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独習 計画相談支援 指定基準 | 第二 指定計画相談支援に関する基準 2 運営に関する基準 (23) 

画相談支援における利益誘導禁止の解説


記事の概要:
指定計画相談支援では、サービス利用計画の作成時に利用者本位の公正中立な支援が求められます。そこで重要になるのが、「障害福祉サービス事業者等からの利益収受等の禁止」(指定基準第26条)です。このルールは簡単に言えば、計画相談支援を行う事業者やスタッフが、自分たちの利益のために特定のサービス事業者をひいきしたり、見返り(キックバック)を受け取ったりすることを禁止するものです。この記事では、この基準第26条の内容をやさしくシンプルに解説します。

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計画相談支援とは何かと公正中立の必要性

計画相談支援とは、障害のある方一人ひとりに合ったサービス等利用計画(どの障害福祉サービスをどう利用するかのプラン)を作成する支援サービスです。相談支援専門員が利用者の課題や希望を聞き取り、適切な福祉サービス利用計画を立てます。その際に大前提となるのが、利用者のニーズを最優先にすることです。計画内容は利用者が解決すべき課題に即していなければなりません。つまり「利用者に本当に必要なサービスは何か?」を軸に考えるべきで、事業者側の都合で特定のサービスをゴリ押ししてはいけないのです。

しかし現実には、計画相談支援事業所を運営する法人が自社系列のサービス事業所を持っている場合など、自分たちのグループのサービスを優先的にプランに組み込みたい誘惑が生じることも考えられます。そこで、計画相談支援の公正中立を保つために定められたのが基準第26条のルールです。このルールには大きく3つの禁止事項があります。それぞれ誰が何をしてはいけないのかを順番に見ていきましょう。

(1) 事業所の管理者による特定サービスへの誘導禁止

基準第26条第1項では、指定特定相談支援事業者およびその事業所の管理者が、サービス等利用計画の作成・変更にあたって部下の相談支援専門員や相談支援員に対し、特定の福祉サービス事業者のサービスだけを計画に組み込むよう指示することを禁じています。要するに、管理者が部下に「うちの系列施設のサービスだけ使うようにしなさい」といった指示を出すのは禁止ということです。

この規定の背景には、「サービス等利用計画はあくまで利用者の課題解決に沿ったものであるべきだ」という原則があります。例えば、ある法人が計画相談支援事業所と障害福祉サービス事業所(デイサービスやグループホーム等)を両方経営しているケースを考えてみましょう。計画相談の管理者が自社系列のサービスのみをプランに入れるよう指示してしまうと、本来は利用者のニーズに合った他社のサービスがあるかもしれないのに、それを排除してしまうことになります。これは利用者の課題解決に反するばかりか、実質的に他の事業者のサービス利用の機会を奪う行為でもあります。したがって、こうした利益誘導的な指示は厳に慎まなければなりません。

(2) 相談支援専門員による特定サービス利用の指示禁止

基準第26条第2項では、実際に利用計画を作成する相談支援専門員(計画相談支援担当のスタッフ)が、利用者本人に対して利益目的で特定の福祉サービス事業者のサービスを使うよう直接指示・誘導することを禁止しています。第1項が「管理者から部下への指示禁止」だったのに対し、第2項は「相談支援専門員から利用者への誘導禁止」と覚えると分かりやすいでしょう。

これも第1項と同じく、相談支援業務の公正中立を守る趣旨の規定です。例えば、相談支援専門員本人が自法人系列のサービスを強く勧めすぎて「他はやめてうちの関連施設だけ利用しましょう」などと誘導すると、利用者の本来の選択肢を狭めてしまいます。相談支援専門員は利用者の伴走者であり、利用者が必要なサービスを自由に選べるようサポートする立場です。他のサービス利用を事実上妨げるような偏った提案は、この規定に抵触する恐れがあります。

(3) 福祉サービス事業者からの金品受領(キックバック)禁止

基準第26条第3項では、指定特定相談支援事業者およびその従業者(スタッフ)が、利用者に特定のサービス事業者のサービスを使わせる見返りに、当該サービス事業者から金銭や物品などの利益を受け取ることを禁止しています。いわゆる紹介料やキックバックの授受は禁止ということです。この条項は計画相談支援の公正中立をより確実にするためのもので、金銭的な利害関係が介在すると適切な支援が歪められてしまう恐れがあるためです。

ここで注意したいのは、「福祉サービス等の事業を行う者等」には障害福祉サービス事業者以外の事業者や個人も含まれるという点です。つまり、障害福祉サービスの分野に限らず、もし相談支援事業者が利用者に特定の企業や個人のサービスを使わせ、その対価としてお礼や手数料を受け取った場合も、この禁止規定に引っかかる可能性があります。例えば極端な例ですが、「うちの利用者さんをあなたのサービスに紹介するから謝礼をください」といったやり取りは明確にNGです。それが現金であれ商品券であれ、高級な贈答品であれ、財産上の利益になるものはすべてアウトになります。

違反したらどうなる?コンプライアンスの重要性

以上のように、基準第26条は計画相談支援における利益相反行為の禁止を定めています。このルールに違反すると、指定基準違反として行政指導の対象となり、悪質な場合は事業所の指定取消しといった厳しい処分にもつながりかねません。自治体の指導監査ではこれら利益誘導・利益授受が行われていないか重点的にチェックされます。信頼される事業経営のためには、法律・基準を順守し、公正中立な支援を提供するコンプライアンス意識が不可欠です。

幸い、計画相談支援そのものは利用者本位であるほど質が高まるサービスです。利用者に寄り添い、利用者の選択肢を尊重することが結果的に事業所の評価や信用につながります。ですから、「ルールだから仕方なく守る」というより、利用者の笑顔のために公平で誠実な支援を行うことが大切だと言えるでしょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • サービス等利用計画は利用者本位に作成すること – 計画相談支援では、利用者の課題解決に沿ったプラン作りが最優先です。他社サービスの方が利用者に適している場合、自社系列に固執せず利用者の利益を第一に考えましょう。
  • 自社グループだけに誘導しないこと – 指定特定相談支援事業者の管理者や相談支援専門員は、自分の法人系列など特定の事業者のサービスだけを使うよう利用者を誘導してはいけません。公正中立な立場で複数の選択肢を提示し、利用者が自由に選べる環境を整えましょう。
  • 紹介料・キックバックは厳禁であること – 利用者のあっせんの見返りに金銭や物品を受け取る行為は禁止されています。仲介手数料や謝礼のやり取りは法律違反となり、行政処分(指導や最悪の場合は指定取消し)のリスクがあります。事業運営においてはコンプライアンスを徹底し、透明性のある連携を心がけてください。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。