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独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 4 共生型障害児通所支援に関する基準 (6) (7) 

生型サービスとは?障害福祉と介護保険を一体的に提供する仕組みと注意点


記事の概要:
高齢者向けの介護サービスと障害児・障害者向けの福祉サービスを同じ事業所で一体的に提供できる「共生型サービス」について解説します。これは2018年から始まった新しい制度で、障害福祉サービス事業者・介護保険サービス事業者の両者に関係する重要なポイントです。この記事では、共生型サービスの基本的な仕組みと、法令上示された具体的なサービス組み合わせの例、そしてサービス提供時の注意点(同時提供の原則など)をやさしくシンプルにまとめます。

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共生型サービスの基本概要

共生型サービスとは、介護保険サービスと障害福祉サービスを同じ事業所で提供できるようにする仕組みです。これにより、高齢者(要介護者)と障害児・障害者が同じ場所で同時に支援を受けられる環境を整え、世代や障害の別を超えた地域共生社会の実現を目指しています。介護保険法と障害者総合支援法の双方に制度が設けられており、一方の制度で指定を受けている事業所が一定の条件を満たせば、もう一方のサービス指定を簡易な手続で取得できる特例も設けられています。例えば、もともと障害福祉の事業所である放課後等デイサービスや生活介護事業所が、介護保険の通所介護(デイサービス)事業所指定を受けやすくなる、といったイメージです。この制度によって、障害のある利用者が65歳以上になっても使い慣れた事業所でサービスを継続利用しやすくなるなど、支援の途切れ防止にもつながることが期待されています。また、事業者側にとってもサービス対象の拡大や人材の有効活用による経営の安定化などのメリットがあります。

その他の共生型サービスに含まれるサービス例

法律上、「共生型サービス」として明示されているのは通所介護(デイサービス)、訪問介護(ホームヘルプサービス)、短期入所(ショートステイ)ですが、それ以外の組み合わせであっても条件を満たせば共生型サービスと認められます。公式な解釈通知では、以下のようなケースも共生型サービスに含まれると示されています。

  • デイサービス・ホームヘルプ・ショートステイの場合: 障害福祉制度と介護保険制度それぞれの指定基準を満たし、両方の指定(障害福祉サービス事業所と介護保険事業所の両方)を受けている事業所。例えば、あるデイサービス事業所が障害者向けと高齢者向けの双方で指定を持っていれば、それは共生型デイサービスとして運営できます。ホームヘルプサービス(訪問介護)やショートステイ(短期入所)についても同様です。
  • 法律上「共生型サービス」の対象とされていないサービスの組み合わせ: 法令で列挙された上記サービス以外でも、障害福祉サービス事業所と介護保険サービス事業所の両方の指定を受けている場合は共生型サービスになります。例えば、障害者向けグループホーム(共同生活援助)と高齢者向けグループホーム(認知症対応型共同生活介護)を一体的に運営していて、それぞれ障害福祉と介護保険の指定を取得しているケースが該当します。このように、サービス種別の組み合わせはデイや訪問系に限らず多様です。
  • 介護保険事業所+障害福祉の基準該当サービスのケース: 介護保険制度の基準を満たして指定を受けた事業所が、障害福祉サービスにおける「基準該当サービス」(一定の基準を満たすことで正式指定と同等に扱われるサービス)を活用している場合も、共生型サービスとして扱われます。例えば、介護保険の通所介護事業所が、児童発達支援や放課後等デイサービスに準ずる支援を基準該当サービスとして提供しているケースです。この場合、介護事業所でありながら障害児へのサービス提供が可能となり、一種の共生型サービスとみなされます。※「みなし指定」とも言われ、介護事業所の指定をもって障害児支援の指定を受けたものとみなす特例で、例えば児童発達支援管理責任者の配置が不要になる等の緩和措置があります。

以上のように、複数の制度に跨がってサービス提供している事業所は、たとえ法令上明記されていない組み合わせでも共生型サービスに該当します。国の通知でも、これら「その他の共生型サービス」についても地域共生社会の実現に向けて積極的に推進していくことが望ましいとされています。事業者にとっては、地域の高齢者・障害者双方のニーズに応えるサービス展開として、共生型サービスの指定取得を検討する価値があるでしょう。

共生型サービス提供時の留意点(同時提供の原則)

共生型サービスを運営する際には、「同じ場所・同じ時間帯でサービスを提供する」ことが大前提となります。多様な利用者が共に過ごし活動することで、リハビリ効果や利用者の自立・自己実現に良い影響をもたらすことが期待されているためです。言い換えれば、障害児・障害者と要介護高齢者が同じ空間で同時にサービスを受ける形を想定しているのが共生型サービスなのです。

例えば、ある施設で午前中に高齢者向けのデイサービス、午後の放課後に障害児向けのデイサービスを提供するといったように、利用者層を時間帯で分けて交代でサービス提供する場合は注意が必要です。このようなケースは、たとえ同じ場所であっても共生型サービスとしては認められません。共生型の特例(人員配置基準の緩和や指定手続きの簡略化など)は適用されず、それぞれ別個のサービスとして扱われます。そのため、各時間帯ごとに該当する制度の指定基準をすべて満たした上でサービス提供を行わなければならないことに注意してください。要するに、「同じ建物内でやっているから一体的なサービスだよね」という考えだけではダメで、実際に同じ時間に混ざって利用しているかがポイントになります。

なお、共生型サービスの理念はみんなが一緒の場で過ごすことにあります。そのため、高齢者と障害児・障害者でエリアを壁やパーテーションで仕切る必要もありません。一つの空間で年代や障害の有無を超えて交流・活動することで、お互いに良い刺激を与え合い、地域での共生が実現していくと期待されています。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 幅広いサービス組み合わせが共生型に該当: デイサービス・訪問介護・短期入所はもちろん、それ以外の組み合わせ(例: 障害者グループホーム+高齢者グループホーム)や、介護事業所+障害の基準該当サービスの場合も共生型サービスとして認められます。事業所が介護保険と障害福祉の両制度で指定を受けているかがポイントです。
  • サービスは同じ場所・同じ時間に提供する: 共生型サービスでは、障害児・障害者と高齢者に対し同じ空間で同時にサービス提供することが前提です。時間帯を分けて提供する形態は共生型サービスとはみなされず、その場合それぞれの制度ごとに指定基準を個別に満たして運営する必要があります(共生型特例の適用なし)。
  • 導入メリットと国の方針: 異なる世代・障害の有無を超えて利用者同士が交流することでリハビリや自立に良い効果が期待でき、利用者が65歳を過ぎても使い慣れた事業所を継続利用できる利点があります。国も共生型サービスの普及促進に力を入れており、地域共生社会の実現に向けた政策の一環と位置付けています。事業者にとってもサービス対象の拡大や人材活用による経営安定などメリットがあるため、自社の事業戦略の選択肢の一つとして検討する価値があるでしょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。