設備基準を解説 – 開業に必要な5つのポイント
記事の概要:
指定居宅介護事業(障害福祉サービスの一種)を始めるには、設備に関する基準を満たすことが求められます。この設備基準は、簡単に言うと「きちんとした事業所スペースと必要な備品・設備を用意してください」という内容です。本記事では、基準のポイントを5つにまとめて説明します。
▶︎ 居宅介護 関連記事まとめページはこちら
設備に関する基準
指定居宅介護の設備基準(厚生労働省令 基準第8条第1項)で定められている内容は、大きく5つのポイントに整理できます。以下、その(1)~(5)の各ポイントについて順番に解説します。
専用の事務室(オフィススペース)を用意すること
事業を運営するために必要な広さを持つ専用の事務室を設けることが求められます。机や書棚などを置いてもゆとりのあるスペースを確保しましょう。具体的な面積基準は定められていませんが、スタッフの人数に見合った十分な広さが必要です。また、他の事業と同じ部屋を共用する場合は、カーテンやパーテーションで明確に区切り、それぞれの区画がどの事業を行っているのかがはっきりと分かるようであれば、同一の事務室を併用しても構いません。受付・相談スペースを確保すること
利用者の申込み受付や、利用者・家族からの相談に対応できる静かなスペースも必要です。テーブルと椅子を置き、落ち着いて話ができる空間に整えます。例えばテーブルと椅子があれば、契約内容やサービス内容についてゆっくり話し合えるでしょう。相談スペースはパーテーションなどで仕切ってプライバシーを守る工夫も大切です。相談室については他の併設事業所と共有して利用しても差し支えありません)。必要な設備・備品を揃えること
サービス提供に必要な設備や備品をきちんと用意しておきます。事務所には事務作業用の机・椅子・パソコン・電話・FAX・書棚など基本的な備品を設置しましょう。また、利用者の記録など個人情報を扱う書類は鍵付きの書庫を使うなど、安全に管理できる環境を整えてください。また、手指を洗浄するための設備など、感染症予防に必要な設備も欠かせません。職員が手洗いできる洗面台や手洗い場を用意し、液体せっけんや消毒液、清潔なタオル(ペーパータオルでも可)を備えておきましょう。なお、基準では、必要な設備や備品を「確保するもの」と表現されており、それをどう調達するかまで問われていません。そのため、リースやレンタルによる導入、あるいは賃貸オフィス内の備品を共用する形でも、運営やサービス提供に支障がなければ基準を満たすとされています。起業初期の資金負担を抑える工夫として有効活用したいですね。
「設備の特例要件」について
「設備の特例要件」とは、指定居宅介護など障害福祉サービス事業所の設備基準に関する特別な取り扱いのことです。具体的には、人員基準における「1の(8)の①、②および③」に該当するケースでの設備要件を指します。①は、訪問系の障害福祉サービスを併設する場合で、②は、介護保険の指定訪問介護事業者が障害福祉サービスを併設する場合、そして③は、障害福祉サービスと移動支援事業を併設する場合です。設備の特例要件では、これら①~③に該当する事業所であっても、設備に関しては前述の(1)~(3)の通常の基準(事業所の事務室や受付スペース、必要な設備・備品の確保)に準じて取り扱う、つまり通常と同じように設備基準を満たす必要があるという意味です。
準用規定
「準用」とは、ある決まりを別の場面にもそのまま当てはめることです。設備基準に関する基準第8条第1項の内容は本来「指定居宅介護事業所」の設備要件について定めていますが、基準第8条第2項により、この設備要件が他のサービスにも準用されます。具体的には、指定重度訪問介護事業所、指定同行援護事業所、指定行動援護事業所にも同じ設備基準が当てはまるということです。これら重度訪問介護・同行援護・行動援護はいずれも利用者の自宅や外出先で行う障害福祉サービスですが、準用の規定により、サービス提供の拠点となる事業所については設備基準(専用の事務室や相談スペース、必要備品の設置など)を居宅介護事業所と同様に満たさなければなりません。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 定期的に設備を点検・維持する: 開業後も設備基準を継続して満たす必要があります。事業所の建物や備品が老朽化・破損していないか、定期的に確認しましょう 。特に重要書類を保管する棚は鍵をかけ、個人情報の管理を徹底します。
- スペースの使い勝手とプライバシーを確保する: 用意した事務室や相談室が業務に十分機能する環境になっているかもチェックしましょう。狭すぎて仕事がしにくい、相談スペースが落ち着かないようでは困ります。スタッフが作業しやすい広さを確保し、利用者のプライバシーが守られる配置になっているか見直すことが大切です。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
