スキップしてメイン コンテンツに移動

独習 計画相談支援 指定基準 | 第二 指定計画相談支援に関する基準 2 運営に関する基準 (11) ⑤〜⑥

画相談支援の取扱方針⑤・⑥の解説: 総合的な計画とサービス選択のポイント


記事の概要:
計画相談支援(指定特定相談支援事業)におけるサービス等利用計画の作成ポイントについて、厚生労働省の定める具体的取扱方針の⑤および⑥項に沿って解説します。ポイントは大きく二つです。まず、計画相談支援では利用者の生活全般を支える総合的なサービス等利用計画を作成する必要があります。また、利用者本人のサービス選択の尊重が極めて重要です。本記事ではこれら二つの原則を具体例を交えながらやさしくシンプルに解説します。

▶︎ 計画相談支援 関連記事まとめページはこちら

総合的なサービス等利用計画の作成 (取扱方針⑤)

計画相談支援におけるサービス等利用計画は、利用者の日常生活全般を支援する視点とインクルージョン(地域社会への包容)の視点に立って作成することが重要です。言い換えれば、特定の福祉サービスだけでなく、利用者の暮らしを支えるあらゆる資源を計画に組み込んだ包括的な計画を目指します。

そのため、サービス等利用計画を新規に作成・変更する際には、利用者本人やご家族の希望、そして事前のアセスメント(課題やニーズの把握)の結果に基づいて、障害福祉サービス以外の支援も幅広く検討します。例えば以下のようなものです:

  • 保健医療サービス:定期的な通院やリハビリテーション、健康管理など医療面の支援
  • 市町村の地域生活支援事業:自治体が一般施策として提供する地域活動支援センターの利用や移動支援サービスなど
  • 地域のインフォーマルなサービス:近隣住民のボランティア活動や自治会の見守りといった、公的制度外の支え
  • 児童の保育所等への移行支援:お子さんがいる場合、障害児通所支援から保育園・幼稚園へのスムーズな移行をサポートする取り組み
  • 入所施設や精神科病院から地域への移行支援:長く入所施設や病院で生活していた障害者が、地域で暮らし始めるための住居探しや体制づくりの支援

上記のような福祉サービス以外の支援や地域資源も含めてサービス等利用計画に位置付けることで、計画は利用者の生活全体を見通した総合的なものとなります。相談支援専門員(計画相談支援を行う専門員)は、利用者が地域で自分らしく生活できるよう、フォーマルなサービスとインフォーマルな支援の両面をバランス良く盛り込むよう努めなければなりません。結果として、「この計画があれば生活全般がサポートされている」と利用者が感じられるような包括的プランになることが理想です。

利用者によるサービス選択の尊重 (取扱方針⑥)

計画相談支援のもう一つの重要な原則が、利用者のサービス選択を基本とすることです。相談支援専門員は、利用者が自ら利用したいサービスを選べるように支援する立場にあります。具体的には、相談支援専門員は利用者や家族に対して、居住地域にある各種の指定障害福祉サービス事業者や相談支援事業者が提供するサービス内容や利用料金等の情報を正確かつ公正に提供します。十分な情報提供を受けることで、利用者は様々な選択肢を比較検討し、自分に合ったサービスを選びやすくなります。

注意すべきなのは、相談支援専門員が特定の事業者のサービスだけを不当に推奨したり、利用者の選択の機会を奪ったりしてはいけないという点です。例えば、自社(所属事業所)が運営する福祉サービスだけを最初からサービス等利用計画案に盛り込んで提示するのは不適切です。計画案を作成する際には常に利用者の意思決定を尊重し、複数の事業者・サービスの中から選べる状況を作る必要があります。相談支援専門員が提供する情報が特定の事業主体に偏っていては、公平な選択支援とは言えません。

特に留意すべきケースとして、地域移行支援型ホーム(障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス基準附則第7条で規定された、病院等から地域生活へ移行するための特例的なグループホーム)を利用したいと希望している利用者への対応があります。地域移行支援型ホームとは、精神科病院の敷地内などに設置されるグループホームで、長期入院者が地域生活へ段階的に移行するための受け皿となるものです。このようなケースでサービス等利用計画案を作成する際には、できる限り病院の敷地の外で暮らせるように支援策を検討・提示する義務があります。たとえば、地域移行支援型ホームの利用に加えて、アパート等で自立生活を送るための訪問支援サービスや地域定着支援(見守り支援)など、地域で暮らすことを後押しする代替案が考えられるなら、それらを利用者に提案します。このようにして、利用者が将来的により開かれた地域社会の中で生活できる選択肢を示すことが、相談支援専門員の努めとなっています。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 包括的な計画の作成: サービス等利用計画には障害福祉サービスだけでなく、医療や自治体の支援策、地域のボランティア活動まで含めて検討しましょう。利用者の生活全体を支えるという視点が重要です。結果として、インクルージョン(地域社会への参加)の推進にもつながります。
  • 利用者本位のサービス選択: 利用者が自らサービスを選べるよう、公平で十分な情報提供を徹底することが大前提です。他の事業所が提供するサービスも含めて選択肢を提示し、利用者の意向を最優先に計画を立てます。自社のサービスに誘導するような偏った提案は禁止されています。
  • 公正な相談支援の提供: 計画相談支援事業者として、スタッフ(相談支援専門員)には倫理観と法令遵守が求められます。利用者の権利である選択の自由を侵害しないよう研修を行い、組織としてガバナンスを効かせましょう。行政からの指導監査においても、計画内容が画一的・偏重的でないか、利用者の意思が適切に反映されているかがチェックされます。
  • 地域移行支援への配慮: 長期入院者や入所者の地域生活移行を支援する際は、単に施設内の受け皿を紹介するだけでなく、地域で暮らせるための支援策を積極的に提示する姿勢が求められます。地域移行支援型ホームの活用時には特に注意し、利用者が一歩でも地域で自立できるような計画づくりを心がけましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。