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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第三(居重同行) 3 運営に関する基準 (23)業務継続計画

害福祉サービス事業者に必要なBCP(業務継続計画)とは?災害・感染症への備えを解説


記事の概要:
障害福祉サービス事業所(例:居宅介護事業所やデイサービス等)では、地震や台風などの自然災害や、新型コロナウイルスのような感染症の発生時にもサービスを途切れさせないことが求められます。そのために業務継続計画の策定が省令で義務化されました。業務継続計画とは、緊急事態が起きても事業(サービス提供)をできるだけ継続し、早期に立て直すための計画のことです。本記事では、障害福祉サービスにおける業務継続計画の基本と策定のポイントについて、やさしくシンプルに解説します。

※一般的に、業務継続計画は英名であるBusiness Continuity Planの頭文字をとってBCPと呼ばれることが多いです。

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なぜ障害福祉サービスに業務継続計画が必要なのか?

障害福祉サービスを利用する方にとって、生活を支えるサービスが災害や感染症で突然止まってしまうことは大きなリスクです。例えば、大地震が発生したり、大雨による洪水や土砂災害が起きたり、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が流行したりした場合でも、支援が途切れないようにする備えが重要です。業務継続計画は、このような非常時に備えて「どうすればサービスを続けられるか」を事前に考え、まとめておく計画書です。特に居宅介護や訪問系のサービスでは、利用者が自宅で生活を続けられるよう災害対応を考えておくことが欠かせません。

厚生労働省は、2021年の制度改正でまず業務継続計画策定を促し、準備期間を経て令和6年度(2024年度)から業務継続計画策定が義務化されました。「業務継続計画 義務化」というキーワードの背景には、過去の大規模災害や新型コロナの経験から学んだ「備えの重要性」があります。業務継続計画を作成し実行できるようにしておくことは、利用者の安全確保はもちろん、事業者自身の継続・経営を守ることにもつながります。

業務継続計画には何を盛り込む?〜感染症・災害への備え〜

業務継続計画には主に「感染症」と「自然災害」の両方に備えた計画を含めます。それぞれについて、平常時の準備から緊急時の対応まで決めておきます。厚労省は障害福祉サービス事業所向けに「感染症発生時の業務継続ガイドライン」と「自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を公表しており、具体的な計画作りの参考になります。一般的に業務継続計画に盛り込むべきポイントは次の通りです:

感染症に関する業務継続計画:

  • 平常時の備え:平常時からの感染予防策の徹底(手洗いや消毒のルール作り、職員の衛生管理体制整備)、マスクや消毒液、非常食など備蓄品の確保。
  • 感染発生時の初動対応:利用者や職員に感染が疑われた時の連絡フロー(誰が責任者となり、どのように情報共有するか)、感染拡大を防ぐための即時の対応策。
  • 感染拡大防止の体制構築:保健所や医療機関との連携方法(速やかな報告・相談)、濃厚接触者への対応、事業所内外での情報共有体制。

自然災害に関する業務継続計画:

  • 平常時の備え:建物や設備の安全対策(耐震対策や非常電源の確保など)、災害時に備えた物資の備蓄(食料、水、薬品、燃料などライフライン途絶に備える)。
  • 災害発生時の対応:非常時の指揮命令系統と役割分担(誰が利用者対応を指揮するか、安否確認や連絡をどう行うか)、避難の判断基準と手順(どのタイミングでどこへ避難するか)。
  • 他施設・地域との連携:近隣の障害福祉施設や自治体との協力体制(避難所の受け入れ協議、物資や人手の応援要請の方法など)、地域の防災計画との整合性。


上記のように、平常時からの準備・体制整備、緊急発生時の具体的対応、関係機関との連携までを事前に決めておくことが業務継続計画策定のポイントです。計画は各事業所の状況や地域のリスクに合わせて作成しましょう(例えば、雪害が起きやすい地域ならそれに応じた項目を加えるなど柔軟に対応します)。感染症向けの計画と災害向けの計画は一体のものとしてまとめても問題ありません。

職員への周知と定期的な研修・訓練

業務継続計画は作っただけでは意味がありません。実際に非常時に機能するように、職員全員への周知と訓練が欠かせません。事業所内で業務継続計画の内容を共有し、非常時の対応方法についてスタッフ一人ひとりが理解しておく必要があります。そのために、少なくとも年に1回は業務継続計画に関する研修を行わなければなりません。また、新入職員については入社時研修の一環としても行うなど、計画の内容が組織内に浸透するよう工夫しましょう。また、研修を実施した際は内容を記録に残し、次に活かせるようにします。

研修だけでなく、実地の訓練(シミュレーション)も重要です。例えば、地震を想定した避難訓練や、感染症発生を想定した手順のロールプレイを行うことで、計画通りに動けるかを確認できます。訓練は年に1回以上を目安に実施し、机上でのシミュレーション(テーブルトップ訓練)と実際の行動を伴う訓練を組み合わせて実施すると効果的です。全職員が参加できるようスケジュールを調整し、非常時にチームとして円滑に協力できる体制を作ります。なお、感染症対応の訓練は感染症予防の訓練と合わせて行うなど、一石二鳥で進めることも可能です。

研修・訓練を通じて計画の不備が見つかった場合は、適宜業務継続計画を見直し(アップデート)して改善します。業務継続計画は一度作って終わりではなく、継続的に見直して改善していくものです。定期的な見直しにより、常に実効性の高い計画を維持しましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 業務継続計画(BCP)の策定は義務:障害福祉サービス事業者は法令によりBCP策定とその実行(研修・訓練含む)が義務付けられています。未策定の場合、行政指導や事業所へのペナルティなど不利益を受ける可能性があるため、必ず対応しましょう。
  • 感染症と災害、両面の備え:BCPには感染症発生時と自然災害発生時の両方の対応策を盛り込みます。
  • 職員への周知徹底:作成したBCPは職員全員に共有し、非常時の役割分担や手順を理解させます。平時から情報共有の窓口や連絡体制を決め、緊急時にすぐ機能するよう準備しましょう。
  • 定期的な研修・訓練の実施:年1回以上の研修とシミュレーション訓練を実施し、計画の実効性を検証・維持します。訓練の記録を取り、計画の改善に役立てることも大切です。
  • 計画の継続的な見直し:事業内容の変更や実際の災害発生経験などを踏まえ、BCPは定期的に更新します。起業を目指す方は、事業計画段階からBCPを組み込んでおくことで、リスクに強い事業運営が可能になります。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。