虐待防止委員会の役割・設置・運営をわかりやすく解説(基準第40条の2第1項)
記事の概要:
障害のある人が安心してサービスを利用できるよう、障害福祉サービス事業者には「虐待防止委員会」を設置し運営することが義務付けられています。しかし、「虐待防止委員会って何をするの?どう運営すればいいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。この記事では、省令基準第40条の2第1項(虐待の防止)の内容に基づき、虐待防止委員会の役割や設置・運営のポイントをやさしくシンプルに解説します。
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虐待防止委員会とは?その役割
「虐待防止委員会」とは、事業所内で利用者虐待を未然に防ぎ、万一発生した場合も再発を防止するために設置される委員会です。この委員会では、職員が集まって虐待防止の取り組みを話し合い、対策を検討します。その主な役割(機能)は3つあります:
- 虐待防止のための計画づくり(研修計画や職員の労働環境を見直し、虐待防止の指針を作成する)
- 虐待防止のチェックとモニタリング(虐待が起こりやすい職場環境がないか定期的に点検する)
- 虐待発生後の検証と再発防止策の検討(万一虐待やその疑いが起これば原因を調べ、再発防止策を考えて実行する)
これら3つの取り組みにより、利用者への虐待を防ぎ、安心・安全なサービス提供につなげます。
委員会のメンバー構成と設置のポイント
虐待防止委員会を設置する際は、誰をメンバーにして、どう組織するかがポイントです。省令の解釈では、委員会は管理者を含む幅広い職種の職員で構成し、各メンバーの責任や役割分担を明確に決めておく必要があります。さらに、専任の虐待防止担当者(各事業所ごとに必ず置く職員)を決めておくことも必要があります。この担当者が委員会の中心となり、日常的な虐待防止策の推進役を担います。
メンバーには可能であれば利用者本人や家族、虐待防止の専門知識を持つ第三者(外部有識者)も加えることが望ましいとされています。ただし、小規模な事業所などの場合は、法人単位で委員会を設置しても構いません。複数事業所がある法人では、一つの委員会でまとめて検討しても構いません。
委員会運営のポイント(開催頻度・情報共有等)
委員会をどのように運営するかも重要です。まず、開催頻度については少なくとも年1回は開催することが必要です。
委員の人数については、事業所の管理者(管理責任者)や虐待防止担当者が参加していれば、最低人数に決まりはありません。要は必要なキーパーソンが揃っていれば、小規模でも委員会を開けます。話し合った結果や決定事項は全ての職員に周知徹底することが義務付けられています。議論の結果が現場の職員に伝わらなければ意味がありません。議事録を作成し、研修やミーティングで共有しましょう。
また、既に事業所で身体拘束等適正化検討委員会(身体拘束の適正な利用を検討する委員会)など他の委員会を設置している場合は、虐待防止委員会と一体的に開催・運営することも可能です。関連するメンバーが重なる場合、会議を統合することで効率的に運営できます。
最後に、この委員会運営の目的を忘れないでください。それは事業所全体で情報を共有し、虐待防止策を講じて虐待の未然防止と再発防止につなげることです。決して「犯人探し」や職員を罰する場ではありません。前向きに学び改善する場として、委員会を活用することが大切です。
虐待防止のための記録・報告・検証サイクル
虐待防止委員会では、ただ会議を開いて話し合うだけでなく、実際に発生した事案への対応や日常的な点検活動も担います。そのためには、委員会としての取り組み内容を適切に記録し、最低でも5年間は保存しておく必要があります。これは、検証や監査があった場合の裏付け資料にもなる重要なものです。
具体的な対応の流れは、以下のような7ステップです:
この一連の流れをしっかりと実施することで、「報告が上がらない」「対策が形式的に終わっている」といった事業所内の形骸化を防ぐことができます。
また、職員にとって安心して報告できる環境を整えることも重要です。「報告=処罰」ではなく、「報告=改善の第一歩」と捉え、委員会が支援的な立場で運営されることが、制度としての機能を保つうえで大切です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 虐待防止委員会の設置は義務! 事業所ごと(または法人単位)に委員会を立ち上げ、最低でも年1回は開催して対策を検討し、その内容を必ず職員全員に共有しましょう。
- 委員会メンバーには管理者や虐待防止担当者など重要な職員を含め、必要に応じて利用者や家族、外部の専門家にも参加してもらうと効果的です。
- 目的はあくまで虐待を防ぐこと。 委員会での検討事項は職員への罰則の材料ではなく、サービスの質を向上させ利用者の安全を守るためのものです。建設的な話し合いと情報共有で組織全体の意識を高めてください。
【免責事項】
