指定計画相談支援事業所における虐待防止委員会の役割と運営ポイント
記事の概要:
障害福祉サービス事業者には、虐待防止のための体制整備が義務付けられています。特に指定計画相談支援事業所では、運営基準の第28条の2で虐待防止に関する措置が定められています。令和6年(2024年)4月からは、虐待防止の取組をしていない事業所に対して報酬の1%減算(ペナルティ)が適用されるなど、虐待防止策は避けて通れない重要課題です。本記事では、その基準第28条の2第1項に規定された「虐待防止委員会」について、公式の解釈通知をもとにやさしくシンプルに解説します(第2項(研修)と第3項(担当者配置)は次回解説します)。
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虐待防止委員会とは?設置と構成のポイント
虐待防止委員会とは、事業所内で障害者への虐待を防ぐための対策を話し合い、対策を検討する委員会です。指定計画相談支援事業所では必ずこの委員会を設置する必要があります(事業所ごとに設置するか、規模に応じて法人全体で設置しても構いません)。委員会を立ち上げる際は、委員の役割分担や責任を明確にし、専任の「虐待防止担当者」を指名しておきましょう(各事業所に1名は配置が義務付けられています)。
委員会のメンバーには、管理者やスタッフだけでなく、利用者やそのご家族、外部の専門家なども加えるよう検討しましょう。外部の視点や利用者の声を取り入れることで、より実効性のある虐待防止策を検討できるでしょう。
委員会の運営:開催頻度と周知徹底
虐待防止委員会はどのくらいの頻度で開催すべきか? 基準では少なくとも年に1回は開催する必要があります。会議の形式は対面でもオンラインでも構いません。参加者の人数に明確な決まりはありませんが、事業所の管理者および虐待防止担当者(専任)は必ず委員会に参加しなければなりません。この2名が揃っていれば委員会として成立します。ただし、委員会で話し合った内容や決定事項は全ての従業者に周知徹底し、共有することが重要です。たとえ小規模な事業所で参加メンバーが少なくても、委員会での検討結果は必ずスタッフ全員に伝えて、組織全体で虐待防止に取り組みましょう。また、委員会の会議録や対応内容は適切に記録し、5年間保存する義務があります。
虐待防止委員会の3つの役割
虐待防止委員会には、大きく分けて次の3つの役割があります。
- 虐待防止のための計画づくり:虐待防止の研修計画を立てたり、職場の労働環境・労働条件を点検して改善する計画(アクションプラン)を策定し、さらに虐待防止のための指針(ガイドライン)を作成します。
- 虐待防止のチェックとモニタリング:職場の環境を日常的にチェックし、虐待につながるおそれのある問題があれば改善します。
- 虐待発生後の検証と再発防止策の検討:万一、虐待やその疑いが生じた場合には、事案を詳しく検証して原因を分析し、二度と起こさないよう再発防止策を検討・実行します。
虐待発生時の具体的な対応プロセス
では、もし事業所で虐待事案(または不適切な対応)が発生してしまった場合、委員会はどのような対応を行うべきでしょうか。解釈通知では、想定される具体策として次のような項目が示されています。表にまとめます。
委員会はこれらのプロセスを継続的に実行します。重要なのは、このプロセスの目的が決して職員の懲戒や処罰ではないという点です。組織全体で情報共有し、再発防止に取り組むための前向きな活動である点に留意しましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 虐待防止委員会の設置と担当者配置は義務:指定計画相談支援事業を行うなら、虐待防止委員会を立ち上げ、専任の虐待防止担当者を配置しなければなりません。
- 委員会は年1回以上開催し結果を全員で共有:委員会は最低でも毎年1回開催し、話し合った内容や決定事項はスタッフ全員に共有しましょう。小規模でも周知徹底が大切です。
- 虐待発生時は記録・報告・再発防止策が重要:万一トラブルが起きても隠さず、所定の様式で記録・報告して、原因を分析した上で再発防止策を実施することが重要です(懲罰が目的ではない点に留意)。
【免責事項】
