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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第三(居重同行) 1 人員に関する基準 (3)管理者 (4)準用(基準第7条)

害福祉サービス事業所の管理者配置要件と兼務条件をわかりやすく解説


記事の概要: 
障害福祉サービスの事業所には必ず「管理者」という責任者を配置する必要があります。本記事では、指定居宅介護事業所(いわゆるホームヘルプ)およびそれに準じた障害福祉サービス事業所における管理者の配置要件と、管理者が他の職務を兼務できる場合の条件について、やさしくシンプルに解説します。

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管理者とは何をする人?

管理者(事業所の管理者)とは、障害福祉サービス事業所において事業運営の責任を負う場の責任者す。簡単に言えば、その事業所の「店長」や「キャプテン」のような存在です。管理者は職員をまとめ、サービス提供が円滑に行われるよう管理・監督し、利用者さんに安心安全なサービスが届くようにする役割を担います。具体的には職員や業務の管理を一元的に行い、職員がルールを守って業務できるよう指揮命令を行うことなどが求められています。事業所で何かトラブルが起きたときには真っ先に対処にあたる責任者でもあり、利用者やそのご家族からの相談対応、行政への報告など、事業運営全般の要(かなめ)となる存在です。

管理者の配置要件とは?

障害福祉サービスの指定を受けるためには、事業所ごとに管理者を置かなければならないと法律で決められています。指定居宅介護事業所(自宅での介護サービスを提供する事業所)はもちろん、重度訪問介護(重度障害者のための訪問介護)、同行援護(視覚障害者のための外出支援)、行動援護(知的・精神障害者の外出支援)といった居宅介護系の障害福祉サービス事業所は、すべて同様に管理者の配置が義務付けられています。

では、配置要件としてどんな条件を満たす必要があるのでしょうか?ポイントは次のとおりです。

  • 常勤であること: 管理者はフルタイム(常勤)で勤務する職員である必要があります。非常勤のアルバイトさんが片手間に担えるポジションではなく、原則としてその事業所で常勤勤務する人が管理者になります。
  • 専従(専任)であること: 専従とは「もっぱらその職務に従事する」という意味で、簡単に言えば管理者は原則として管理業務に専念することが求められます。管理者は事業所運営の要ですから、本来は他の仕事と掛け持ちせず管理の仕事に集中すべき、という考え方です。

このように法律上は「各事業所ごとに、常勤で管理業務に専念する管理者を置かねばならない」と規定されています。なお、管理者になるための特別な資格や経歴については、居宅介護など多くのサービス種別では明確な資格要件は定められていません。そのため、極端に言えば誰でも管理者になること自体は可能です。ただし実際には、サービス提供の管理やスタッフマネジメントを適切に行える知識・経験が望ましいのは言うまでもありません。

管理者は他の職務を兼務できる

上では「管理者は専任で」と説明しましたが、例外的に管理者が他の職務を兼務することも認められています。法律の条文にも「管理上支障がない場合」は他の職務に従事させることができる、と但し書きがあります。つまり、管理者の本来業務に支障が出ないのであれば、管理者が別の役割を掛け持ちしても良いということです。

では、どんな場合に兼務が可能なのでしょうか?いくつか具体例を挙げてみます。

  • 管理者+現場スタッフ: 小規模な事業所では、管理者が管理業務を行いつつ、自ら利用者宅へ訪問して介助などのサービス提供を行うケースがあります。法律上、管理業務に差し支えなければこのような兼務は可能です。たとえば、普段は事業所で事務やスタッフ管理をしながら、利用者さんが少ない時間帯にヘルパー業務を行う、といった働き方が考えられます。実際、開業当初は人手が足りないため管理者自ら現場に出ることも珍しくありません。
  • 管理者+サービス提供責任者: 居宅介護事業所にはサービス提供責任者(サ責)という、利用者ごとのサービス計画を作成・調整する役割の職員が必要ですが、このサ責を管理者が兼任することもよくあります。管理者とサ責を同一人物が務めることは法律上問題なく、むしろ小規模事業所では一般的です。ただし、この場合も常勤1人が2つの役職を担う形になるため、利用者対応や計画作成に追われて管理がおろそかにならないよう注意が必要です。
  • 1人で複数事業所の管理者を兼任: 例えば同じ法人が隣接する地域で2つの居宅介護事業所を運営している場合など、一人の管理者が2つ以上の事業所を掛け持ちで管理することも認められています。この場合、それぞれの事業所で管理業務に支障が出ない範囲であることが条件です。事業所が地理的に遠く離れていたり、どちらも大規模で管理業務量が多いような場合は現実的に難しいでしょう。また、2つ以上の事業所管理者を兼務している場合には、さらに現場の介助業務まで兼ねることはさすがに困難なので避けるべきとされています。要は、「いくらなんでも掛け持ちしすぎて管理がちゃんとできなくなるような場合」はNGということです。

「管理上支障がない」状態とは?

では具体的に、「管理業務に支障がない」とはどんな状態でしょうか。これはケースバイケースですが、例えば行政のガイドラインでは次のような状況は支障ありと考えられています。

  • 管理すべき事業所の数が多すぎて、一つひとつの事業所を十分に把握・管理できない場合
  • 事故や急なトラブルが起きたときに、管理者がすぐ現場に駆け付けられないような勤務体制になっている場合

要するに、管理者の手が回らなくなる状態は避けなければならないということです。逆に言えば、きちんと管理職としての責務を果たせている限りにおいては、管理者が他の職務を兼ねても問題はないとされています。

管理者兼務の計算上の扱いについて

少し補足ですが、管理者を兼務させる場合の人員算定上の扱いについて触れておきます。たとえば「管理者とサ責を同一人物で兼ねる」ケースでは、その人は管理者としてもサービス提供責任者としても各1名配置したとみなしてカウントできます。一人二役ですが、両方の配置基準を満たす存在として扱われるわけです。これに対し、「管理者と介助職員を兼務」する場合は、その人は管理者1名としてカウントされるのに加え、介助スタッフとしても勤務時間の一部(例えば半日分など)を人員計算に充てることができます。人員基準上、一人の職員の労働時間を按分してそれぞれの職種に割り当てることが認められているのです。

ただし、人員配置基準の細かい計算方法や、兼務を届け出る際のルールは自治体によって運用が異なる場合があります。「管理者を他の職務で兼務させたい」と考えたら、必ず所管の指定権者(自治体)に事前に確認しておきましょう。基準違反にならないようにすることはもちろん、後々の報酬請求(加算要件等)で不利にならないようにするためにも重要です。なお、絶対ではありませんが、あくまで目安として以下の表を参考情報として掲載いたします。

管理者のヘルパー兼務日数(週)管理者としての評価
1日だけ問題なし(多くの市区町村で容認)
2日程度条件付きでOK。管理業務時間や実態で判断される。
3日以上グレー。理由と管理体制の説明が必要。要事前相談。
5日以上高確率でNG(ほぼ管理不在と判断される)


基準第7条の「準用」とは?

基準第7条では、前述の基準第5条と第6条(サービス提供責任者の配置基準や管理者要件に関する決まり)の内容を、そのまま 重度訪問介護・同行援護・行動援護 の3つの障害福祉サービス事業所にも当てはめて適用するとされています。つまり、これら3サービスの事業所でも、居宅介護事業所と同じ人員配置のルールや管理者の条件を守らなければならないということです。

そして重度訪問介護の事業所には、ここで覚えておきたい特別な例外(特例)があります。重度訪問介護だけは、基準第5条第2項第1号で定められた「サービス提供責任者(サ責)の配置」ルールが適用除外となっているのです。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 管理者は各事業所に1名必ず配置しなければならず、常勤で基本的に管理業務に専念できる人を充てる必要があります。まずは誰を管理者とするかを明確に決めましょう。
  • 管理者の兼務は可能だが慎重に: 小規模事業所では管理者が他の役割を兼ねるのはよくあることです。管理者自身がヘルパー業務やサービス提供責任者を兼任する場合は、管理業務がおろそかにならないように十分配慮しましょう。複数事業所の管理を一人で担う場合も同様です。「管理者不在」や「管理不十分」になれば行政指導の対象にもなりかねません。
  • 事前に指定権者へ相談・確認を: 管理者の兼務範囲や人員の数え方(常勤換算の方法など)は自治体によって解釈が多少異なる場合があります。計画段階で迷ったときは、所轄の自治体に相談して指示を仰ぐことをおすすめします。
  • 資格要件は緩和されているが責任は重大: 居宅介護などの管理者になるための特別な資格や経歴要件はありませんが、だからといって誰でも簡単に務まる仕事ではありません。事業運営の舵取り役として、サービスの質や職員の労務管理、利用者対応に責任を持つ重要なポジションです。経験者を配置するか、未経験の場合は研修などでしっかり知識を身につけてから臨むようにしましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。