監査結果通知と行政上の措置(勧告・命令・指定取消し)をわかりやすく解説
記事の概要:
障害福祉サービス事業者が監査(※事業所の運営状況についての行政の調査)を受けた際に、どのような結果通知や行政上の措置が取られるかをご存じでしょうか? 本記事では、監査で指摘事項があった場合の結果の通知から、違反内容によって行われる勧告・命令・指定取消し(効力停止)といった行政の対応について、やさしくシンプルに解説します。
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監査結果の通知(軽微な指摘の場合)
監査の結果、法律や基準に照らしてごく軽微な改善が必要と判断された事項については、いきなり重い処分にはなりません。後日、行政から文書で通知が届きます。その通知書には指摘された事項と改善すべき点が書かれており、事業者は指定された期限までに改善内容を報告するよう求められます。これは正式な「勧告」ではありませんが、小さな見落としでも放置せず必ず期限内に報告・改善することが大切です。
指定基準違反があった場合の行政上の措置
一方、監査で指定基準違反(障害福祉サービス事業を運営する上で守らなければならないルール違反)が認められた場合、都道府県知事や市町村長(指定権者)は法律に基づき速やかに以下のような行政上の措置を取ります。
- 勧告 – 運営基準の違反が確認された場合に出される是正指示です。行政が事業者に対し「○○の基準を守りなさい」という内容を文書で通知します。期限が設けられ、その期日までに基準を遵守するよう求められます。勧告を受けた事業者は、期限内に改善結果を文書で報告しなければなりません。もし勧告に従わず改善が行われない場合、行政はその事実(勧告に従わなかったこと)を公表することができます。つまり「○○事業所が行政からの勧告に従いませんでした」と公開されてしまうのです。
- 命令 – 勧告に正当な理由なく従わない場合に発せられる強制力のある措置です。行政は事業者に対し、勧告で求めた改善を履行することを期限付きで命令できます。命令は勧告より重い公式な処分であり、命令を出した場合には行政はその旨を必ず公示(公開)しなければなりません。命令を受けた事業者も、勧告と同様に期限内に改善結果を文書で報告する義務があります。命令まで出る状況は深刻であり、ここまで来ると事業所名が公に知られるため、信用失墜にも繋がります。
- 指定の取消し・効力停止 – 違反の内容が法律上重大な場合、または勧告・命令にも従わず改善が見込めない場合、最終的な措置として事業所の指定の取消し(事業所の指定停止とも言います)が行われることがあります。【指定の取消し】とは、その事業所が障害福祉サービス事業者としての指定(認可)を取り消す処分です。一度指定を取り消されると、その事業所は公的な障害福祉サービスを提供する資格を失い、事業継続が困難になります。【効力の停止】は、指定を完全に取り消すのではなく一定期間、事業所としての効力を停止する処分です。停止には全部停止(すべてのサービス提供を止める)と一部停止(例えば新規利用者の受け入れ停止など)があります。いずれも事業運営に重大な支障をきたす最も重いペナルティです。例えば、不正請求や悪質な基準違反など法律で定める重大なケースで適用されます。一般の事業者にとっては、指定取消しや停止は避けなければならない危機的な事態と言えます。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 軽微な指摘も見逃さない: 監査で小さな改善点を指摘された場合でも、後日の文書通知に従って速やかに改善し、期限内に報告しましょう。軽微だからと油断せず、誠実に対応する姿勢が大切です。
- 勧告・命令には必ず従う: 基準違反で勧告を受けたらチャンスだと思って改善に努めましょう。勧告を無視すると行政から名前を公表され、次に命令というより重い処分が下ります。命令を受けると行政処分として公示され信用に傷がつくため、絶対に避けるべきです。
- 最悪の事態は指定取消し: 改善が見られない場合や悪質な違反の場合、事業所の指定取消し・効力停止という営業停止レベルの処分が科されます。こうなると事業継続が困難になるため、日頃から法令遵守と自主点検を心がけ、そもそも違反を起こさないようにすることが重要です。
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