指定計画相談支援における書類交付義務・市町村通知・管理者の責務について
記事の概要:
本記事では、指定計画相談支援(障害福祉サービスの一つ)の指定基準のうち、その運営上のルールとしてのサービス等利用計画書の交付義務、不正受給時の市町村への通知義務、事業所管理者の責務について取り上げます。
▶︎ 計画相談支援 関連記事まとめページはこちら
サービス等利用計画書の交付義務(基準第16条)
指定特定相談支援事業者(計画相談支援を行う事業所)は、利用者が他の相談支援事業所にサービスの継続利用を希望する場合や、利用者から請求があった場合、最新のサービス等利用計画書とその実施状況がわかる書類を利用者に交付する義務があります。これは、利用者が事業所を変更しても新しい相談支援事業所がスムーズに計画相談支援を引き継げるようにするための規定です。例えば、A事業所で作成・運用していた支援計画を、利用者がB事業所に移った際にも活用できるように、直近の計画とモニタリング記録などをきちんと渡す必要があります。こうした引き継ぎを円滑に行うことで、利用者は途切れなく適切なサービスを受け続けることができます。
不正受給を発見したときの市町村への通知(基準第17条)
障害福祉サービスには、公費(税金)が投入されています。そのため、利用者が虚偽の申請など不正な手段で給付を受けていたことが判明した場合には、適切な対応が求められます。法律(障害者総合支援法)第8条第1項では、市町村が不正受給者から不正に受けた給付費を返還徴収できると規定しています。これを踏まえ、指定特定相談支援事業者は、自社の利用者について「計画相談支援給付費」を偽りその他不正な手段で受給した、あるいは受給しようとした事実を知ったときは、遅滞なく市町村に通知する義務があります(通知の際には事業者としての意見書を添える必要があります)。例えば、利用者がサービス利用実態と異なる内容で計画相談支援を申請し給付を受けていたような場合、事業者は速やかに市役所など担当部署へその事実を報告しなければなりません。この措置により、不正受給の早期発見と適正な公費の利用が確保されます。
管理者の責務とは(基準第18条)
指定計画相談支援事業所の管理者には、事業所運営の要として重要な責務が課されています。管理者は、障害者総合支援法の基本理念(利用者本位や自立支援など)を踏まえ、利用者に対するサービス提供の現場で起こる様々な事象を常に適切に把握しつつ、職員(従業者)と業務全体を一元的に管理する役割があります。具体的には、相談支援専門員をはじめとする従業者をまとめ、サービス提供の進捗や問題発生状況をタイムリーに把握して対応策を講じます。また、管理者は事業所の従業者に対し、運営基準(指定基準の第2章第3節に定められた事項)を遵守させるよう指揮命令を行う義務があります。簡単に言えば、管理者は事業所内の指揮官として、スタッフがルールに則って質の高い相談支援を提供できるよう監督・指導する役割を担っているのです。例えば、サービス提供中にヒヤリハット(事故につながりかねない出来事)が起これば、管理者は即座に状況を把握して再発防止策を講じ、スタッフにも共有します。このように管理者が現場とスタッフをしっかり統括することで、利用者本位の安心・安全なサービス提供が実現できます。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者の事業所変更時の書類交付:利用者が他の相談支援事業所へ移る際には、現行のサービス等利用計画書と実施状況の書類を速やかに渡しましょう。これは法律で定められた義務であり、円滑なサービス引き継ぎのために欠かせません。
- 不正受給の早期発見と通報:利用者の不正受給(虚偽申請など)を疑わせる事実を把握した場合、発見次第すぐに市町村へ報告する必要があります。公費の不正利用防止は事業者の責務の一つです。見て見ぬふりをすると事業者自身が罰則等の対象となる可能性もありますので注意してください。
- 管理者のリーダーシップ:管理者は単なる名義上の責任者ではなく、現場の状況把握とスタッフ管理を一手に引き受ける重要ポジションです。新人相談支援専門員への教育、サービス提供中のトラブル対応、従業者への定期的な法令順守の指導などを通じて、事業所全体のサービス品質を高めましょう。管理者自身が基本理念を理解し率先垂範することで、チーム全体が利用者本位の姿勢を維持できます。
【免責事項】
