スキップしてメイン コンテンツに移動

独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 3 運営に関する基準 (35) 後半

童発達支援事業所の虐待防止策とは?


記事の概要:
近年、障害児向けの通所支援サービス(児童発達支援や放課後等デイサービス)では虐待防止策の強化が進められています。令和6年(2024年)の制度改正により、指定児童発達支援事業所は虐待防止のための指針(ガイドライン)作成や職員研修の定期実施、虐待防止委員会の設置、担当者の配置などが求められるようになりました。この記事では、これら虐待防止策のポイントをやさしくシンプルに解説します。

▶︎ 児童発達支援 関連記事まとめページはこちら

虐待防止のための「指針」を作成しよう

まず、事業所ごとに「虐待防止のための指針」(ガイドライン)を策定することが望ましいとされています。これは、事業所が虐待防止に取り組む姿勢や具体的な方法を示した内部規程のようなものです。指針には以下のような内容を盛り込むと良いでしょう。

  • 基本理念・考え方: 事業所として虐待を許さず、子どもの権利を守るという基本的な姿勢や方針。
  • 組織体制(虐待防止委員会 等): 事業所内で虐待防止に取り組む組織として、虐待防止委員会などを設置する場合の体制や役割分担。誰が委員になり、何を検討するか等を定めます。
  • 職員研修の方針: 虐待防止の知識啓発のために職員研修をどう行うかの基本方針。研修の頻度(例えば年1回以上)、新人研修の有無などを明記します。
  • 虐待発生時の報告方法: 万が一施設内で虐待が起きてしまった場合に、誰に・どのように報告し、外部機関(行政など)へ通報するかといった手順を決めておきます。
  • 虐待発生時の対応方針: 虐待が起きた際の被害児へのケア、加害職員への対応、再発防止策の検討など、緊急時対応の基本的な考え方を定めます。
  • 利用者への周知方法: 作成した指針を利用者や保護者にも閲覧可能にする方針。例えば、事業所内に掲示したり、希望者には説明するなどの対応です。
  • その他必要な方針: 上記以外に、事業所独自で虐待防止に役立てたい取り組み方針があれば含めます。

指針を作成することで、事業所内で「虐待を絶対に起こさない」という共通認識を持ち、職員一人ひとりが具体的にどう行動すべきか指針を示せます。また、この指針は単に作って終わりではなく、定期的に見直しを行い、必要に応じて更新することも大切です。利用者や保護者に対しても公開し、透明性の高い運営を心がけましょう。

職員への虐待防止研修を定期的に実施

職員への研修も虐待防止策の柱です。指定児童発達支援事業所では、全ての職員を対象に年1回以上の定期研修を行うことが求められています。さらに、新しく職員を採用したときには必ず入職時に虐待防止研修を実施することも重要です。これは新人職員にも早い段階で正しい知識と意識を持ってもらうためです。

研修内容は、虐待防止の基礎知識や具体的事例の学習、対応方法の共有などを含みます。事業所内の研修だけでなく、外部の研修会や地域の協議会・基幹相談支援センター等が主催する研修に職員が参加する形でも構いません。大切なのは職員全員が虐待防止について正しい知識と意識を持つことです。

研修を効果的に行うため、先述の虐待防止委員会が中心となって研修プログラムを作成すると良いでしょう。例えば研修のテーマや教材、ロールプレイ演習などを委員会で検討し計画します。研修は毎年継続して行うことで知識のアップデートと意識付けを図れます。また、研修を実施した記録(日時、参加者、内容の概要など)を残すことも必要です。これは、のちに行政から実施状況の確認があった際や、万一問題が起きた際の証跡にもなります。

虐待防止委員会の設置と担当者の配置

虐待防止委員会とは、事業所内で虐待防止の取り組みを話し合い推進するための委員会です。令和6年の基準改正で、この委員会を少なくとも年1回以上開催し、その結果(議論内容や決定事項)を職員に周知することが義務化されました。委員会には施設長や児童発達支援管理責任者(※各利用者の支援計画を統括する責任者)、現場の職員代表、場合によっては外部の専門家や保護者代表などが参加することが望ましいとされています。委員会では、虐待防止指針の策定・見直しや職員研修の計画、職場環境でリスクがないかチェック、仮にトラブルが起きた際の検証と再発防止策の検討などを行います。委員会での話し合いを通じて、職場全体で虐待の芽を事前に摘み取る体制を整えることが目的です。

さらに、事業所には「虐待防止のための担当者」を1名以上置くことも定められました。この担当者は日常的に虐待防止策を推進・点検する役割を担います。多くの場合、児童発達支援管理責任者や管理者(施設長)といった管理的立場のスタッフが兼務するケースが一般的です。担当者を配置することで、責任の所在を明確にし、虐待防止に関する相談や問題発生時の指揮系統をはっきりさせる狙いがあります。

担当者および管理者については、可能であれば都道府県が実施する虐待防止研修を受講することが望ましいとされています。自治体主催の研修では最新の情報や他事業所の事例を学べるため、自事業所の取組みに役立つでしょう。担当者が研修で得た知見は職場に持ち帰り、他の職員にも共有することで、組織全体のレベルアップにつながります。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 虐待防止指針と委員会体制の整備: 自社の虐待防止指針を策定し、社内に虐待防止委員会を設置して定期的に開催することで、組織として虐待防止に取り組む基盤をつくります。指針は利用者や保護者にも公開し、透明性を確保しましょう。
  • 職員研修の定期実施と記録: 全職員対象の虐待防止研修を年1回以上実施し、新人職員には入職時に必ず研修を行います。研修内容・参加者の記録を残しておき、研修未実施による報酬減算などのペナルティを受けないよう注意することが大切です。
  • 担当者の選任と外部研修の活用: 虐待防止担当者(通常は児童発達支援管理責任者や管理者)を選任し、責任ある立場で対策を推進させます。また担当者や管理者は可能な限り自治体等が開催する研修を受講し、最新知識を事業所運営に反映させましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。