止は欠かせない課題です。令和6年の基準改正により、事業所は平常時から緊急時まで見据えた衛生管理対策を強化することが求められています。本記事では、最新ルールに沿った「感染症・食中毒予防のための指針」の作成ポイント、職員研修の実施方法、そしてシミュレーション訓練の重要性について、やさしくシンプルに解説します。

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1. 感染症・食中毒予防のための指針とは?

「感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための指針」とは、事業所内での感染症対策について定めたガイドライン文書のことです。この指針には、大きく分けて平常時の感染予防策と感染発生時の対応策の二つを盛り込みます。平常時には日頃から衛生環境を整え、感染の芽を摘むことが大切です。一方、万一事業所で感染症や食中毒が発生した場合に備え、迅速に対応する手順を決めておく必要があります。

以下の表は、平常時と発生時それぞれで指針に盛り込む主な項目の例です。

平常時の感染予防策の例感染症発生時の対応策の例
・施設内の清掃や換気など衛生的な環境の維持
・排泄物や血液・嘔吐物などの適切な処理方法
・職員・子どもの健康状態のチェック項目(発熱や咳など早期発見)
・手洗い励行など標準予防策のルール化
・感染発生状況の把握と記録
・感染拡大防止策(感染した児童の一時隔離、消毒の徹底など)
・医療機関や保健所、自治体担当部署への速やかな連絡
・必要に応じた医療処置の手配
・所管行政への報告義務の履行
・事業所内の緊急連絡体制の整備

このように指針には、日常業務での衛生管理からクラスター発生時の具体的な動きまで網羅して記載します。例えば「血液や嘔吐物を処理するときは手袋とマスクを着用する」「子どもに発熱等の症状があれば早めに保護者に連絡する」といった細かなルールも決めておくと良いでしょう。さらに、緊急連絡網の整備も指針の重要ポイントです。発生時に誰が誰に連絡するか、保健所や市町村など関係機関とどう連携するかを明記しておくことで、いざという時に混乱せず対応できます。なお、指針を作成する際には厚生労働省の「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」など公的なマニュアルも参考になります。事業所ごとの実情に合わせつつ、公的ガイドラインの内容を踏まえて検討しましょう。

2. 職員向け感染症予防研修の徹底

職員に対する感染症予防研修も、事業所に義務付けられた重要な取り組みです。研修の目的は、職員全員の感染対策知識を底上げし、事業所の指針に基づいた衛生管理を徹底することにあります。具体的には、ウイルスや細菌の基礎知識、標準予防策の実践方法(手洗いや消毒の正しい方法、マスクや手袋の使い方など)、そして万一感染が起きた場合の対処手順などを教育します。

研修は年に2回以上、定期的に開催することが求められています。さらに新しく職員を採用した時には必ず研修を実施し、入職時点で感染対策の重要ポイントを把握させることが重要です。研修対象は正職員だけでなくパートやアルバイトを含む全従業者です。もし清掃や調理を外部業者に委託している場合でも、そのスタッフにも事業所の感染対策指針を周知してもらう必要があります。事業所内で働く全ての人が同じ意識と知識を持つことで、現場の隅々まで衛生的な支援を行えるようになります。

研修の実施にあたっては、事業所独自の研修プログラムを作成し計画的に行うと効果的です。たとえば年間計画に研修日を組み込み、「春に基礎知識研修、秋に実践演習」といった形で繰り返し教育します。また、研修を実施した内容は必ず記録しましょう。いつ、どんな内容で、誰が講師を務め、誰が参加したか、といった記録を残すことで、職員の習熟度や研修の改善点を後から振り返ることができます。研修は外部セミナーに参加するだけでなく、厚労省のマニュアルを活用して事業所内で自主開催しても問題ありません。大事なのは事業所の実態に即した内容にすることで、机上の知識だけでなく現場ですぐ役立つスキルを身につけてもらうことです。

3. 感染症発生を想定した定期訓練の実施

机上の知識と同じくらい大切なのが、実際の状況を想定したシミュレーション訓練です。感染症が発生した場合を仮定し、職員全員で年2回以上の訓練を行うことが求められています。訓練の目的は、いざという時に職員一人ひとりが迅速かつ的確に行動できるようにすることです。

訓練では、事前に定めた指針や研修で学んだ内容を実践します。具体的なシナリオとしては、「ある児童が嘔吐しノロウイルスが疑われる状況」や「インフルエンザ様の症状の子どもが複数出た状況」などを想定し、それに対して各職員がどう動くかを練習します。役割分担の確認も重要な訓練内容です。例えば「看護職員は感染した児童のケア担当、他の職員は周囲の子どもを安全に避難させる」「管理者はただちに保健所に連絡する」といった役割を実地で確認します。また、防護具の着脱手順や隔離室への誘導など、感染対策を講じた上での支援動作も実際にやってみることで、机上で理解していたつもりでも見落としていた課題に気付くことができます。

訓練の方法は机上訓練(テーブルトップ演習)と実地訓練の両方を組み合わせるのが効果的です。まずは職員同士でシナリオに沿って口頭で手順を確認し合う机上訓練を行い、その後で実際に動いてみる実地訓練を行うと良いでしょう。こうすることで、頭で理解する段階と体で覚える段階の両方から備えることができます。訓練結果についても研修同様に記録し、次回への改善点を共有しましょう。平時から訓練を積んでおけば、万が一感染症が発生した際にも落ち着いて対応でき、子ども達の安全を守ることにつながります。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 感染対策指針の策定は必須:児童発達支援事業所ごとに、日常の衛生管理から緊急時対応まで網羅した感染症・食中毒予防の指針を作成しておきましょう。平常時と発生時の具体的対策を明文化し、職員全員で共有することが大切です。
  • 職員研修は年2回+新任時に実施:感染症予防の知識・技術を職員全員に行き渡らせるため、定期研修を少なくとも年2回行います。新人職員には必ず入職時に研修を実施し、外部委託スタッフにも事業所の指針を周知徹底しましょう。記録を残し、継続的な教育で職員のレベルアップを図ります。
  • 年2回以上の訓練で緊急事態に備える:実際の感染症発生を想定したシミュレーション訓練を定期的に行いましょう。机上訓練と実地訓練を組み合わせ、役割分担と対応手順を現場で確認します。訓練を重ねることで非常時にも落ち着いて対応でき、利用者である子どもの安全確保につながります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。