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独習 障害児通所支援 指定基準 | 第三 児童発達支援 5 基準該当通所支援に関する基準 (7) 後半

規模多機能型居宅介護事業所で児童発達支援を提供できる特例を解説②


記事の概要:
小規模多機能型居宅介護事業所とは、高齢者向けに通い・訪問・泊まりなど複数の介護サービスを組み合わせて提供できる小規模な施設のことです(介護保険サービスの一種)。近年、このような高齢者施設が障害児の支援(児童発達支援や放課後等デイサービス)を行うケースが認められるようになりました。これは「基準該当サービス」や「共生型サービス」と呼ばれる仕組みによるもので、介護保険の事業所が市町村の認定を受けて障害福祉サービスを提供することを可能にする制度です。この記事では、その中でも児童発達支援に関する重要ポイント(居室の広さ、人員配置・研修、専門機関からの支援)を中心に、やさしくシンプルに解説します。

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1.居間・食堂の適切な広さの確保

まず、指定小規模多機能型居宅介護事業所等の居間および食堂は、利用者が安全かつ快適に過ごせるよう、機能を十分に発揮できる適切な広さを有していなければなりません。障害児を受け入れる場合、子どもたちが遊んだり活動したりするスペースの余裕が特に重要です。狭すぎる空間では、安全面に問題が出たり、十分な支援が提供できなくなるおそれがあります。そのため、事業所のレイアウト設計時には、利用定員や活動内容に見合った広さの居間・食堂を確保しましょう。例えば、複数の子どもが車いすを利用する場合でも支障なく動ける空間が必要です。広さ要件を満たすことで、利用者がリラックスして過ごせる環境づくりにつながります。

2.障害児・者を含めた人員配置と研修の推奨

次に、人員体制に関するポイントです。小規模多機能型居宅介護事業所等では、高齢者だけでなく障害者や障害児に対しても通いサービスを提供する場合があります。具体的には、以下のような障害福祉サービス相当の支援を行うケースです。

  • 基準該当生活介護(※常に介護が必要な障害者向けの日中活動サービス)
  • 基準該当自立訓練(機能訓練)(※身体機能の維持向上を目的とした訓練サービス)
  • 基準該当自立訓練(生活訓練)(※生活能力の向上を目的とした訓練サービス)
  • 基準該当児童発達支援(※障害のある未就学児を対象とした発達支援サービス)
  • 基準該当放課後等デイサービス(※障害のある就学児を対象とした放課後・休日のデイサービス)

上記の「基準該当○○」とは、介護保険の事業所である小規模多機能型居宅介護事業所等が基準を満たすことで障害福祉サービスの提供事業所とみなされるものです。つまり、市町村から認定を受ければ、正式な指定事業所でなくても障害児・者向けサービスを提供できる仕組みです。

ポイントとなるのは人員配置です。仮に障害児や障害者をこれらのサービスで受け入れる場合、それらの障害児・者も含めた利用者数に応じて、事業所に配置すべきスタッフの数が基準以上確保されていなければなりません。たとえば、本来高齢者向けに定員を設定している小規模多機能が、追加で障害児を受け入れる場合、その子どもを含めた総利用者数で必要な職員数(介護職員、看護職員など)が満たされているかを確認する必要があります。人員基準を下回る状態でサービス提供を行うと、質の低下だけでなく、行政指導や報酬減算の対象となる可能性があります。

なお、サービス管理責任者(障害福祉サービスで義務づけられるサービス管理者)の配置は、小規模多機能型居宅介護事業所等には現在義務づけられていません。しかし、障害児支援を実施する以上、事業者側で専門性を高める努力が望まれます。具体的には、その事業所の管理者などで、障害福祉分野の実務経験が豊富な人がいる場合には、その人に対し「児童発達支援管理基礎研修」および「相談支援従事者初任者研修(講義部分)」を積極的に受講させることが推奨されています。これらの研修は、障害児支援の計画作成や相談支援の基本知識を学ぶもので、修了者は児童発達支援管理責任者としての役割を担う素地ができます。研修を修了したスタッフがいれば、その人が障害児一人ひとりの「児童発達支援計画」(個別支援計画)を作成することが望ましいとされています。適切な計画を立てることで、支援の質を高め、保護者との信頼関係構築にもつながるでしょう。

3.専門機関からの技術的支援の確保

最後に、障害児支援における専門機関との連携についてのポイントです。小規模多機能型居宅介護事業所等が障害児の支援を行う際には、障害児入所施設(障害のある子どもが入所して生活する施設)その他の関係施設から、必要な技術的支援を受けていることが求められます。これは、障害児支援の経験や専門知識が不足しがちな事業所に対し、専門機関がサポートすることでサービスの質を担保するための取り組みです。

具体的には、例えば重度の医療的ケアが必要な障害児を受け入れる場合に、近隣の障害児入所施設や医療機関と連携し、看護ケアの助言をもらったり、スタッフ研修で協力を仰いだりするといった形が考えられます。また、発達障害のある子どもの支援方法について児童発達支援センターから指導を受けることも有効でしょう。こうした専門機関とのネットワークを築き、困ったときに相談できる体制を整えておくことは、事業所単独でサービス提供するよりも安心感が増します。保護者にとっても、バックアップ体制がある事業所は信頼しやすくなるはずです。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 十分な居室スペースの確保: 事業所の居間・食堂は子どもたちが安全に活動できる広さを確保しましょう。狭い空間では支援の質が下がるため、利用定員に見合ったゆとりが必要です。
  • 人員基準の遵守とスタッフ研修: 障害児・者を受け入れる場合は、その人数も含めて必要スタッフ数を満たすことが必須です。また、サービス管理責任者は義務ではないものの、管理者クラスの職員に児童発達支援管理責任者研修等を受講させ、専門性を高めることで質の高い支援計画を作成できます。
  • 専門機関との連携体制: 障害児支援の経験が浅い場合でも、障害児入所施設や児童発達支援センターなどと日頃から情報共有・協力を行いましょう。技術的支援を受けられる体制を整えることで、安心・安全なサービス提供につながります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。