障害福祉サービスのサービス提供責任者の配置基準をわかりやすく解説【常勤換算・利用者数の数え方 編】
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サービス提供責任者(サ責)とは、障害福祉サービス(特に居宅介護や重度訪問介護などの訪問系サービス)で、サービスの計画・調整を担う重要なスタッフです。法律(基準第5条第2項)で定められた人員配置基準により、事業所は一定の利用者数ごとに所定の人数のサ責を配置しなければなりません。本記事では、このサ責の配置基準について、やさしくシンプルに解説します。利用者数の数え方(過去3か月の平均や新規開業時の見込み数の扱い、通院介助のみ利用の数え方)、および常勤換算方法による非常勤スタッフの活用など、押さえておくべきポイントを分かりやすくまとめます。
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サービス提供責任者の人員配置基準の基本ルール
訪問系障害福祉サービス事業では、サービス提供責任者(サ責)を最低1名以上配置する必要があります。特に利用者数に着目すると、利用者が40人ごと(40人を超える端数があればもう1人)に常勤1人以上のサ責を配置することが基準です。例えば、利用者が1~40人ならサ責1人、41~80人ならサ責2人、といった具合です。なお、一定の条件(特例要件)をすべて満たす場合は「50人につき1人」に緩和することも可能です。ただし基本は40人基準と覚えておきましょう。
利用者数は「過去3か月の平均」で計算
上記の「利用者◯◯人につきサ責1人」という基準で用いる利用者数は、直近3か月間の平均人数で計算します。各月の実際の利用者数を合計し、それを3で割って平均を出す方法です 。例えば、最近3か月の各月の利用者数がそれぞれ45人・50人・55人であれば、合計150人 ÷ 3か月 = 平均50人となります。この平均値をもとに、必要なサービス提供責任者の人数を判断します。
- 計算例:3月間の利用者数が45人・50人・55人の場合 → 平均50人 ⇒ サ責が2人必要(40人を超えているため)。
このように平均を使うことで、一時的な利用者増減に左右されず安定的に人員配置を考えられます。ただし、事業所は毎月この平均を更新し、人員基準を満たしているか確認することが求められます (訪問介護・介護予防訪問介護 人員配置基準に係る改正)。基準に足りない状態が続けば運営上の指導や処分対象となるため、利用者数が増えてきたら早めにサ責を追加配置できるよう計画しておきましょう。
新規事業所は「見込み利用者数」で算定
では、開業したての新規事業所では利用者実績がないため、サ責の配置人数はどう考えるのでしょうか? その場合は、適切な方法で見込んだ利用者数(推定値)を使います。例えば、オープン時に利用見込みが20人程度であればサ責1人で足りますが、50人程度を見込んでいるならサ責2人を用意する計画が必要です。事前に地域のニーズ調査や利用契約の予定状況から利用者見込み数を算出し、それに応じてサ責を配置しましょう。開業直後は人員に余裕をもたせ、利用者が増えても基準を満たせるようにしておくことが安全策です。
非常勤スタッフの活用:常勤換算方法とは?
常勤換算方法とは、パートタイム等の非常勤スタッフの勤務時間を合計し、フルタイムスタッフ何人分に相当するかで人数をカウントする方法です。サービス提供責任者の配置基準でも、この常勤換算を使って非常勤の職員で必要人数をまかなうことが可能とされています 。簡単に言えば、本来「常勤(フルタイム)のサービス提供責任者」を配置すべきところを、複数の非常勤サ責の組み合わせで代替できるということです。
例えば「サ責2人以上」が必要な場合、1人は常勤のサ責を置き、残り1人分を非常勤サ責2名(それぞれフルタイムの半分の時間勤務)で補う、といった柔軟な配置ができます。ただし注意点として、常勤換算に充てる非常勤サ責一人ひとりが 常勤の勤務時間の1/2以上 働いていなければ、「0.5人分」として数えることはできません 。極端に勤務時間の短い非常勤では人員基準上の戦力には数えられないので気を付けましょう。
また、人員基準上は非常勤の組み合わせで要件を満たせる場合でも、実際の業務が回るかを考慮することが大切です。常勤サ責が不在の時間帯が生じないようにシフトを組む、引き継ぎを円滑にするなど、サービスの質を維持できる配置にすることが望まれます。
「通院介助のみ」利用者の数え方
障害福祉の居宅介護サービスでは、買い物や通院の付き添いなど比較的短時間の支援だけを利用するケースもあります。その中で「通院等介助(付き添い乗車など)サービスのみ」を利用した人については、利用者数を特別な計算で数えます。具体的には、その月に通院介助サービスのみ利用した人は「0.1人」としてカウントします。これは、ごく短時間の利用者が多数いる場合に、他の長時間利用者と同等に数えると人員配置が過剰になるための措置です。
例えば、ある月に通院介助だけを1回利用した利用者Aさんは「0.1人」と数え、他のサービス利用者Bさん(生活介護なども利用)は「1人」と数えます。仮に通院介助のみ利用者が10人いれば0.1人×10人=1人として計算します。このルールにより、短時間利用者の影響で必要サ責数が不必要に増えないよう配慮されています。ただし、この計算はあくまで配置基準上の数え方であり、現場では短時間利用であっても適切なサービス提供と連絡調整が必要です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 40人ルールの遵守:訪問系障害福祉サービスでは利用者40人につきサ責1人以上の配置が必須です。利用者が増えて40人を超えるタイミングで早めに追加のサービス提供責任者を配置しましょう。特例で50人に1人とする場合も厳しい要件があります。中小事業者はまず40人基準を確実に満たすことが大切です。
- 利用者数の定期的な確認:毎月、実利用者数と直近3か月平均を計算し、必要なサービス提供責任者数をチェックする習慣をつけましょう。算出結果と現在の配置が合っているかを記録・保存し、人員基準を常に満たしている状態を維持します。利用者数の増減を把握して早めに人員計画を立てることが経営上も重要です。
- 常勤換算(非常勤の活用)の活用と限界:人員配置基準上は、非常勤スタッフの組み合わせでサ責配置人数を満たすことも可能です。しかし最低でも1人は常勤サ責を置くことが望ましいです。非常勤サ責を活用する場合でも、各人の勤務時間が常勤の半分以上になるよう調整し、不在時間帯が生じないようにしましょう 。「常勤換算できるから大丈夫」と油断せず、現場のサービス品質にも目を配りながら人員配置を行ってください。
- 基準違反のリスク:人員配置基準を満たせない状態は重大な違反となります。一時的な不足であっても放置すると指定取消など厳しい処分につながる恐れがあります。障害福祉サービス事業を起業・運営する方は、サ責の配置基準を経営の最優先事項の一つと考え、計画的な人材確保に努めましょう。必要に応じて都道府県等の担当部署に相談し、適切な人員体制を整えることが事業継続の鍵です。
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