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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第四(療養介護) 3 運営に関する基準 (19) 非常災害対策

害福祉サービスにおける非常災害対策【基準第70条】の解説


記事の概要:
障害福祉サービス事業を運営する上で非常災害対策は欠かせないポイントです。厚生労働省が定める基準第70条(非常災害対策)では、事業者が備えておくべき防災体制について規定されています。本記事ではこの基準の内容をやさしくシンプルにけ解説します。読んだその日から使える防災準備のヒントをお届けします。

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非常災害対策ってなに?

「非常災害対策」とは、地震・火災・台風など非常時の災害に備えるための取り組みのことです。障害のある方が利用する施設では、万が一の災害時にも利用者の命と安全を守れるよう準備しておかなければなりません。たとえば、夜間に火事が起きたらどう避難するのか? 大きな地震が来たら誰が連絡するのか? こうした事態にあわてず対応できるようにするのが非常災害対策です。

いわば、「もしもの時の防災準備」です。日頃から消防訓練をしたり、防災グッズを用意したりするのも非常災害対策の一部です。特に障害福祉サービス事業所では、利用者の中には自力で避難が難しい方もいます。だからこそ事業者がリーダーシップをとって防災準備を進めておくことが求められます。

基準第70条で求められる主な取り組み

厚生労働省の定める基準第70条(障害者総合支援法に基づく人員設備運営基準の第70条)では、障害福祉サービス事業者が講じるべき非常災害対策の内容が具体的に示されています。ざっくり言うと、「設備」「計画」「連絡体制」「周知・訓練」の4つが柱になっています。主なポイントは次のとおりです。

  • 必要な防災設備を設けること – 消火器や火災報知機、非常灯など、災害時に役立つ設備をちゃんと備えることです。例えば消火器はすぐ使える場所にあり定期点検されているか、非常口は塞がれていないかなど、設備面の準備が基本になります。
  • 非常災害に関する具体的な計画を立てること – 火事や地震など災害が起きたときの行動マニュアルを作成します。誰が非常ベルを押すか、誰が利用者を誘導するか、避難経路はどこか、といった手順を決めて文書にまとめます。要は防災計画(非常災害対策計画)を作っておくことです。
  • 緊急時の通報・連絡体制の整備 – 災害が発生した際に、消防署や警察、利用者のご家族、行政など関係機関へ速やかに連絡できる体制を作っておきます。たとえば緊急連絡先リストを用意したり、地域の消防署と日頃から連携しておくことが該当します。
  • 従業者(職員等)への定期的な周知 – 作成した計画や設備の使い方について、定期的にスタッフ全員に知らせて訓練しておくことも義務付けられています。せっかく計画を作っても職員が知らなければ意味がありません。新人研修で防災マニュアルを説明したり、朝礼で避難経路を再確認したりと、継続的に周知徹底することが大切です。
  • 定期的な避難訓練・救出訓練の実施 – 非常災害に備えて、避難や救出などの訓練を定期的に行うことも求められています。訓練を通じて職員は動きを体で覚えられますし、利用者もいざという時パニックになりにくくなります。「お・は・し・も」(押さない・走らない・喋らない・戻らない)など避難時の約束も、訓練で確認できます。

以上のように、第70条ではハード面(設備)とソフト面(計画・訓練)の両方から備えよと定めているのです。例えば「消火器などの設備をちゃんと設置し、避難マニュアルを作成しておきましょう。そして非常時の連絡先も決めて、普段から職員にそれを教えておき、年に何回かは避難訓練をしてくださいね」というイメージです。

非常災害対策の具体例とポイント

非常災害対策を実際に進めるにはどうすればいいでしょうか。ここでは、事業所で取り組むべき具体例をいくつか紹介します。

  • 防災チェックリストを作成: まず、自分の事業所の防災対策状況を確認するところから始めましょう。非常口は確保されているか、消火器は期限内か、避難経路に段差や障害物はないか等、項目をリストアップします。自治体によっては障害福祉サービス事業所向けの防災チェックシートを配布しているところもあります。そうしたものも活用し、足りない部分を洗い出しましょう。
  • 防災マニュアル(非常災害対策計画)の整備: チェックリストで気づいた課題も踏まえつつ、事業所独自の防災マニュアルを作ります。ポイントは「誰が」「いつ」「何をするか」をはっきり書くことです。例えば「○○さん(職員)は119番通報、△△さんは利用者の誘導、□□さんは非常持ち出し品の確保」といった具合に役割分担を決めます。地震・火事・水害など災害の種類ごとに行動手順を書くと尚親切です。また避難場所(近くの学校の校庭など)や避難経路の地図、緊急連絡網(消防・警察・行政窓口や利用者家族の連絡先)も盛り込みます。できあがった計画はファイルにして事業所に備え、職員なら誰でも見られるようにしておきます。
  • 職員への周知徹底: 作った防災マニュアルは全スタッフに周知しましょう。回覧や掲示をしただけでは不十分なので、定期的にミーティングで内容を確認したり、新人が入ったら必ず防災研修を行うなどの運用が必要です。「非常時にはまず○○します」といった基本行動を全員が共通認識として持てるようにします。特に夜勤のスタッフなど少人数で勤務する場合は、少ない人数でも対応できる手順になっているか、実際に声に出して確認してもらうと安心です。
  • 避難訓練の実施: 避難訓練は最低でも年に1回は行いましょう。法律上は「定期的に」としか書かれていませんが、消防法などの関連規定も踏まえると年2回程度(半年に一度)の実施が推奨されます。実際、自治体によっては「消火訓練および避難訓練を年2回以上実施すること」や「夜間想定の訓練を年1回以上行うこと」といった指導を行っています。
  • 定期的な見直し: 作成した計画や訓練の結果は定期的に見直しましょう。訓練をやりっぱなしにせず、終わった後で職員同士「ここはうまくできた」「ここは時間がかかった」など振り返りをします。その上で防災計画をアップデートしていくのが実効性ある非常災害対策です。例えば訓練で非常持ち出し袋の中身が古かったと気づけばリストを更新する、誘導経路に新たな障害物(工事のフェンス等)ができていれば地図を書き換える、といった具合に改善を重ねます。

ハザードごとの追加対策も確認を

基本的な火災・地震対策に加えて、立地に応じた災害対策も忘れないようにしましょう。事業所が川の近くだったり浸水想定区域内にある場合は、水害を想定した避難計画も必要です。土砂災害警戒区域にある施設なら、土砂災害時の避難方法も考えておくべきです。

平成30年の法改正により、洪水や津波などの「避難確保計画」が必要な施設も定められています。市町村の地域防災計画で要配慮者利用施設と位置付けられた事業所(多くの障害者施設が該当します)では、津波・洪水・土砂災害それぞれについて避難確保計画を作成し、市町村に届け出る義務があります。ただし既に非常災害対策計画があれば、必要項目を追加する形でそれを避難確保計画として兼用できます。自分の事業所が該当区域かどうか、自治体のハザードマップや防災担当部署の情報を確認し、必要なら計画を提出しましょう。これは起業を考えている方も物件選びの段階で注意すべきポイントです。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 法令遵守は必須: 非常災害対策は法律で義務づけられたものです。取り組んでいないと指導や監査で指摘を受ける可能性がありますし、何より利用者の安全に関わります。必ず防災計画の策定・訓練実施を行いましょう。
  • 計画はわかりやすく具体的に: 防災計画(非常災害対策計画)は専門用語だらけでは意味がありません。誰が読んでも分かる平易な言葉で、具体的な手順を書きましょう。
  • 設備と備品の定期点検: 消火器や非常灯、非常持ち出し袋(救急箱・飲料水・非常食など)の中身は定期点検を行ってください。消火器は使用期限や設置場所を確認し、非常袋の食料や電池は有効期限が切れていないかチェックします。非常口の表示や誘導灯も正常に点灯するか確認必須です。
  • 訓練の頻度と記録: 避難訓練は年1回以上、できれば年2回を目安に実施しましょう。夜勤がある施設は夜間想定訓練も行います。訓練を実施したら日時・参加者・訓練内容・所要時間・反省点を記録に残します。記録は次回への改善材料にもなりますし、行政から求められたとき提示できるようファイルしておきます。
  • 職員・利用者への周知: 計画や設備だけ整えて満足してはいけません。人への周知と教育こそ肝心です。職員には繰り返し防災手順を教え込みましょう。非常ベル一つ取っても押し方を知らない職員がいないようにします。また利用者にも、避難時の合言葉(例えば「お・は・し・も」のルール:「押さない・はしらない・喋らない・戻らない」)を伝えておくなど、自分でできる範囲で防災知識を持ってもらうとスムーズです。
  • 地域との連携: いざという時は地域との協力が心強いです。日頃から近隣住民や自治会、消防署とコミュニケーションを取っておきましょう。可能なら地域の防災訓練に事業所も参加したり、逆に事業所の訓練に地域の方を招いてみるのも有効です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。