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独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 3 運営に関する基準 (37) (38)

童発達支援における「秘密保持」と「利益供与禁止」のポイント解説


記事の概要:
児童発達支援事業所を運営するうえで重要なルールに、「秘密保持義務」と「利益供与等の禁止」があります。これは、サービスを利用する障害児や家族のプライバシーを守り、公平なサービス紹介を行うために定められたものです。本記事では、その内容をやさしくシンプルに解説します。

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障害児の情報を守る「秘密保持義務」

まず、児童発達支援のスタッフ(従業者)や管理者には守秘義務があります。業務中に知り得た障害のある子どもやそのご家族の個人情報やプライバシーについて、正当な理由なく第三者に漏らしてはいけないと法律で定められています。簡単に言えば、仕事で知った利用者の秘密は外部に話さないのが大原則です。

さらに重要なのは、この守秘義務は従業者が退職した後も続くという点です。事業所側(指定児童発達支援事業者)は、スタッフが辞めた後でも秘密を守らせるために必要な対策を取る義務があります。例えば、雇用契約書や誓約書の中に「退職後も業務上知り得た利用者の情報を漏らさないこと」を明記し、署名させておくなどの措置です。非常勤のスタッフやボランティアであっても例外ではありません。全てのスタッフに対し、在職中はもちろん退職後も含めて秘密保持の責務があることを周知し、契約で担保しておくことが求められます。

もう一つ、情報管理で押さえておきたいのは情報共有のルールです。児童発達支援を行う中で、利用児童の課題や支援状況について、他の支援機関(例えば放課後等デイサービスや相談支援事業所など)と情報共有したい場面が出てきます。この場合、事前に保護者(親御さん)の同意を文書で得る必要があります。プライバシー保護の観点から、家族の許可なく勝手に他機関へ個人情報を提供してはいけないためです。ただし毎回書面を交わすのは大変ですので、サービス利用開始時に包括的な同意を保護者から得ておけば、個別の場面ごとに改めて同意書をもらわなくても対応できます。契約時の重要事項説明書などに、他の事業所等への情報提供に関する包括同意欄を設けておくと良いでしょう。

紹介料・リベートの禁止:「利益供与等の禁止」とは

次に、「利益供与等の禁止」についてです。一言でいうと、児童発達支援の利用者紹介に関してお金や物品のやり取りをしてはいけないというルールです。具体的には、障害児の支援計画を作る相談支援事業所(いわゆる計画相談の事業所)や、他の障害福祉サービス事業者などに対して、「うちの事業所を利用者に紹介してくれたお礼」として金銭やギフト券・商品券、贈り物などの経済的利益を渡すことは禁止されています。また逆の立場で、児童発達支援事業所である自分たちが利用者を他の事業所へ紹介する見返りに、紹介先の事業所やその職員から謝礼を受け取ることも禁止です。

この禁止規定は、公的な福祉サービスの利用者紹介が金銭目的で歪められないようにするための措置です。本来、障害のある子どもにとって最適な事業所を公平中立に選ぶことが大切です。しかし、もし紹介料のやり取りが許されてしまうと、「お礼をもらえるからA事業所を紹介しよう」「手数料がかかるからB事業所はやめておこう」といった不純な動機が介入し、利用者にとってベストな選択が損なわれかねません。そこで、児童発達支援を含む障害福祉サービス事業ではリベート(紹介奨励金)の授受が一切認められていないわけです。

最近の動向: 実際、厚生労働省(現在はこども家庭庁所管)も自治体に対し、「障害福祉サービスで有料による利用者紹介を行うことは運営基準違反であり禁止」という点を改めて周知徹底しています。紹介ビジネスをうたう業者への対応も含め、ルール違反には厳正な対処が取られる方向です。事業者としては、この規定を確実に守り、クリーンな連携体制でサービス提供することが求められます。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 従業員には在職中も退職後も守秘義務があることを徹底する: 全スタッフ(非常勤含む)に利用者情報の秘密保持を遵守させ、契約書や就業規則で退職後も情報を漏らさない義務を明文化しておきましょう。
  • 情報共有には書面で包括同意を確保: 他機関との連携で個人情報を提供する際は保護者の同意が必須です。サービス開始時に包括的な同意書を交わし、後々の情報共有に備えておくと実務がスムーズになります。
  • 利用者紹介で金品を介さない: 利用者の紹介については金銭や物品のやり取りが法律で禁じられています。紹介料やキックバックは一切行わず、公平中立な姿勢で事業所間の連携・紹介を行うことが信頼につながります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。