指定計画相談支援の人員基準:相談支援専門員の配置・兼務・標準担当件数について
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指定計画相談支援事業所を運営するには、法律で定められた人員基準を満たす必要があります。本記事では、その中でも相談支援専門員に焦点を当て、配置のルールや兼務の可否、そして担当できる利用者数の目安(標準担当件数)について、やさしくシンプルに解説します。
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相談支援専門員の配置基準(人員基準 第3条 第1項)
指定特定相談支援事業所(計画相談支援事業所)には、必ず1名以上の相談支援専門員を配置しなければなりません。相談支援専門員とは、サービス等利用計画(障害福祉サービスの利用計画)の作成や継続的な支援を行う専門スタッフです。配置される相談支援専門員は「専従(せんじゅう)」であることが原則です。専従とは、その事業所で勤務している時間は、原則として計画相談支援の業務以外に従事しないという意味です。簡単に言えば、勤務時間中は相談支援専門員の仕事だけに専念し、他の仕事をしないことが求められます。この相談支援専門員が常勤(フルタイム)か非常勤(パート)かは問いません。
一方で、業務に支障がなければ、相談支援専門員が他の業務を兼ねることも可能とされています。例えば、管理者を兼任したり、併設する他事業所の業務を手伝ったりすることも認められています。相談支援専門員は同じ事業所の管理者を兼ねることが可能です(管理者+相談支援専門員)。
また、他の相談支援事業(障害児相談支援や一般相談支援、自立生活援助など)との兼務も「業務に支障がない範囲」で可能です。ただし、市町村から委託を受けている基幹相談支援センター等と兼務する場合は、その市町村の了解が必要です。
兼務における中立性確保の重要性(留意点)
相談支援専門員の兼務に関して、特に注意すべきポイントは公正中立性の確保です。相談支援専門員は、利用者(障害者)の立場に立って適切なサービス等利用計画を作成することが求められます。そのため、もし相談支援専門員が利用者の利用している障害福祉サービス事業所(たとえば利用者が入所するグループホーム等)のスタッフを兼ねていると、提供する計画内容が偏り、客観性を欠いてしまう恐れがあります。
このような理由から、基本的には、利用者が利用しているサービス事業所等のスタッフを兼ねていない相談支援専門員が、その利用者の計画相談支援(特に継続サービス利用支援)を担当することが望ましいとされています。
しかし、人員体制や地域の状況によりやむを得ないケースもあります。以下の場合には例外的に、利用者が利用する事業所のスタッフが相談支援専門員を兼ねて継続支援を行っても差し支えないとされています:
- 地域に相談支援事業所が他にない場合:近隣に計画相談支援を提供できる事業所自体がなく、選択肢が無いケース。
- 支給決定の変更直後で経過措置が必要な場合:支給決定によりサービス内容が大きく変わり、その変更後3か月以内程度のケース。計画相談支援から別の事業所に担当替えすると利用者の負担が大きいため、短期間は同じ事業所で継続支援しても構わないとされています。
以上のように、相談支援専門員の兼務は「業務に支障がないこと」を前提に許容されていますが、利用者にとって公正な支援を行うために常に中立性への配慮が求められます。
相談支援専門員の標準担当件数(基準 第3条 第2項・第3項)
最後に、相談支援専門員一人あたりが担当する利用者数の目安についてです。基準では、「1か月あたりの利用者数が平均35人につき相談支援専門員1人」を配置することが望ましいとされています。つまり、利用者約35人につき1名の相談支援専門員を配置するのが標準です。利用者数が35人を超え、その端数(余り)が出るごとに、できるだけ追加で職員を増やすことが望ましいとされています。
「1か月平均の利用者数」とは、直近6か月間の延べ利用者数を6で割った数です(新規開業時は見込み利用者数で計算します)。また、事業所で障害児相談支援(児童の計画相談支援)を一体的に行っている場合は、その障害児の保護者等も含めた数を利用者数に合算します。例えば、大人の利用者30人と障害児相談支援の対象(保護者等)10人で合計40人となる場合、35人を超えるので相談支援専門員は2名体制にすることが望ましいでしょう。
この35人という担当件数はあくまで目安ですが、基準に沿った人員配置を行うことで、一人ひとりの負担を減らしサービスの質を維持できます。利用者が増えて業務が逼迫しそうなときは、早めにスタッフ増員を検討しましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 各事業所に相談支援専門員を1名以上配置:計画相談支援事業を行うには、必ず最低一人の相談支援専門員を置く必要があります。管理者と兼任させれば、理論上はスタッフ1名(管理者兼相談支援専門員)だけでも開業は可能です。
- 原則「専従」して業務に当たる:相談支援専門員は勤務時間中、基本的に計画相談支援の業務に専念させます。他の職務を掛け持ちさせるのは、あくまで主業務に支障がない場合に限られます。
- 管理者との兼務はOK:相談支援専門員は同じ事業所の管理者を兼ねることができます。逆に、サービス管理責任者など他の障害福祉サービス提供に関わる責任者との兼務はできない点に注意しましょう。
- 公正中立な支援の確保:相談支援専門員が利用者の利用しているサービス事業所の職員を兼ねることは、原則避けるべきです。やむを得ず兼務する場合でも、利用者本位の視点が損なわれないよう十分配慮しなければなりません。
- 標準担当件数は35件/人が目安:一人の相談支援専門員が担当する目安は月平均35人程度です。それを超える場合、追加で人員配置することが望ましいとされています。適切な人員体制を整えることで、サービスの質と従業者の負担バランスを保ちましょう。
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