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独習 障害福祉サービス 指導監査 | 指定障害福祉サービス事業者等監査指針 4 監査方法等 (4) 聴聞等 (5) 経済上の措置

消処分と経済上の措置の解説


記事の概要:
障害福祉サービス事業者に対する監査で重大な違反や不正請求が発覚した場合、その後どのような手続きや処分が行われるのでしょうか。本記事では、監査後に実施される聴聞手続(事業者の言い分を聞く場)と、不正請求に対する返還金および40%のペナルティ(加算金)といった経済上の措置について、やさしくシンプルに解説します。

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監査後に行われる「聴聞」とは何か?

監査の結果、事業者に対して行政処分(命令・指定取消し等)を行う可能性があると認められた場合、行政は処分予定の事業者に対し「聴聞」または「弁明の機会の付与」という手続きを必ず行います。これは行政手続法(平成5年法律第88号)第13条に基づくもので、処分を受ける側の言い分を事前にしっかり聞くための手続きです。

聴聞と弁明の機会の付与は目的は同じく意見を聞くことですが、その方法が異なります。一般に、指定取消しのような重大な処分の場合は聴聞が行われ、比較的軽微な処分の場合は弁明の機会の付与が行われます。以下に両者の違いを簡単にまとめます。

手続き概要 (事業者が意見を述べる方法)
聴聞 (ちょうもん)事業者の意見を直接聞く正式な手続き(口頭で意見陳述を行う場)。主に指定取消しなど重大な処分の場合に開催されます。
弁明の機会の付与文書により事業者が自己の意見を提出できる手続き。上記以外の処分(比較的軽い処分)の場合に行われます。

聴聞では事業者は指定権者(行政)から聴聞通知書を受け取り、そこに処分の理由や根拠法令、聴聞の日時・場所などが示されます。当日は事業者(または代理人)が出席し、行政側から違反事実や処分根拠の説明を受けた後、自分の意見や証拠を述べることができます。一方、弁明の機会の場合は決められた期限までに書面などで反論や説明を提出する形になります。

ポイントは、この聴聞や弁明の機会が事業者にとって自分の立場を主張できる最後のチャンスであるということです。法律上、よほど緊急の公益上の必要がある場合などを除き(例えば公共の安全に直ちに重大な影響が出る場合など)、行政は必ずこの手続きを踏まねばなりません。もし事業者が聴聞に出席せず意見を述べない場合、反論がないまま処分が確定してしまい、ほぼ間違いなく指定取消し等の不利益処分が下されてしまいます。処分を避けたい・軽減したい場合は、必ずこの場で自社の主張や事情をしっかり伝えることが重要です。必要に応じて証拠書類を提出したり、専門家(弁護士や特定行政書士)に相談して臨むことで、処分の回避や軽減につながる可能性もあります。

処分後の経済上の措置:返還金と40%のペナルティ

監査を経て勧告・命令・指定取消しといった行政処分が実際に行われた場合、事業者には経済的な制裁として返還金の支払いが求められます。返還金とは、簡単に言えば「不正請求によって事業者が不当に得た給付費を返すこと」です。処分に至った場合、自治体(市町村等)は当該事業者に対し、不正に受け取った障害福祉サービスの給付費を全額返還するよう請求します。例えば、過大請求などにより本来受け取れないはずのお金を100万円得ていたなら、その100万円をそっくりそのまま返す必要があります。これは障害者総合支援法第8条第1項に基づく措置で、「不正利得の徴収(返還金)」とも呼ばれます。

さらに、処分内容が命令や指定取消しといった重いものであった場合には、法律上40%の加算金(ペナルティ)を上乗せして徴収されることがあります。これは障害者総合支援法第8条第2項の規定によるもので、不正に受け取った額に対してその40%相当額を追加で支払わせる仕組みです。先ほどの例で言えば、不正受給100万円に対し40万円のペナルティが課され、合計140万円を返納する必要が生じます。非常に大きな負担であり、事業経営に与えるダメージも深刻です。

この40%ペナルティは原則適用とされていますが、実際には最終的な適用判断は指定権者である自治体等に委ねられています。自治体は、不正請求の総額や悪質性(単なるミスなのか、意図的な詐取なのか)などを考慮して、40%を上乗せするかどうか決定します。つまり、明らかな悪質行為で大きな不正があれば厳しく40%まで課すでしょうし、軽微なミスで本人が協力的に改善したような場合には加算金が減免されることもあり得ます。ただし、いずれにせよ不正に得たお金は返さなければならない点に変わりはありません。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 監査で違反や不正が見つかった場合、行政は処分前に必ず事業者に「聴聞」や「弁明の機会」を設けて意見を聞きます。ここで何もしないと処分が確定してしまうため、自分の主張や説明をしっかり行うことが極めて重要です。
  • 指定取消しや業務停止命令などの処分を受けた場合、不正請求で受け取った給付費は全額返還しなければなりません。自治体から正式に返還金の請求を受けることになり、事業収入からその分がマイナスになる点を覚悟する必要があります。
  • 悪質な不正と判断され処分に至ると、返還金額に対し40%の追徴金(ペナルティ)が科されるケースがあります。例えば100万円の不正受給なら合計140万円の返納となり、経営に大打撃となりかねません。日頃から請求内容をチェックし、こうしたペナルティを課される事態は絶対に避けましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。