「指定療養介護」の運営規程とは?基準第67条に基づく内容をやさしく解説
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指定療養介護事業所(重度の障害があり医療的ケアが必要な方が入所する障害福祉サービスの施設)では、必ず「運営規程」というルールブックを作成しなければなりません。運営規程とは、その施設をどのように運営するかを定めたもので、利用者さんに適切なサービスを提供し、事業所を適正に運営するための十項目の約束事です。たとえば「どんなサービスを提供するの?」「職員は何人いるの?」「非常時の対応は?」といった内容が網羅されています。
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第1号:事業の目的・運営方針
第1号では、事業所が提供する指定療養介護サービスの目的や運営方針を定めます。簡単に言うと、「どんな考え方でサービスを提供する施設なのか」を示す部分です。例えば「利用者本位(利用者の尊厳と意思を尊重)のサービス提供を行う」「地域や家族との結びつきを大切にする」といった理念や、事業運営上の基本的な方針を書きます。これは事業所の目指す姿やサービスの理念を利用者や職員にも明らかにするための項目です。難しい言葉で書く必要はなく、誰が読んでも分かるように簡潔にまとめることが大切です。
第2号:従業者の職種・員数および職務内容
第2号では、その事業所に配置する職員(従業者)の種類、人数、それぞれの役割について定めます。指定療養介護では、施設長(管理者)やサービス管理責任者、看護師、介護士(生活支援員)など様々なスタッフが働きます。ここでは「どの職種を何人配置するか」「それぞれどんな仕事を担当するか」を明示します。例えば「看護職員○名(利用者◯名につき1名配置)」「生活支援員○名(看護職員と協力して日常生活上の介護を担当)」などです。職員体制を書くことで、利用者さんやその家族が支援体制の全体像を把握でき、また事業所自身も必要な人員を計画的に確保する指針となります。
第3号:利用定員
第3号は利用定員、つまり「その事業所で同時にサービスを提供できる利用者の上限人数」です。指定療養介護の場合、利用定員はその事業所の専用病室のベッド数と同じ数にする決まりです。たとえばベッドが10床あれば利用定員は10名となります。また、1つの施設内に複数の療養介護ユニット(病棟のような単位)がある場合は、ユニットごとに利用定員を定める必要があります。定員を決めることで「何人まで受け入れ可能か」が明確になり、安全で適切なサービス提供につながります。定員以上の受け入れは基準違反となるため(定員遵守は運営上の重要ポイントです)、事業者は定員管理を徹底しましょう。
第4号:サービス内容および利用者から受け取る費用の種類・金額
第4号では、事業所が提供する指定療養介護の具体的なサービス内容と、利用者から受領することになる費用の種類およびその額を定めます。サービス内容とは、簡単に言えば「どんなお世話や支援をするのか」です。例えば、食事や入浴など日常生活上の介護、機能訓練(リハビリ)、健康管理、さらには年間行事・レクリエーション活動や日課(1日の過ごし方)なども含めて記載します。一方、利用者から受け取る費用とは、介護給付の自己負担以外に利用者が負担することが認められている費用のことです。具体的には、食費や日用品費といった日常生活に必要な実費負担が該当します(法律上、自治体から給付を受けるサービス部分以外で、利用者に負担してもらう費用の種類と上限が決められています)。運営規程には、こうした利用者負担となる費用項目と金額(例えば「食事代1食○○円」など)を明記します。これによって利用者は事前に料金を把握でき、トラブル防止につながります。
第5号:サービス利用時の留意事項
第5号では、サービスを利用するにあたっての留意事項、すなわち利用者側が守るべきルールや注意点を定めます。例えば、施設で生活する上での決まりごとやマナー、利用に際して注意してほしいことなどです。入所中の生活上のルール(消灯時間や喫煙場所の制限など)、施設内設備の利用方法や注意事項(ナースコールの使い方、防災設備の取扱い注意など)が典型的な内容です。また外出・外泊するときの手続き、面会の方法、貴重品の管理についての決まりなども含まれるでしょう。要するに、利用者が安全かつ円滑に施設サービスを利用するための約束事をまとめた項目です。難解な表現は避け、「○○するときは職員に知らせてください」「△△は禁止です」のように具体的でわかりやすい言葉で示すことがポイントです。
第6号:緊急時等における対応方法
第7号:非常災害対策
第7号では、地震・火災などの災害や緊急時に備えた具体的な対応計画を定めます。これは利用者の安全を守るために欠かせない項目です。内容としては、災害時の避難経路や連絡体制、役割分担をあらかじめ決めておきます。たとえば「非常口と避難経路の掲示」「避難訓練を年◯回実施」「非常時は施設長が防災責任者となり職員に指示を出す」などです。また医療的ケアが必要な利用者が多い施設ですので、停電時の医療機器対応や、緊急搬送の受け入れ先医療機関の連絡先リストといった事項も盛り込まれるでしょう。厚労省の基準でも、非常災害対策に関する具体的計画を運営規程に定めるよう求めています。万一の事態への備えを示すことで、利用者・家族に安心感を与えるとともに、職員も訓練に沿って落ち着いて対応できるようになります。
第8号:事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類
第8号では、事業所が対象とする障害の種類について、特に定めを設けた場合には、その種類を運営規程に明記する必要があります。たとえば、指定療養介護は重度の障害を持つ方を対象としたサービスですが、事業所によっては知的障害のある方を中心に受け入れる、あるいは肢体不自由の方を主とするなど、対象とする障害種別に特徴を持たせているケースもあります。このような方針を定めている場合には、それを明確に記載することで、利用希望者や家族が「この施設が自分に合っているかどうか」を判断しやすくなります。また、受け入れ対象をあらかじめ限定することは、職員配置や支援体制を特定のニーズに最適化できるという利点もあります。
第9号:虐待の防止のための措置に関する事項
第9号では、利用者への虐待を未然に防ぐため、事業所が講じる措置について、具体的に運営規程に定める必要があります。これは、障害者虐待防止法などに基づく法的な義務であり、どのような施設であっても無関係ではいられない重要な項目です。たとえば、職員に対する虐待防止研修の実施や、日々の業務の中での声かけや接し方への注意喚起、また虐待が疑われる事案が発生した場合の報告・相談体制の整備などが、ここに含まれます。さらに、虐待が発生した際の記録保存や事後の対応方法なども、可能な限り明文化しておくと、現場での混乱を防ぐことができます。多くの自治体では、虐待防止に関する社内マニュアルの整備や、苦情対応と連動した体制の構築が求められており、これを運営規程に反映することは、実地指導や監査の際にも重要な確認ポイントとなります。
第10号:その他運営に関する重要事項
第10号は文字通り「その他運営に関して重要な事項」を定める欄で、上記に当てはまらないけれど事業運営上大切な決まりごとを記載します。厚生労働省の通知では、ここに身体拘束等の緊急やむを得ない対応を行う手続きや苦情解決の体制などを入れておくのが望ましいとされています。身体拘束とは、利用者の安全確保のためにどうしても必要な場合に一時的に体を拘束する対応のことですが、施設が勝手な判断で行うのは許されません。そこで運営規程に「やむを得ず身体拘束等を行う際の手続き(誰の判断で、どう記録し、どう解除するか)」を決めておき、最終手段として慎重に行うことを明文化します。他にも、感染症発生時の対応や、利用者の権利擁護のための取り組み(虐待防止委員の設置や成年後見制度の利用支援等)をここに盛り込む事業所もあります。つまり第10号は、施設運営上知っておいてほしい大事なルールのまとめといえるでしょう。事業者は漏れのないよう自施設に必要な事項を洗い出し、この欄に反映させることが大切です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 運営規程の作成・届出:運営規程は指定療養介護事業所ごとに作成が義務付けられており、指定申請のときに提出する必要があります。新たに障害福祉サービス事業を起業する場合、行政への指定申請書類の中にこの運営規程が含まれます。書類審査でも重要視される部分なので、いい加減な内容では認められません。自治体によっては運営規程のひな形を提供しているところもありますが、テンプレートをそのまま写すのではなく、自事業所の実態に即して作り込むことが求められます。
- 運営指導や監査への備え:事業開始後も、運営規程は常に最新の内容に保つ必要があります。人員やサービス内容を変更したのに運営規程を書き換えていないといったことがないようにしましょう。自治体による運営指導や監査の場では、運営規程に沿った運営ができているか確認されます。緊急時対応や苦情処理の仕組みについても、机上の空論ではなく実際に運用しているか問われます。職員にも運営規程の内容を周知し、非常時対応訓練や苦情対応フローの確認など、規程に書いたことを現場で徹底することが大切です。
- 利用者への情報提供:運営規程は事業所内部の文書ですが、その概要は利用契約前に利用希望者へ説明する義務があります(重要事項説明として交付)。利用者側から見れば、運営規程の内容はサービス選択の重要な判断材料です。そこで、難解な全文を見せる必要はありませんが、重要ポイントを抜粋したパンフレットを用意するなどして、利用希望者やそのご家族にしっかり説明しましょう。「どんなサービスをどんな体制で行い、料金はいくらか」「困ったときの相談先はどこか」など、運営規程に基づく大事な情報を丁寧に伝えることで、信頼関係の構築にもつながります。
