スキップしてメイン コンテンツに移動

独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第三(居重同行) 3 運営に関する基準 (17) (18) (19)

問系サービスの緊急時対応・市町村通知・管理者の役割についてやさしく解説


記事の概要:
障害福祉サービス事業を運営する上で欠かせない3つの重要ポイント、「緊急時の対応」「市町村への通知」「管理者およびサービス提供責任者の責務」について解説します。これらは障害福祉サービスの運営基準(法律で定められたルール)の第28条〜第30条にあたる内容です。この記事では、それぞれの条文が何を求めているのか、どんな場面で必要になるのかを、やさしくシンプルに解説します。

▶︎ 居宅介護 関連記事まとめページはこちら

緊急時の対応(基準第28条)

「緊急時の対応」とは、サービス提供中に利用者さんの身に急な病気やケガなど緊急事態が起きたときにどう対処するか、という決まりです。スタッフ(従業員)がまさに障害福祉サービスの提供中に、利用者さんの体調が急変した場合などには、あらかじめ定めておいた緊急対応の方法にそって、速やかに医療機関に連絡するなど必要な措置を取らなければなりません。簡単に言えば「サービス中に利用者さんの具合が急に悪くなったら、すぐお医者さんや救急車を呼ぶ」といった対応が求められるのです。

このルールがある背景には、利用者さんの命や健康を守るために一刻も早い対応が大事だということがあります。例えば居宅介護の最中に利用者さんが意識を失ったり、激しい痛みを訴えたりしたら、介護スタッフは迷わず119番通報して救急対応を取ります。同時に、事業所の他の職員がご家族に連絡したり、必要に応じて主治医に連絡したりするケースもあるでしょう。こうした緊急時対応マニュアルを事前に運営規程(事業所ごとのルール)に定めておき、スタッフ全員に周知・訓練しておくことが大切です。万が一のとき適切な措置を素早く講じることで、利用者さんの安全を確保し、重大な結果を防ぐことにつながります。

支給決定障害者等に関する市町村への通知(基準第29条)

「市町村への通知」とは、サービスを利用している障害者が不正受給(ふせいじゅきゅう:ウソやごまかしで本来もらえない給付費を受け取ること)をした場合に、市町村に報告する決まりです。少し難しい表現ですが、要するに「利用者さんがサービス費用をだまし取ろうとしたら、市町村役所にすぐ知らせる義務が事業者にある」ということになります。 

背景には、公平に限られた福祉の財源を使うための仕組みがあります。自治体(市町村)は、障害福祉サービスの給付費を不正な手段で受け取った人からお金を返還させることができると法律で定めています。そのため、事業者は利用者さんの不正に気付いたときは放っておかず、速やかに市町村に事情を報告(意見を添えて通知)しなければなりません。例えば、利用者さんが本当はサービスを受けていないのに受けたことにして給付費を受け取っていた場合や、利用資格がないのに嘘の申請でお金をもらおうとした場合などです。普段から利用者さんと接している事業者だからこそ気付ける不正もあります。このルールにより不正受給を未然に防ぎ、公的資金の適正利用を守る狙いがあります。事業者の皆さんは万一怪しい状況を発見したら、早めに市町村に相談・通報することが求められています。

管理者およびサービス提供責任者の責務(基準第30条)

「管理者」と「サービス提供責任者」(サービスていきょうせきにんしゃ)のそれぞれに課せられた役割と責任について定めたルールです。事業所には運営を統括する管理者と、現場のサービス内容を取り仕切るサービス提供責任者(略して「サ責(させき)」と呼ばれることもあります)を置くことが義務付けられています。それぞれの立場で担当する役割は違いますが、どちらも円滑で質の高いサービス提供に欠かせません。

管理者は事業所の責任者で、スタッフや業務全体を一元的(まとめて)管理する役割があります。具体的には、事業所の運営全般について指揮を執り、職員に対してルール(運営基準)を守るよう指示・命令を出す責務があります 。簡単に言えば、管理者は事業所の「司令塔」です。サービス提供の計画から記録の管理まで、適切に行われているか目を配り、問題があれば改善策を講じます。また対外的には、行政への各種届け出や報告を行うなど、事業所運営の責任者としての役割も担います。

一方、サービス提供責任者はサービスの内容面を管理する担当者で、現場の「まとめ役」です。利用者さんがサービスを利用し始める際の調整(契約や利用開始の手続きなど)を行い、利用者さんごとに適切な支援計画(居宅介護計画等)を作成します。そして、その計画に基づいてスタッフ(訪問介護員など)に具体的な介護方法の指示を出したり、技術的なアドバイスを行ったりします。サービス提供責任者は定期的に利用者さんの様子を把握し、必要に応じて計画を見直したり、他の支援者(例えばケアマネージャーやご家族、医療スタッフ)と連絡・連携を取ったりすることも重要な仕事です。言わば「利用者さん一人ひとりのサービスがうまくいくように管理する責任者」なのです。

このように、管理者とサービス提供責任者で役割分担をすることで、事業所の運営管理とサービス品質の両面をしっかり担保しています。両者が協力し合うことで、スタッフ全員がルールを守りつつ利用者さんに質の高い支援を提供できる体制が整います。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 緊急時対応の準備:利用者さんの急病や事故に備え、事前に緊急時対応マニュアルを整備しスタッフに周知徹底しましょう。いざという時は速やかに適切な措置(例:119番通報や医師連絡)を取ることが求められます。 
  • 不正受給の未然防止:利用者さんによるサービス給付費の不正受給を発見したら速やかに市町村へ報告する義務があります 。日頃から利用者さんの利用状況を把握し、公平性を乱す不正には関与しない姿勢を持ちましょう。
  • 役割分担の理解と体制整備:事業所には管理者とサービス提供責任者を置き、それぞれの責務を明確にしましょう 。管理者は運営全体の管理、サービス提供責任者は個々のサービス内容の管理といったように、役割分担することでサービスの質と遵法(コンプライアンス)を両立できます。
  • 継続的な見直しと研修:上記のルールを実効あるものにするために、定期的に運営規程や内部体制を見直し、スタッフ研修を行うことも大切です。緊急時対応訓練や不正防止のチェック、管理者・サ責間の情報共有ミーティングなどを通じて、安心安全なサービス提供体制を維持していきましょう。



【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。