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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第三(居重同行) 1 人員に関する基準 (8)人員の特例要件について ①

宅介護・重度訪問介護など複数サービス併設時の人員基準特例を解説


記事の概要:
障害福祉サービスの複数併設における人員基準の特例について、厚生労働省の通知文書に示された内容をやさしく解説します。居宅介護や重度訪問介護、同行援護、行動援護といった訪問系サービスを一緒に運営する場合、通常の人員配置基準に対して特別な緩和ルール(人員の特例要件)が設けられています。この記事では、その制度の意図や実務上のポイントを、やさしくシンプルに解説します。

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人員の特例要件とは?

「人員の特例要件」とは、障害福祉サービスの指定基準における人員配置の特別ルールのことです。通常、障害福祉サービス事業所(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護など)ごとに、管理者・サービス提供責任者(サービス提供責任者は「サ責(させき)」とも呼ばれます)・従業者(ホームヘルパー等)を一定数配置しなければなりません。例えば居宅介護事業所なら、管理者を常勤で1名配置し、サービス提供責任者は利用者へのサービス提供時間に応じて1名以上配置、ヘルパーも必要数配置する、といった基準があります。

しかし、一つの事業所が複数のサービスを併せて提供する場合、すべてのサービスごとに個別に人員をそろえるのは非効率です。そこで厚労省の通知では、「人員の特例要件」として人員を兼務・共有できる緩和措置が示されています。簡単に言えば、複数のサービスを一体的に運営するときは、通常より少ない人数でも基準を満たせる場合があるということです。

特例が適用されるサービスの組み合わせ

この特例は、訪問系の障害福祉サービス同士を併設するときに適用されます。具体的には居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護の4つのサービスが対象です。これらはいずれも利用者の自宅や外出先で支援する「ホームヘルプ系」のサービスです。これらを組み合わせて提供する場合に人員特例が認められています。

特例の具体的な内容

では、複数サービスを一体的に運営する場合、具体的にどのような人員配置の特例(例外ルール)があるのでしょうか。厚労省の通知文書に沿って、従業者(ヘルパー)、サービス提供責任者(サ責)、管理者の3つの役割ごとに解説します。

従業者(ヘルパー)の配置特例

通常、事業所ごとにヘルパーを一定数以上配置する必要があります。しかし特例では、一つの事業所分のヘルパー数で足りるとされています 。つまり、複数サービスを併設していても、ヘルパーは合計で最低基準を満たしていればOKということです。

例えば、居宅介護事業所単独ならヘルパー○人以上必要という基準があるとします。居宅介護と重度訪問介護を一緒に行う場合、それぞれ別々に○人ずつ用意する必要はなく、両サービス合わせて○人いれば基準クリアです。また、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護の3つ全てを一括で提供する場合でも、必要なヘルパー数は1事業所分で足りるとされています。これは、人材を有効に活用しやすくするための措置です。

もちろん、実際には提供するサービスの量に応じて十分な数のヘルパーを確保することが大切ですが、制度上は重複して人員を揃えなくてもよいため、小規模な事業者にとって人件費や採用の負担が軽減されます。

サービス提供責任者(サ責)の配置特例

通常、サービス提供責任者(サ責)はサービスごとに決められた人数を配置しなければなりません。しかし、ある事業所が居宅介護と重度訪問介護を一緒に提供している場合などでは、サ責はそれら全体の事業規模に応じて一人以上で足りるという特例が認められています。

ただし、この特例には条件があります。重度訪問介護を提供している場合、配置すべきサービス提供責任者の人数について通知原文では「a」と「b」の2つの基準が示されています。わかりやすく言うと、次のどちらかの基準を満たす人数のサ責を置けばよいことになっています。

  • 基準a(通知の「a」に対応)居宅介護の人員配置基準(通知の(2)で定められた基準)に基づいて算出した人数。
    (解説:居宅介護ではサービス提供時間や従業員数、利用者数に応じてサ責を配置する決まりがあります。例えば「利用者40人ごとにサ責1人」などの目安です。)複数のサービス全体をまとめて、この居宅介護の基準で必要なサ責の人数を計算します。

  • 基準b(通知の「b」に対応)居宅介護等と重度訪問介護それぞれの基準(通知の(5)で定められた基準)で別々に計算し、その人数を合算したもの。
    (解説:基準bではサービスごとに必要なサ責数を計算します。居宅介護や同行援護・行動援護の部分は基準aと同じ居宅介護のルールで算出します。一方、重度訪問介護の部分は重度訪問介護専用のルール(例:「利用者10人につきサ責1人」など)で算出します。そして、それぞれで求めた人数を合計します。)

つまり、簡単に言えば 「全体をまとめて計算する方法(a)」「サービスごとに計算して足し合わせる方法(b)」 のどちらでもOKということです。重度訪問介護を含む併設事業所では、このaかbのどちらかで算出された人数以上のサービス提供責任者を配置すれば、人員配置基準を満たすことになります。

管理者の配置特例

事業所ごとに置かなければならない管理者(管理責任者)についても、特例が認められています。それは、一人の管理者が複数サービス事業所の管理業務を兼務できるという点です。通常、居宅介護事業所ならその事業所専任の管理者を1名配置しますが、例えば同じ場所で重度訪問介護や同行援護を行っている場合、その管理者が他のサービスの管理もまとめて行って構わないとされています。

要するに、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護を一体的に運営する場合は管理者を一人にまとめられるということです。もちろん、兼務によって業務に支障が出ないようにする必要はありますが、別々の管理者を配置するよりもスムーズに運営できるメリットがあります。


事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 複数サービス併設時の人員基準緩和: 居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護を複数組み合わせて運営する場合、ヘルパーやサ責、管理者を兼務・共有できる特例があります。サービスごとに別々のスタッフを用意せずに済むため、人員計画を立てる際はこの特例を活用しましょう。特に小規模事業や新規事業立ち上げ時には大きな助けとなります。
  • 人員特例の適用条件: 特例が適用されるのは訪問系障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護)間の組み合わせです。同一事業所がこれら複数の指定を受けている場合に限られるため、まずは各サービスの指定申請を適切に行う必要があります。介護保険の訪問介護との併設特例もありますが、それぞれ指定権者(都道府県や政令市等)への確認を忘れないようにしてください。
  • サービスの質と法令遵守: 人員特例によって最小限の人数で運営できるとはいえ、サービスの質を維持することが最優先です。サ責や管理者の兼務による負担が過大にならないよう調整し、スタッフの研修や資格要件も各サービスで満たしていることを確認しましょう。特例の解釈は自治体によって微妙に異なる場合もありますので、運営指導などに備えて根拠となる通知文書を把握し、疑問点は行政に相談する姿勢が重要です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。