居宅介護計画の作成等(基準第26条)を解説 – サービス提供責任者の役割とは
記事の概要:
障害福祉サービスの一つである居宅介護(ホームヘルプ)では、サービス提供責任者が利用者ごとに「居宅介護計画」という支援計画を作成することが法律で義務付けられています。本記事では、基準第26条に規定された居宅介護計画の作成について、やさしくシンプルに解説します。サービス提供責任者が何をするのか、計画作成の流れ、そして事業運営上のポイントをまとめました。
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居宅介護計画とは何か?
居宅介護計画とは、障害のある利用者が自宅で受ける介助サービスについて、「どんな支援を」「いつ」「誰が」提供するかをまとめた個別の計画書です。サービス提供責任者(以下、サ責)が中心となって作成し、利用者本人の生活状況や希望を十分に反映させた内容にします。この計画には、利用者の抱える課題や支援の目標、具体的なサービス内容(例:食事や入浴の介助、週◯回など)、担当ヘルパーの氏名、サービス提供の日時・頻度・所要時間などが盛り込まれます。居宅介護計画を作成する目的は、利用者一人ひとりに合わせた質の高い支援を行うことです。そのために、利用者の状況をしっかりアセスメント(評価・把握)し、本人や家族の希望を踏まえて計画を立てることが重要です。
居宅介護計画作成の流れ
実際の居宅介護計画は、次のようなステップで作成・運用します。サービス提供責任者が中心となり、初回の計画作成からサービス提供中の見直しまで一連の流れを担います。
- 基本情報の整理(フェイスシート作成): まず利用者の基本的なプロフィールや心身の状態、生活環境、家族構成、現在利用しているサービス状況などを整理します。これによって支援の土台となる情報を把握します。
- アセスメント(ニーズの把握): 次に利用者の困りごとやニーズを丁寧に聞き取り、日常生活でどんな支援が必要か、解決すべき課題を洗い出します(課題分析)。例えば「どんなことに困っているか」「何を実現したいか」といった点を明らかにします。
- 計画原案の作成: アセスメント結果に基づき、支援の方向性と目標を定めます。さらに、その目標を達成するために必要な具体的サービスの内容や頻度を計画します。誰が担当するか(担当ヘルパー)、1回あたりの所要時間、サービス提供の曜日・時間帯なども決めていきます。ここでは、すでに相談支援専門員による「サービス等利用計画」がある場合は、その方針や内容に沿って居宅介護計画を作成することが求められます。
- 利用者・家族への説明: 完成した居宅介護計画の内容(支援の目標やサービス内容、スケジュール等)を、利用者本人とそのご家族にわかりやすい方法で説明します。専門用語はできるだけかみ砕き、「このサービスで何を目指すのか」を具体的に伝えます。また、サービス提供後には、その実施状況や達成度についても利用者にフィードバックを行います。
- 計画書の交付(手渡し): 説明だけでなく、作成した計画書は利用者および同居するご家族に書面で交付します 。これは法律上の義務であり、利用者が自分の支援内容を手元で確認できるようにするためです。交付した際には、受け取ったことの確認(サインや了承)をもらっておくと確実です。なお、計画書の様式(フォーマット)は事業所ごとに工夫して構いません 。
- サービス担当者会議への出席:さらに、サービス提供責任者は、計画の質を高めるために「サービス担当者会議」にも出席します。この会議は、指定相談支援事業者(相談支援専門員)が主催し、利用者に関わる関係機関(例:居宅介護、短期入所など)の担当者が集まって情報共有を行う場です。
居宅介護計画が、サービス等利用計画と矛盾なく連携し、必要な支援が漏れなく提供されるように、サ責はこの会議で自らの計画の内容を説明し、他機関と協議を行います。これにより、計画書の交付だけでなく、その裏側にある「チーム支援」の土台がしっかり構築されるのです。 - モニタリング(経過観察): 計画に基づくサービス提供が始まった後も、サービス提供責任者は定期的に状況をモニタリング(確認)します。具体的には、「計画どおりに支援が実施されているか」「支援目標は達成しつつあるか」「利用者の満足度や体調に変化はないか」といった点をチェックします。ヘルパーからの報告や利用者・家族からの聞き取りを通じて、現状を把握します。
- 計画の見直し・変更: モニタリングの結果、支援内容の修正が必要な場合は、居宅介護計画を見直します。新たな課題が見つかった場合は再度アセスメントを行い、目標やサービス内容を変更します。計画を変更した際も、初回と同様に利用者への説明と計画書の交付を速やかに行います。こうした計画→実施→評価→改善のサイクルを回すことで、常に利用者にとって最適な支援を提供できるよう努めます。
サービス提供責任者の役割と留意点
居宅介護計画の作成は、サービス提供責任者の中心的な業務です。サ責は利用者一人ひとりの「担当プランナー」として、計画作成からサービス実施後のフォローまで責任を負います。さらに、現場で介助を行うヘルパーに対しても、計画に沿ったサービス提供ができるよう助言や指導を行い、質の管理に努めます。計画書は利用者本位(利用者の視点で考える)の内容になっているか、わかりやすい工夫がされているか、といった点にも気を配りましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 計画作成は法令上の必須業務: 居宅介護サービスを提供する事業者は、必ずサービス提供責任者を配置し、利用者ごとに居宅介護計画を作成・説明・交付しなければなりません。計画を怠ると運営基準違反となるため注意が必要です。
- 利用者本位の支援を徹底: 計画内容は利用者の意向や生活背景を十分に反映させます。画一的なプランではなく、一人ひとりに合ったオーダーメイドの支援を心がけることで、利用者満足度も向上します。
- 他サービスや計画との整合性: 相談支援専門員が作成するサービス等利用計画がある場合は、その内容と矛盾しない計画を立てることが大切です。他のサービス事業者とも情報共有し、支援目標が食い違わないよう連携しましょう。
- 計画の説明と共有: 作成した計画は利用者や家族に丁寧に説明し、書面で渡します。利用者側が内容を正しく理解できるよう、専門用語の説明や資料の工夫を行いましょう。また、計画書受領のサインをもらうなど、記録を残しておくと安心です。
- 継続的なモニタリングと改善: 支援は計画を作って終わりではありません。サービス提供開始後も定期的にモニタリングを行い、状況の変化やサービスの質をチェックします。問題が見つかれば速やかに計画を見直し、サービス内容を改善しましょう。こうした継続的な改善により、常に質の高いサービス提供が可能になります。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
