指定居宅介護における秘密保持義務をわかりやすく解説
記事の概要:
指定居宅介護などの障害福祉サービスでは、利用者やその家族のプライバシーを守る「秘密保持義務」(守秘義務)が法律で定められています。従業員や管理者は業務上知り得た個人情報を漏らしてはいけないことはもちろん、退職後も秘密を守らせる対策や、他の事業所と情報共有する際の事前同意が必要です。本記事では、厚生労働省の基準第36条「秘密保持等」のポイントを、やさしくシンプルに解説します。
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秘密保持義務とは?
障害福祉サービス事業における秘密保持義務とは、サービス利用者やその家族の個人情報やプライバシーに関する情報(=「秘密」)を適切に管理し、第三者に漏らさない責任のことです。利用者は支援を受ける中で、プライベートな情報を提供します。それらを守ることは事業者の信頼の基本であり、法律(厚生労働省の定める基準第36条)でも厳しく義務付けられています。事業スタッフはもちろん経営者にとっても、守秘義務の理解と徹底は欠かせません。
第36条第1項:従業員・管理者は利用者の秘密を守る
基準第36条の第1項では、指定居宅介護事業所の従業者および管理者に対し、「業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を、正当な理由なく漏らしてはならない」と規定されています 。簡単に言えば、職員や管理者は仕事で知った利用者の個人情報を外部に漏らさない義務があるということです。例えば、利用者の障害の状態や家族構成、生活上の困りごとなど、業務中に知った情報を無断で他人に話したりSNSに書いたりすることは絶対にNGです。これは利用者のプライバシー保護はもちろん、信頼関係を守るためにも非常に重要です。
※「正当な理由なく」とは、法律に基づく開示要求など正当な理由がない限りという意味です。基本的にはどんな場合でも秘密は守ると考えておきましょう。
第36条第2項:退職後も秘密を守らせるための措置
第36条第2項では、事業者(会社や経営者)の責任として「以前その事業所で働いていた従業員や管理者が、退職後も業務で知った利用者や家族の秘密を漏らさないよう必要な措置を講じなければならない」と定めています。つまり、退職した元職員にも秘密保持を守らせるための対策を取る義務が事業者にあるのです。
具体的には、雇用契約時に守秘義務契約を結ぶなどの方法があります。在職中だけでなく退職後も秘密を守ることを約束させる誓約書を書いてもらう事業所も多いです。契約書に「退職後も知り得た情報を漏らさない」旨を盛り込み、違反時のペナルティ(例えば違約金)を定めておくケースもあります。このように従業員が辞めた後まで見据えて個人情報保護の仕組みを作っておくことが、運営上のリスク管理としても求められています。
第36条第3項:情報共有には利用者の事前同意が必要
第36条第3項では、利用者の個人情報を他の事業所と共有する場合のルールが示されています。他の指定障害福祉サービス事業者(例えば他の居宅介護事業所や短期入所、就労支援事業所など)と情報をやり取りする際には、事前に文書で利用者または家族の同意を得なければならないと規定されています。つまり、利用者情報を第三者に提供する前に必ず本人の許可を取る必要があるということです。
ただし、この同意は毎回個別にもらう必要はありません。サービス開始時に包括的な同意を取っておけば足りるとされています。例えば、契約時の重要事項説明や契約書の中で「サービス提供にあたり、必要に応じて他の関係事業所と情報共有を行います。その際、利用者およびご家族の個人情報を適切に扱い、関係者以外には提供しません」等の文言を入れ、包括的(ひとまとめ)の同意を署名してもらう方法です。こうしておけば、いざ他機関と連携して支援する場合にその都度同意書をもらう手間を省けます。
注意: 包括的同意を得ていても、利用者や家族には「どういう情報を誰と共有するのか」をしっかり説明し、納得してもらうことが大切です。また、必要以上の個人情報は共有しないなど、個人情報保護法の観点からも慎重に取り扱いましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者情報の厳重管理: 利用者やご家族の個人情報・秘密は漏えいしないよう厳重に管理します。スタッフには在職中はもちろん、退職後も情報を口外しないよう教育しましょう。
- 守秘義務契約の徹底: 職員を雇用する際には、守秘義務に関する契約や誓約書を取り交わします。契約書に退職後も秘密を守る旨を明記し、必要に応じて違反時のペナルティ規定も検討します。
- 情報共有は事前同意を取得: 他の事業所や関係機関と利用者の情報を共有する場合、事前に文書で同意をもらうことが必須です。契約時に包括的同意を得ておくとスムーズですが、同意内容は利用者にもわかりやすく説明しましょう。
【免責事項】
