指定計画相談支援事業所における虐待防止:指針作成と研修実施のポイント
記事の概要:
障害福祉サービスの計画相談支援を提供する事業所では、利用者への虐待防止のための体制づくりが求められています。この記事では、指定計画相談支援事業所における虐待防止策について、虐待防止のための指針(ガイドライン)の作成や職員研修の実施、虐待防止担当者の配置など、行政が定める基準のポイントをやさしくシンプルに解説します。
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虐待防止のための指針を作成しましょう
指定計画相談支援事業所は、事業所内で「虐待防止のための指針」(ガイドライン)を作成することが望ましいとされています。これは事業所が自主的に定めるルールブックのようなもので、職員全員が共通認識を持って虐待防止に取り組むための基本方針です。指針には以下のような項目を盛り込みます(表形式で整理します)。
例えば基本的な考え方では「虐待は絶対に許さない」「利用者本位で尊厳を守る」といった事業所の姿勢を示します。組織体制では、虐待防止委員会の設置やメンバー構成について定めます。職員研修の方針では研修頻度や内容の大枠を記し、報告方法や対応方針では万一虐待やその疑いが発生した際の内部報告フローや関係機関への通報、再発防止策の検討手順などを書き込みます。さらに、その指針を利用者や家族も閲覧できるようにする方法(例えば事業所内への掲示や希望者への配布)を示し、最後にその他必要な事項を補足します。以上のような指針を整備し職員に周知しておくことで、日頃から虐待防止意識を高め、問題発生時も落ち着いて対処できる土台ができます。
職員への虐待防止研修を定期的に実施しましょう
職員研修の実施も重要な柱です。指定基準では従業員に対する虐待防止研修を定期的に行うことが求められています。研修では虐待防止に関する基礎知識(例えば障害者虐待防止法の概要や虐待の種類・兆候の理解など)を周知し、さらに各事業所で策定した先述の指針の内容に基づいて実践的な対策を確認します。ポイントをまとめると:
- 研修頻度: 少なくとも年に1回以上は全職員向けに定期研修を実施します。また新しく職員を採用した時には、必ず最初に虐待防止に関する研修を行いましょう。
- 研修内容: 虐待防止委員会が中心となり、組織的に研修プログラムを作成します。内容は基礎知識の習得だけでなく、ケーススタディ(過去の事例の共有・対応策の検討)や職員同士の話し合いなども含めると効果的です。
- 外部研修の活用: 自事業所内で行う研修だけでなく、市町村の協議会や基幹相談支援センター等が開催する研修会に職員を参加させても構いません。外部の研修機会も積極的に活用して最新の知識を得るよう努めましょう。
- 記録と保存: 実施した研修の内容や参加者は適切に記録し、その記録を5年間保存する決まりです。万一行政から確認があった場合に提示できるよう、ファイルにまとめて保管しておくと安心です。
研修を通じて虐待の兆候に早く気付く視点や適切な対応手順を職員全員で共有しておけば、利用者に安心安全なサービスを提供し続けることにつながります。また、繰り返し研修を行うことで職員の意識定着とスキル向上が期待できます。虐待防止は単発の取り組みではなく、日頃からの継続的な教育・啓発が肝心です。
虐待防止担当者を配置しましょう
最後に、事業所内で「虐待防止のための担当者」を必ず一人は配置する必要があります。指定基準ではこの担当者について、相談支援専門員(計画相談支援の専門資格を持つ者)を充てることとされています。相談支援専門員は、利用者支援の知識・経験があるため、虐待防止の実務担当として適任と言えます。
虐待防止担当者の役割は、事業所内の虐待防止策を統括し推進することです。具体的には、先述の虐待防止委員会の中心メンバーとなって指針の整備や研修計画の策定、万一の事案発生時の対応指揮、関係機関との連絡調整などを担います。事業所規模によっては管理者やサービス管理責任者が兼任するケースもあるでしょうが、いずれにせよ責任の所在を明確にするために担当者を指名しておくことが大切です。
また、配置した担当者や事業所の管理者は、可能であれば都道府県等が実施する外部研修(例えば厚生労働省通知に基づく地域生活支援促進事業の研修など)に参加することが望ましいとされています。行政主催の研修に参加すれば、最新の制度動向や他事業所の取組事例など有益な情報も得られます。こうした研修参加は努力義務ではありますが、積極的に活用することで事業所全体の虐待防止体制のレベルアップにつながるでしょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 虐待防止ガイドラインの策定: 事業所独自の虐待防止の指針を作成しましょう。基本理念から報告・対応手順、研修方針まで網羅した内容にすることで、職員全員が虐待防止に向けた共通の指針を持てます。
- 職員研修の徹底: 年1回以上の定期研修と新規職員研修の実施は必須です。研修内容を記録し5年間保管することも忘れずに。内部研修だけでなく外部の研修会も積極的に活用して、職員の知識と意識向上を図りましょう。
- 虐待防止担当者の配置: 相談支援専門員を虐待防止担当者に任命し、事業所内の取り組み責任者としましょう。担当者および管理者は行政主催の研修にも参加し、最新情報を習得して事業所の虐待防止策に反映させることが望ましいです。
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