指定計画相談支援の基準解説:アセスメントと意思決定支援のポイント
記事の概要:
本記事では、障害福祉サービスの指定計画相談支援に関する基準の解釈通知から、アセスメント(事前評価)と意思決定支援、そして訪問による面接の重要性についてやさしくシンプルに解説します。サービス等利用計画(支援計画)を利用者ごとに適切に作成するためには、計画を立てる前の丁寧なアセスメントが欠かせません。また、利用者本人の意思を尊重した支援を行うことや、利用者の生活現場を直接確認することも重要です。
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アセスメントの実施とは何か(基準第30条第2項第5号)
アセスメントとは、サービス等利用計画を作成する前に利用者の生活状況や課題を詳しく評価するプロセスのことです。指定特定相談支援事業者の相談支援専門員は、計画策定に先立ち必ずアセスメントを行い、現在利用中の福祉サービスの内容や心身の状態、生活環境などを総合的に把握します。そして、利用者のQOL(生活の質)を維持・向上するうえでどんな課題があるかを明らかにし、自立した生活に向けて解決すべき問題を洗い出します。こうして生活全般を十分に把握することで、本人に最適な支援計画を作成できるのです。
アセスメントを行う際には、客観的で適切な方法を用いることが求められます。相談支援専門員が自己流のやり方だけで評価するのではなく、合理的と認められた手法やツールを活用しましょう。また、必要に応じて専門機関の評価結果や、障害支援区分認定の医師意見書といった客観的資料を本人の同意のもと参考にすることも重要です。こうした多角的な情報に基づくアプローチにより、利用者の真のニーズを見逃さず適切なサービス等利用計画につなげられます。なお、作成したアセスメント記録には5年間の保存義務があります。
本人の意思を尊重した意思決定支援(基準第30条第2項第6号)
アセスメントの過程では、利用者自身がサービス内容や生活について意思決定する場面があります。しかし、障害の状況によっては自分の希望や意思をうまく表現できなかったり、判断に不安を抱えたりする利用者もいます。そのような場合、相談支援専門員は単に代わりに決めるのではなく、適切な意思決定支援を行うことが求められます。具体的には、利用者の表情や反応、日々の行動から好みや希望を丁寧に汲み取り、必要に応じて家族など周囲の意見も参考にしながら、本人の意思をできる限り尊重した選択肢を一緒に考えていきます。ポイントは、利用者の意思や選好(好きなこと・望んでいること)そして判断能力の程度をよく理解することです。その上で、本人が自らの生活について可能な限り主体的に決定できるよう支援します。意思決定が難しい利用者には、選択肢を丁寧に説明するなど工夫し、納得できる形でサービス等利用計画に合意できるよう導きます。
アセスメント時の訪問と信頼関係の重要性(基準第30条第2項第7号)
相談支援専門員がアセスメントを行う際には、利用者の生活の現場を直接確認することが非常に大切です。机上の資料や電話だけでは掴めない本人の暮らしぶりを把握するため、必ず利用者の居宅(自宅)や利用している障害者支援施設、入院中の精神科病院などを訪問し、利用者およびご家族と直接お会いして面接を実施します。現地で生活状況を確認し、直接面談することで、書類からは読み取れない課題や真のニーズを把握できます。
このような訪問・面接を行う際には、利用者および家族との信頼関係・協働関係を築くことが欠かせません。突然訪ねて形式的な質問をするのではなく、まずは面接の目的をわかりやすく説明し、納得してもらった上で話を始めましょう。利用者側に「相談支援専門員は自分たちのことを理解してくれる」という安心感が生まれれば、情報提供にも協力的になり、より正確なアセスメントにつながります。日頃から丁寧なコミュニケーションを心がけ、信頼関係を構築しておくことで、計画作成後の支援過程でも円滑な連携が期待できます。なお、相談支援専門員は専門職として常に面接技法やコミュニケーションスキルの向上に努め、研鑽を積むことも重要です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者本位のアセスメント: 計画相談支援では、利用者一人ひとりの状況に応じたアセスメントが必須です。形式的な聞き取りで済ませず、生活環境や現在利用中のサービスも含めて丁寧に評価し、課題を正確に把握しましょう。
- 客観的な情報の活用: アセスメントは相談支援専門員の勘だけに頼らず、根拠に基づく手法や第三者の専門的評価結果を活用しましょう。必要に応じて医師の意見書なども参考にし、多角的な視点で利用者のニーズを分析しましょう。アセスメント記録の5年間保存も徹底しましょう。
- 意思決定支援の徹底: 利用者が自分の意思を表明しにくい場合でも、本人の気持ちや希望を丁寧に引き出し、一緒に考える姿勢で臨みましょう。意思を尊重した支援計画とすることで、本人の納得感も高まります。
- 現場主義の訪問面接: アセスメントでは利用者の居場所(自宅・施設等)への訪問と直接の面接が原則です。現地で生活状況を確認し、書類からは見えないニーズを把握できます。訪問時には目的をしっかり説明し、信頼関係を築きながら情報収集を行いましょう。
- 継続的なスキルアップ: 相談支援専門員として、コミュニケーション力や面接技法の向上に努めることも忘れずに。日々の業務や研修を通じてスキルアップし、より質の高い計画相談支援サービスを提供できるようにしましょう。
