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独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 3 運営に関する基準 (35) 前半

童発達支援の虐待防止委員会とは?


記事の概要:
児童発達支援事業を運営するにあたって、職員による障害児への虐待を防止する仕組みづくりは非常に重要です。そこで定められているのが、基準第45条「虐待等の禁止」というルールです。これは簡単に言えば、「職員は子どもへの虐待になる行為をしてはいけない」という禁止と、虐待を防ぐための体制整備を義務付けたものです。本記事では、この基準第45条の中でも特に虐待防止委員会に焦点を当て、どのような役割や対応が求められているのかを、公式資料をもとにやさしくシンプルに解説します。

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基準第45条「虐待等の禁止」とは

児童発達支援における基準第45条「虐待等の禁止」とは、事業所の職員が障害のある子どもに対して虐待にあたる行為や心身に有害な行為を行うことを禁止した規定です。これは事業運営上の大前提であり、万が一にも虐待が起きないようにするための取り組みが求められます。具体的な義務として、虐待防止委員会の定期開催と結果の職員周知、職員への定期研修の実施、そしてそれらの取組を適切に行うための担当者の配置が定められています。本記事ではこの中の「虐待防止委員会」に絞って解説を進めます。

虐待防止委員会の役割

虐待防止委員会とは、事業所内で職員による虐待を未然に防ぎ、万が一発生した場合に適切に対処するために設置される委員会です。その主な役割は次の3つにまとめられます:

  • 虐待防止のための計画づくり – 職員に対する虐待防止研修の計画立案や、職場の労働環境・労働条件を確認・改善するための計画づくり、さらには事業所としての虐待防止の指針(ポリシー)策定など、虐待を予防するための全体的な計画を作成します。
  • 虐待防止のチェックとモニタリング – 日常的に職場内で虐待が起こりやすい要因がないかチェックし、環境をモニタリングします。例えば職員が過度のストレスを抱えていないか、支援体制に無理がないかなど、虐待の芽を摘むための点検を行います。
  • 虐待発生後の検証と再発防止策の検討 – 万が一虐待やその疑いが生じてしまった場合に、委員会で事案を検証し、原因や背景を分析した上で再発防止策を考え実行します。発生後の対応をしっかり行うことで、同じような問題が繰り返されないよう努めます。

虐待防止委員会の設置・運営ポイント

虐待防止委員会を設置・運営するにあたって、事業者が押さえておくべきポイントがあります。まず、委員会メンバーの役割分担を明確に定め、必ず「専任の虐待防止担当者」を任命しておく必要があります。専任担当者とは、文字通り虐待防止の取り組みに責任を持つ担当者で、法律上各事業所に一人は配置しなければなりません。また、委員会の構成員にはできるだけ利用者のご家族や福祉の専門家など外部の第三者も参加してもらうことが望ましいとされています。外部の視点を入れることで、職員だけでは気づきにくい問題点の指摘や、防止策の提案が期待できます。

次に、委員会の開催頻度についてです。基準では少なくとも年に1回は開催することが必要とされています。事業所の規模によっては、各事業所ごとではなく法人全体で1つの委員会を設置することも可能です。重要なのは、管理者(施設長や管理責任者)や任命した虐待防止担当者が委員会に参加していることです。参加メンバーさえ揃っていれば、委員数そのものに最低人数の決まりはありません。会議の形態も対面に限らず、必要に応じてオンライン(テレビ会議システム等)の活用も可能です。なお、身体拘束等適正化委員会(身体拘束を適正に行うための別の委員会)とメンバーが重なる場合は、虐待防止委員会と一体的に開催・運営しても差し支えないとされています。効率的に委員会運営を行いましょう。

さらに留意すべき点として、虐待防止委員会の目的は、あくまで虐待防止策の全体共有と再発防止であり、決して職員を懲戒処分することが目的ではないということがあります。委員会での検討結果や情報は事業所内の全ての職員に周知(情報共有)し、組織全体で今後の未然防止・再発防止につなげることが大切です。万が一トラブルが起きても「個人の責任を糾弾する場」ではなく、「組織としてどう改善するか」を話し合う場であることを忘れないようにしましょう。また、委員会で検討・実施した内容や対策の経過は適切に記録し、最低5年間は保存する決まりになっています。後で振り返りができるよう、議事録や報告書はきちんとファイリングしておきましょう。

虐待発生時の具体的な対応手順

では、仮に施設内で虐待(不適切な対応を含む)が発生してしまった場合、事業者および虐待防止委員会はどのように対応すればよいのでしょうか。ガイドラインでは具体的に次のような手順・取り組みが想定されています。以下にまとめてみます。

対応項目(原文の例示)具体的な内容と対応策の説明
ア: 報告様式の整備万一に備え、虐待発生時に職員から報告を受けるための書式(報告フォームやチェックシート)をあらかじめ準備しておきます。どのような事項を記録・報告するか項目立てしておくことで、いざという時に迅速な報告が可能になります。
イ: 職員による報告虐待が発生してしまった際には、関係した職員はその都度、状況や背景を記録し、定められた様式で速やかに上司や委員会に報告します。隠さず報告する風土を作ることが重要です。
ウ: 委員会での事例集計・分析報告を受けた虐待事例は虐待防止委員会で集計・分析します。同様のケースが他にないか、頻度や傾向を把握し、組織としての問題点を洗い出します。
エ: 原因究明と再発防止策の検討事例の詳細を分析し、なぜ虐待が起きてしまったのかその原因や背景を究明します。その上で、二度と起こさないための具体的な再発防止策を検討し、改善策を立て実行します。
オ: 労働環境の確認と分析職員の労働環境・勤務条件を点検するための様式を整備し、定期的に職員から意見や状況を報告してもらいます。それらを委員会で集計・報告・分析し、職場環境に虐待の原因となる問題(例えば人手不足や長時間労働など)がないかチェックします。必要に応じて労働環境の改善策も検討します。
カ: 情報共有(職員への周知)委員会で得られた事例の教訓や分析結果は全ての職員に対して周知します。スタッフ全員が問題を共有し、再発防止策を理解・実践できるようにするためです。伝達方法としては、職員会議や回覧、文書配布など何でも構いませんが、隅々まで確実に情報共有することが大切です。
キ: 再発防止策の効果検証講じた再発防止策が実際に効果を上げているかを後日検証します。一定期間経過後に状況を評価し、効果が不十分であれば再度対策を練り直します。改善策はやりっぱなしにせず、きちんと振り返りまで行うことで継続的な質の向上につなげます。

以上が、虐待発生時に求められる主な対応の流れです。これらの対応策を講じることで、事業所全体で情報共有と改善が図られ、「二度と虐待を起こさない」ための組織的な学習と予防体制が整っていきます。日頃から委員会を中心に準備と確認を重ね、万が一の場合にも落ち着いて対処できるようにしておきましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 虐待防止委員会の設置は義務。適切なメンバー選定と年1回以上の開催を:児童発達支援事業では、虐待防止委員会の設置と定期開催が義務化されています。専任の虐待防止担当者の配置が必須で、管理者が中心となって運営を担います。小規模事業所であれば、法人単位での設置も可能です。開催は年1回以上が必須で、検討内容や対策は全職員に周知することが求められます。
  • 研修計画と職場環境のチェックを徹底:虐待を防ぐには、日頃からの体制づくりが鍵です。職員に対する虐待防止研修は年1回以上実施し、研修内容の計画は委員会が立案します。また、労働環境や勤務条件の確認と改善も重要です。過重労働やストレス要因を早めに把握し、リスクを最小限に抑えましょう。
  • 万一の際は速やかな報告と検証を:再発防止は組織全体で取り組む:虐待が発生した場合は、所定の書式で速やかに報告し、委員会で分析と再発防止策の検討を行います。結果は全職員と共有し、改善策は実行・効果検証まで行うのが基本です。大切なのは、委員会の目的はあくまで組織的な改善と学びであり、職員の処罰ではないということです。


【免責事項】

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