障害福祉サービスの従業者の員数基準(基準第5条第1項)3つのポイントを解説
記事の概要:
障害福祉サービスの事業運営や起業には、スタッフの配置基準を正しく理解することが欠かせません。厚生労働省の定める指定障害福祉サービス基準第5条第1項では「従業者の員数」に関するルールが定められており、これを誤解すると必要な人員を確保できずサービス品質の低下や指定申請の不備につながる恐れがあります。本記事では特に重要な3つのポイント(①適切な員数の職員確保、②勤務時間数の算定、③出張所等の従業者の取扱い)に絞って解説します。
▶︎ 居宅介護 関連記事まとめページはこちら
従業者の員数基準の3つのポイント
1. 適切な員数の職員確保
障害福祉サービス(例:居宅介護などの訪問系サービス)では、事業所ごとに常勤換算で最低2.5人以上の従業者を配置することが求められています。常勤換算とは、パートタイムなど非常勤の職員も勤務時間に応じてフルタイム職員の何人分に相当するか計算する方法です。例えばフルタイムを週40時間とすれば、週20時間勤務のパート職員は0.5人分に相当します。フルタイム2人(2.0人分)とパート1人(0.5人分)で合計2.5人分です。上記の2.5人という人数は、法律上「職員の支援体制等を考慮した最小限の員数」と定められています。つまり、2.5人はあくまで最低ラインであり、各地域のサービス利用状況や利用者数、業務量に応じて適切な人数の職員を確保する必要があります。利用者が多かったり支援に手間がかかる場合には最低基準以上のスタッフを配置することが大切です。
2. 勤務時間数の算定
障害福祉サービス事業所では、いわゆる「登録ヘルパー」のように勤務日や勤務時間が不定期な従業者も多く働いています。こうした非常勤スタッフを常勤換算で人数に含める際、厚労省の通知では次の2通りの取扱いが示されています。- 実績がある場合:すでに登録ヘルパー等によるサービス提供の実績データがある事業所では、「前年度の週あたり平均稼働時間」を1人あたりの勤務時間数として換算します 。例えば前年度に登録ヘルパーが平均週10時間働いていたなら、登録ヘルパー1人は週10時間勤務(常勤換算で0.25人分)として算定します。
- 実績がない場合:新規開業などで実績がない、あるいはデータがごく短期間しかない事業所の場合は、勤務シフト表に明記された確実に稼働できる時間だけを勤務時間数として計上します。簡単に言えば、シフト表で「週○時間働く予定」と決まっている時間だけをカウントする方法です。ただし、そのシフトの内容が現実と大きくかけ離れていてはいけません。勤務表上の予定と実際の働き方が乖離していると判断された場合は是正指導の対象になり得ます。計画段階から無理のない現実的な勤務予定を立てることが重要です。
3. 出張所等の従業者の取扱い
事業所によっては、本社となる事業所のほかに小規模の出張所(サテライトオフィス)を設けてサービス提供するケースもあるでしょう。この場合、人員基準は主たる事業所と出張所を合わせた全体で考えます。厚労省の定めでは、出張所等があるときは常勤換算の計算時に出張所の職員の勤務時間も含めることになっています。つまり、本社と出張所それぞれで2.5人を確保するのではなく、両方合わせて2.5人以上いれば基準クリアです。例えば、主たる事業所に常勤換算2.0人分、出張所に0.5人分のスタッフがいれば、全体で2.5人分となります。ただし、基準を満たすことは最低条件に過ぎません。実際には各拠点の利用者ニーズに応じて十分な人員を配置し、主事業所と出張所で柔軟に人員を融通できる体制を整えておくことが重要です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 人員基準はあくまで最低ラインです。常勤換算2.5人は必ずクリアしつつ、利用者数やサービス内容に応じて余裕をもった職員配置を心がけましょう。
- 常勤換算の計算方法を理解しておきましょう。非常勤職員の勤務時間を合計し常勤職員何人分に当たるかを計算し、自社のスタッフ体制が基準を満たしているか定期的に確認しましょう。
- 登録ヘルパーのシフト管理は慎重に行います。新規開業時には現実的な勤務予定を立て、実績ができてきたら平均稼働時間を把握して計算に反映させましょう。計画と実態が乖離しないよう注意が必要です。
- 出張所を設ける場合は一体運営を徹底しましょう。本社と出張所の合計で人員基準を満たすとともに、どちらかが手薄にならないよう相互にカバーできる体制を整え、各拠点で必要なスタッフを確保しましょう。
【免責事項】
