スキップしてメイン コンテンツに移動

独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第三(居重同行) 3 運営に関する基準 (28)利益供与等の禁止

「利益供与等の禁止」(基準第38条)とは?


記事の概要:
本記事では、障害福祉サービスの運営に関わる重要なルールである「利益供与等の禁止」について、基準省令第38条の内容をやさしくシンプルに解説します。利用者の紹介に関する禁止事項を正しく理解することは、適正なサービス提供のために欠かせません。

▶︎ 居宅介護 関連記事まとめページはこちら

利益供与とは何なのか?

まず、『利益供与等の禁止』という言葉を噛み砕いてみましょう。これは法律上、障害福祉サービス事業者が「紹介」の見返りにお金や物品をあげたりもらったりすることを禁止する決まりです。難しい表現ですが、簡単にいえば「紹介料の禁止」です。たとえば、あなたが障害福祉サービス事業所の経営者だとして、誰かが利用者さんを紹介してくれたとします。その紹介のお礼に金銭や品物を渡すことは禁止されています。同様に、逆の立場で、利用者さんを他の事業所に紹介する見返りに謝礼を受け取ることも禁止です。

では、「誰から誰への紹介」が該当するのでしょうか。ここでいう「紹介」とは、サービスを利用したい障害者やその家族を誰かが事業者に紹介する場面を指します。その「誰か」には、障害者相談支援専門員(一般相談支援事業者・特定相談支援事業者)や他の障害福祉サービス事業者、その従業者だけでなく、障害福祉サービス事業者以外の人(知人・友人、病院の職員、学校の先生など)も含まれます。要するに、紹介者が業界の人でも第三者でも関係なく、紹介のお礼として金品を提供すること自体がNGということです。厚生労働省の見解でも、指定障害福祉サービス事業者がサービス利用希望者を紹介した者(※事業者でない一般の人を含む)に金品を渡す行為は基準第38条違反にあたると明言されています。

なぜこのようなルールがあるのか?

厚生労働省は、この規定は障害福祉サービス事業者の紹介や利用者のサービス選択が公正中立に行われるためのものだと説明しています。本来、障害のある方はサービスの内容や質をよく吟味し、自分の意思で利用するサービスを選ぶべきです。しかし、もしお金や景品欲しさに事業所を選ぶようなことがあれば、利用者本位の意思決定が歪められてしまいます。こうした理由から、金銭による誘因行為は禁止され、サービスの紹介・選択はあくまで利用者のニーズとサービスの質に基づいて行われるよう求められているのです。

「利益供与等の禁止」は、全ての指定障害福祉サービス事業者に共通して課されているルールです。居宅介護事業者であれ就労支援事業所であれ、例外ではありません。もしこの禁止事項に違反するとどうなるでしょうか?基準違反は行政からの指導や、悪質な場合は指定取消し(指定事業者としての資格喪失)等の処分の対象となり得ます。つまり、利益供与の発覚は事業の継続自体が危うくなる重大なリスクなのです。実際に過去、利用者獲得のため違法な金品提供を行い問題視されたケースもあるとされます。事業者として、絶対に踏み外してはならないラインだと認識しましょう。

「利益供与」に当たる可能性のある具体例:

  • 利用者が友人を紹介してくれた際に、その紹介してくれた利用者や新たに利用を開始した方に商品券や金品を渡す。
  • 新規にサービス利用の契約を結んだ利用者に対し、「契約祝い」と称して現金を支給する。
  • サービスを利用して就職できた利用者に、「就職お祝い金」として金銭を渡す。
  • 他の事業所や相談支援事業者から利用者を紹介してもらい、その紹介元に謝礼を支払う。または逆に、自事業所の利用者を他所へ紹介した見返りに金品を受け取る。
  • 利用者に対し、通所日数や利用実績に応じてボーナスや皆勤賞の賞金を与える。

これらはいずれも、サービスの利用や紹介に伴って金銭等の利益を提供する誘因行為であり、基準第38条で禁止されている典型的な例です。事業所の好意やサービス独自の工夫のつもりでも、ルール上はアウトになってしまうことを覚えておきましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 紹介料や謝礼の提供は厳禁: 利用者を紹介してくれた第三者にお礼として金銭やギフトを渡す行為は禁止されています。これはいわゆる「キックバック(見返り払い)」に当たり、障害福祉サービス業界では許されない行為です。起業希望者の方も、集客のために安易に紹介謝礼を考えてはいけません。
  • 利用者への金銭的インセンティブもNG: 利用契約の締結や継続利用を促す目的で、利用者本人に現金や物品を渡すことも避けましょう。例えば契約時のプレゼントや皆勤賞・就職祝い金の提供などは、善意であっても利益供与と見なされる可能性があります。サービスの魅力は金品ではなく支援内容で勝負すべきです。
  • 違反すれば事業継続に支障も: 「利益供与等の禁止」は指定基準上の義務です。違反が発覚すると行政から厳重な指導を受け、最悪の場合は指定取消し(事業所の営業停止・閉鎖に直結)といった重いペナルティを招きかねません。新しく障害福祉サービス事業を始める際も、このルール違反は命取りになり得ます。事業者は常に法令を遵守し、適正な運営を心掛ける必要があります。
  • 健全な集客とサービス品質向上に注力: 利用者を集めたい気持ちは誰しもありますが、金品で利用者を釣るようなやり方では信頼を得られません。代わりに、サービスの質を高めたり、丁寧な情報提供(ホームページやパンフレットでサービス内容を分かりやすく伝える等)を行ったりする正攻法で勝負しましょう。利用者から信頼され選ばれる事業所になることが、結果的に安定した経営につながります。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。