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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第四(療養介護) 3 運営に関する基準 (20) 衛生管理等 後半

定療養介護における感染症・食中毒対策とは?起業者・事業者が押さえるべき4つの実務ポイント


記事の概要:
障害福祉サービスを提供する指定療養介護事業者にとって、感染症対策は利用者の命と健康を守る上で欠かせない衛生管理の一環です。近年、厚生労働省の通知により感染症および食中毒の予防・まん延防止対策の整備が義務化され、「感染対策委員会の設置」や「指針の策定」、「職員研修」、「シミュレーション訓練」といった四つの柱を中心に取り組む必要があります。本記事では、感染症及び食中毒の予防(発生を防ぐこと)とまん延防止(広がらないようにすること)のために必要な対策をシンプルにやさしく解説します。

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1. 感染対策委員会の設置と運営

まず取り組むべきは、感染対策委員会の設置です。この委員会は、施設内で感染症や食中毒を予防し、万一発生した場合に迅速に対応するための対策を話し合う組織です。委員会にはできるだけ幅広い職種の職員を参加させます。例えば、施設長(管理者)、事務担当、医師、看護師、生活支援員(介護職員)、栄養士など、感染症対策の知識を持つメンバーを含む多職種で構成するのが望ましいとされています。自社だけでなく、必要に応じて外部の感染症に詳しい専門家にも協力を仰ぎ、委員として参加してもらうと心強いでしょう。また、委員の中から専任の感染対策担当者(責任者)を決めておく必要があります。この担当者は看護師が務めることが望ましいとされています​。

委員会は定期的に開催します。指定療養介護のような入所施設では、おおむね3ヶ月に1回以上の頻度で定期開催することが必要です。インフルエンザやノロウイルスなど感染症が流行する時期や、施設内で感染が疑われる状況が発生した場合には、必要に応じて随時委員会を開き対策を検討します。委員会で話し合った内容は議事録(会議の記録)を作成し、全職員に周知徹底することが大切です。せっかく立てた対策も、現場の職員一人ひとりに伝わっていなければ実効性がありません。

2. 感染症及び食中毒予防のための指針(ガイドライン)策定

次に重要なのが、事業所としての感染症・食中毒対策の指針を整備することです。「指針」とは、簡単に言えば日常の衛生管理から感染症発生時の対応までをルール化したガイドラインのことです。利用者と職員の安全を守るため、事業所ごとの実情に合わせた具体的な内容で作成します。

指針には、大きく分けて以下の2つの内容を含める必要があります。

  • 平常時:感染症を持ち込まない・広げないための予防策
  • 発生時:万一感染が起きたときの迅速な初動対応策

こうした内容を分かりやすく整理すると、以下のような比較表になります。

区分主な内容
平常時の対策・施設内の衛生管理(清掃・消毒、換気など)
・標準予防策の実践(手洗い、手袋・マスク使用など)
・日常の健康観察による早期発見
・職員の体調管理、体調不良時の報告ルール整備
発生時の対応・感染拡大防止(隔離対応、消毒強化、ゾーニング)
・感染者・症状のある人の記録と状況把握
・医療機関、保健所、市町村福祉課などとの連携・報告体制
・施設内の報告・指示系統(連絡フロー)の整備

このように、日頃の予防策と非常時の対応策をセットで整備するのが指針のポイントです。

特に発生時の対応では、「誰が、どこに、どのように連絡するか」「どこまでの症状が出たら対応を切り替えるか」など、対応の具体性が求められます。保健所や医療機関への報告手順、市町村担当課との連携ルートも文書内に明記し、職員全員が迷わず動ける体制にしておきましょう。

また、指針の作成には、厚生労働省が公表している「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」を参考にするのが有効です。そこには手洗いやゾーニング、嘔吐物処理の方法など、実際の現場で活かせる例が豊富に掲載されています。これをたたき台にして、自分たちの施設に合った実効性のあるルールをつくるのが理想です。

指針は一度作って終わりではなく、定期的に見直しを行い、常に最新の感染症動向に対応できるよう更新していくことも忘れずに。例えば、新型感染症が流行し始めた時などは、柔軟なアップデートが求められます。

3. 職員に対する感染症予防研修の実施

三つ目の柱は、職員研修の実施です。いくら立派な指針を作っても、現場で働く全ての職員が感染症予防の知識とスキルを身につけていなければ意味がありません。そのため、全職員を対象に定期的な研修を行うことが義務付けられています。

研修では、感染症や食中毒について基礎から学び直し、予防・まん延防止の知識を深めることが目的です。具体的な研修内容としては、先ほど策定した事業所の指針に沿って、手洗いや消毒の正しい方法、標準予防策の実践、嘔吐物や排泄物の適切な処理方法、個人防護具(マスクや手袋、ガウン等)の正しい着脱方法といった実務に直結する衛生管理の徹底を盛り込みます。加えて、施設内で感染が疑われる利用者が出た場合の初動対応(誰に報告するか、どこに連絡するか等)についても周知しておくと良いでしょう。

研修の頻度は、指定療養介護のような入所施設では年2回以上が必要です(訪問系サービス事業所などは年1回以上)。つまり半年ごと程度に定期研修を開催するイメージです。また、新しく職員を採用した時には、必ずその都度、新任者向けの感染対策研修を実施しなければなりません。例えば「新人が入ったけど、次の全体研修まで数ヶ月あるから一緒に受けてもらおう」では不十分です。新人には着任直後に基本的な感染症対策研修を受けてもらい、現場に出る前に知識と心構えを持たせるようにしましょう。

研修は座学(講義形式)でも構いませんし、厚労省のマニュアルや自治体作成の教材、オンライン研修動画などを活用して行うことも可能です。自社で講師を招いたり外部セミナーに参加したりする方法もあります。大事なのは全従業員が研修を受けることと、研修で学んだ知識を現場で活かせるようにすることです。一度研修した内容も時間が経てば忘れがちなので、定期研修で繰り返し学び、最新情報もアップデートしていきます。

研修を実施したら、実施日時・参加者・内容(カリキュラム)を記録に残しましょう。これは法令上も求められていることですし、後日スタッフへの周知漏れがないか確認する資料にもなります。

4. 想定訓練(シミュレーション)の実施

最後の柱が、訓練(シミュレーション)の実施です。「訓練」とは、実際に感染症や食中毒の発生を想定した模擬的な練習を指します。研修が知識を学ぶ場だとすれば、訓練は実践力を養う場と言えます。平時から訓練を行っておくことで、万一施設内で感染者が出た際にも職員が落ち着いて適切に動けるようにな。

訓練は年2回以上、定期的に行うことが必要です(訪問系の事業所では年1回以上)。半年に一度は、シナリオを決めてシミュレーション訓練を実施しましょう。訓練の方法は必ずしも実地で大規模に行う必要はなく、机上訓練(テーブルトークによるシミュレーション)と現場での実地訓練を組み合わせて行うのが効果的です。例えば、会議室で「もしも嘔吐を伴う感染症が発生したら…」という想定で各自の対応手順を確認し合う机上訓練を実施し、その後実際に防護具(手袋やマスク、エプロンなど)を着用して嘔吐物の処理手順を練習するといった流れです。その他にも、感染予防策をした上での介助の練習(ゾーニングをして動線を工夫しながらケアを提供する訓練)、疑似患者の隔離搬送の手順、関係機関へ報告連絡する手順のシミュレーションなど、指針と研修内容に沿ったテーマで演習を行います。訓練を通じて役割分担を再確認し、対策手順を体で覚えることで、いざというときスムーズに対応できるようになります。

訓練を行った後も、研修と同様に実施記録(いつ、どんな想定で何を行ったか)を残しておきます。記録を見直すことで「ここがうまくできなかった」「次はこう改善しよう」と課題を洗い出し、次回の研修や訓練計画に活かすこともできます。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 感染対策委員会の設置: 多職種メンバーで構成し、看護師を中心とした感染対策担当者を選任する。定期的に(3ヶ月に1回以上)開催し、流行期・緊急時は随時開催。会議内容は議事録に残し、全スタッフと共有する。
  • 感染症・食中毒対策指針の策定: 平常時の衛生管理や標準予防策、発生時の対応手順(感染拡大防止策、医療機関・保健所等への報告連絡体制など)を網羅したガイドラインを作成する。厚労省の感染対策マニュアル等を参考に、自事業所に合った実効性のある内容にする。指針は定期的に見直し、常に最新の状態に保つ。
  • 職員研修の徹底: 全職員に年2回以上の感染症予防に関する研修を受講させる。新人職員は入職時に必ず研修を実施し、外部委託スタッフ(清掃・調理等)にも施設の指針やルールを周知する。研修内容は現場で実践できるよう工夫し、記録を残して継続的な教育に繋げる。
  • シミュレーション訓練の実施: 感染症発生を想定した訓練を年2回以上実施し、職員が迅速に対応できる力を養う。机上訓練と実地訓練を組み合わせ、嘔吐物処理や感染防護具の着脱練習など具体的なシナリオで行う。訓練結果を記録・検証し、課題は指針や研修内容の改善に反映する。
  • 日常からの備え: 上記の取り組みを単発で終わらせず、日常業務の中で常に衛生管理に努める。職員同士で声を掛け合い、手洗いの励行や体調不良時の報告徹底など基本を継続する。万一の発生時には慌てず指針に沿って対応し、関係機関とも連携できるよう平時から準備しておくことが肝心です。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。