計画相談支援の運営規程のポイント解説(基準第19条④〜⑥部分)
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指定計画相談支援の事業者(指定特定相談支援事業所)は、事業運営のために運営規程というルールブックを整備する義務があります。運営規程には、障害者総合支援法に基づく人員・運営基準(基準第19条)で定められた項目を盛り込む必要があります。本記事ではそのうち解釈通知の④〜⑥について、やさしくシンプルに解説します。
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特定の障害だけをサービス対象にすることは可能?
結論から言えば、原則すべての障害種別の方を受け入れるのが指定特定相談支援事業者(計画相談支援事業所)の基本です。しかし、サービスの専門性を確保するために必要である場合には、主たる対象とする障害の種類を限定することも認められています。例えば「発達障害の方を主に対象とした相談支援事業所」など、特定の障害分野に特化した運営も可能です。その場合は運営規程において対象とする障害の種類を明記しなければなりません。限定する理由としては、「特定の障害に特化した専門的支援を提供する必要性がある場合」に限られます。つまり、やむを得ない場合に限り特化は許されますが、そうでなければ幅広い障害の方々を受け入れていく姿勢が求められます。
利用者虐待防止のための取り組みを運営規程に
近年、障害者への虐待防止が非常に重視されています。「障害者虐待防止法」という法律により、虐待の未然防止策や万一虐待が起きてしまった場合の対応策が定められています。指定計画相談支援事業所では、これをより実効性のあるものにする観点から、利用者への虐待を早期発見し迅速かつ適切に対応するための措置をあらかじめ運営規程に定めておくことが義務付けられています。簡単にいえば、「利用者の安全を守る仕組みを事前にきちんと決めておきなさい」ということです。具体的に運営規程に定めるべき虐待防止の取り組みには、次のようなものがあります。
- 虐待防止責任者の選任: 事業所内で虐待防止の責任者(担当者)を決めます。万一の事態に備え、責任を持って対応策を統括する人です。
- 成年後見制度の利用支援: 判断能力に不安のある利用者については、成年後見制度の活用を支援します。必要に応じて利用者や家族に制度の利用を促し、権利擁護を図ります。
- 苦情解決体制の整備: 利用者や家族からの苦情や相談を受け付け、公正に解決する仕組みを整えておきます。例えば苦情窓口を設置し、対応手順を定めておくことが大切です。
- 職員研修の実施(虐待防止): 職員に対して定期的に虐待防止に関する研修を行い、知識と意識の向上を図ります。研修の計画や方法も含め、継続的な実施体制を作りましょう。
- 虐待防止委員会の設置: 事業所内に「虐待防止委員会」を設け、虐待防止のための対策を検討・推進します。必要に応じて外部の専門家や利用者の家族の意見も取り入れ、客観的な視点でチェックすることが望ましいです。小規模な事業所でも形だけでなく、実効性のある委員会運営を心がけましょう。
以上のような項目を運営規程に定めておくことで、利用者の方々が安心してサービスを利用できる環境を整えることができます。
地域生活支援拠点等として位置付けられている場合は?
「地域生活支援拠点等」とは、障害のある方の地域生活を支えるため各市町村に設置が推進されている拠点(センター)のことです。もし指定計画相談支援事業所が自治体によりこの地域生活支援拠点等に位置付けられている場合は、その旨(拠点等であること)を運営規程に明記しなければなりません。拠点等として指定されているということは、通常の計画相談支援に加えて、地域で生活する障害者を包括的に支える以下のような重要な機能を担っている可能性があります。
自治体の通知(平成29年7月の厚労省通知)では、拠点等に求められる具体的な機能が定められています。事業所が拠点等に該当する場合、自事業所がその中でどの機能を担うのかも運営規程に書き添えることが望ましいとされています。例えば「○○事業所は〇〇市の地域生活支援拠点等に指定されており、緊急時受入れ機能と専門相談機能を担っています」のように明記します。これにより、利用者やその家族、関係者に対して当該事業所の役割が明確になり、安心感と信頼性が高まります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 運営規程の記載内容は「義務」:運営規程には、指定基準第19条に列記された8項目すべてを記載する必要があります。事業の目的や職員体制、営業日といった基本情報はもちろんのこと、本記事で扱った④⑤⑥(対象障害の限定、虐待防止、地域支援拠点)も見落とされがちな項目です。とくに新規開業時には、雛形を使って済ませるのではなく、実態に即した内容にカスタマイズしておきましょう。
- 専門特化と虐待防止は「書くだけ」で終わらせない:特定の障害種別に特化した支援を行いたい場合は、その理由と正当性を十分に検討し、運営規程に明記したうえで対外的な説明責任も果たす必要があります。逆に、対象を限定しない場合は、「すべての障害者を受け入れる」旨を職員間でしっかり共有しましょう。また、虐待防止策については、「規程に記載して終わり」ではなく、責任者の設置、苦情体制の整備、研修実施、委員会の運営など、実務に落とし込んだ体制構築が不可欠です。自治体による実地指導でも重点的に確認される項目なので、日常的な運用を見据えて設計しましょう。
- 地域拠点としての役割がある場合は、責任と情報開示を意識:事業所が市町村により「地域生活支援拠点等」として位置付けられている場合、運営規程への明記はもちろん、どの機能を担っているか(例:緊急対応、短期入所調整など)も利用者にとって明確になるよう、パンフレットやホームページ等で説明すべきです。また、拠点としての機能を果たすには、他機関との連携体制の構築や、平時からの連絡・協働体制が不可欠となります。
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