介護給付費申請の援助・身分証携行・サービス提供記録をわかりやすく解説
記事の概要:
本記事では、(1) 介護給付費の支給申請に関する援助(基準第15条)、(2) 身分を証明する書類の携行義務(基準第18条)、(3) サービス提供の記録義務(基準第19条)の3つの条文に注目します。これらは一見細かな規定ですが、利用者の安心確保やサービス継続に欠かせない重要事項です。
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介護給付費の支給申請に係る援助(基準第15条)
介護給付費とは、障害のある方が居宅介護などの福祉サービスを利用する際、市区町村から支給される給付金のことです。サービスを利用するには、まず自治体から支給決定(=サービス利用の認定)を受け、受給者証が発行される必要があります。基準第15条は、サービス事業者が利用希望者の給付申請をサポートする義務を定めています。
- 新規利用者への申請支援: もし事業者にサービス利用の申し込みをした人が、まだ自治体から支給決定を受けていない場合、事業者はその人の希望をよく聞いた上で、速やかに介護給付費の支給申請ができるよう必要な手助けをしなければなりません。具体的には、市町村窓口への申請書類の準備方法を教える、申請手続きを代わりにサポートする、相談支援専門員や自治体と連絡を取る、といった支援が考えられます。これにより、サービスを受けたい人が制度の手続きを知らないために利用できないといった事態を防ぎます。
- 利用継続のための更新支援: また現在サービスを利用中の人でも、受給者証の有効期限が近づいている場合は注意が必要です。利用者がサービス利用を継続希望している場合、市町村の標準的な処理期間を考慮し、期限が切れる前に余裕をもって更新申請できるよう援助することを求めています。例えば受給者証の有効期限が3月末なら、遅くとも数週間~1ヶ月前には更新手続きを案内し、利用者が切れ目なくサービスを受けられるよう配慮します。事業者から積極的に「そろそろ更新時期ですよ」と声かけ(申請勧奨)することが大切です。
身分を証する書類の携行(基準第18条)
訪問系の障害福祉サービスでは、スタッフが利用者の自宅等に伺って介助などを行います。基準第18条は、従業員が自分の所属と身分を証明できる書類を携帯し、必要に応じて提示する義務を定めています。
- 「身分を証する書類」とは? 少し固い表現ですが、簡単に言えば職員証や名札、身分証明書のことです。事業所の名前と職員本人の氏名が書かれており、一目で「どの事業所の誰か」が分かるものを指します。厚労省の通知では、この証明書に事業所名と従業者の氏名を記載し、できれば顔写真や職種(資格)も載せるのが望ましいとされています。事業者は独自にこうした身分証や名札を作成して職員に持たせましょう。
- 提示が必要な場面: 事業所は職員に対し、「初回のサービス訪問時や、利用者・ご家族に求められたときは必ず身分証を提示する」よう指導しなければなりません。初めて会う利用者にとって、見知らぬ人が家に来てケアを行うのは不安なものです。名札や身分証を見せて「○○事業所の△△です」と名乗ることで、利用者や家族に安心感を与えることができます。逆に身分証の提示がないと、「この人は一体誰?」と不信感を持たれ、サービス利用に支障が出る恐れもあります。
サービスの提供の記録(基準第19条)
サービス提供の内容を記録に残すことは法令上の義務です。基準第19条では、障害福祉サービス事業者がサービス実施ごとに記録を作成し、利用者から内容の確認を受けることを定めています。これはサービスの透明性を保ち、利用者と事業者双方が利用状況を正しく把握するための規定です。
- 提供の都度、記録を作成: 第19条第1項により、サービスを提供した際にはその都度、以下のような項目を記録します。
- 提供日(サービスを行った日付)
- 提供したサービスの具体的内容(例:身体介護○○、家事援助○○など)
- サービスに要した時間数(実績時間)
- 利用者負担額(自己負担額)など、利用者に伝えるべき必要事項
重要なのは「後日まとめてではなく、その都度記録する」ことです。忙しいからとメモをため込んで後でまとめ書き…は認められません。毎回しっかり書いておけば、万一サービス内容に関する食い違いがあっても早期に発見できますし、利用者も自分が受けた支援をその場で確認できます。
- 利用者等による内容確認: また、作成した記録について利用者(または代理の家族等)から確認を受けなければならないと規定されています。一般的な現場対応としては、記録用紙に利用者またはご家族のサインや押印をもらう方法がとられています。例えば居宅介護の現場では「サービス提供記録票」を用意し、サービス終了時に内容を記入して利用者に見せ、問題がなければ署名/印をいただく流れが標準です。「確かにこの内容でサービスを提供しました」という双方の確認が残ることで、後日のトラブル防止や不正請求の防止につながります。
サービス提供記録は行政への報酬請求の根拠にもなる重要書類です。記録漏れや利用者確認の未実施は、最悪の場合報酬の返還や事業停止などペナルティにつながる可能性もあります。事業者は記録様式(紙や電子システム)を整備し、スタッフに記録・署名のルールを周知徹底しましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用申請の手助けは事業者の責務: サービス利用希望者が受給資格を持っていない場合は申請支援を迅速に行う。また利用中の方には更新手続きを前もって案内し、サービスが途切れないよう配慮する。
- 職員には身分証を携帯・提示させる: 職員証や名札を作成して常時携行させ、初回訪問時や求めがあれば必ず提示するよう指導する。利用者に安心感を与えるための基本ルールとして徹底。
- サービス提供ごとに記録を残す: 日付・内容・時間・利用者負担額等をその場で記録し、利用者にも確認してもらう。記録用紙への署名/押印をもらう運用で利用者の確認証跡を残す。記録漏れの無いようスタッフに教育し、記録は最低5年間保管する(法定保存期間に準拠)。
【免責事項】
