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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第四(療養介護) 3 運営に関する基準 (3)利用者負担額等の受領

「基準第54条」障害福祉サービスにおける利用者負担額等の受領をやさしく解説


記事の概要:
障害福祉サービスの事業者は、サービス利用料として利用者からどのようなお金を受け取れるのでしょうか。本記事では、障害福祉サービスの利用者負担額等の受領(基準第54条)について、シンプルにやさしく解説します。利用者が支払う自己負担の仕組みから、法定代理受領を行わない場合(償還払い)の扱い、そして事業者が追加で受け取ることができる費用の範囲まで、制度の趣旨と実務ポイントをまとめます。

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制度の趣旨(利用者負担額の仕組み)

障害福祉サービスでは、公費による給付が9割(または10割)補助され、原則として利用者本人は1割程度の自己負担を支払います。もともと制度上は償還払い(しょうかんばらい)方式が原則で、いったん利用者がサービス費用全額を事業所に支払い、後で自治体(市町村)に対して給付費分(9割)を請求して払い戻しを受ける仕組みになっています。しかしそれでは利用者の負担が大きく不便なため、実際には法定代理受領(ほうていだいりじゅりょう)方式が認められています。法定代理受領とは、事業所(サービス提供事業者)が利用者に代わって自治体に給付費を請求し受け取る仕組みのことで、利用者は事業所へ自己負担額のみ支払えば済む現物給付の方法です。

この利用者負担の受領に関するルールですが、内容としては、事業所が利用者から受け取れるお金の範囲と方法を定めたものです。基準第54条第1項では、事業所はサービス提供時に利用者負担額(自己負担分)を利用者から受け取ることが定められています(※利用者負担額は原則1割ですが、市町村民税非課税世帯など条件によっては負担上限額が設けられ0円になる場合もあります)。事業所は原則としてこの自己負担額のみを利用者から徴収し、残りの給付費は後述のように自治体から受け取ることになります。

法定代理受領を行わない場合の扱い(償還払い)

障害福祉サービス事業所のほとんどは自治体から給付費を直接受け取る法定代理受領を採用しています。しかし、何らかの理由で法定代理受領を行わない場合(=利用者が費用をいったん全額支払う償還払い方式)では、支払いの流れが変わります。基準第54条第2項では、事業所が法定代理受領を使わずサービスを提供した場合、利用者から利用者負担額のほかに介護給付費(9割相当額)も含めて支払いを受けることができると規定されています。つまり利用者はいったんサービス費用の全額を事業所に支払うことになり、その後、自ら自治体に給付費(9割部分)を請求して受け取る必要があります。この方式を償還払いといいます。

なお、事業所が償還払いを採った場合には、利用者が自治体に給付費を請求するための書類を事業所が発行する必要があります。具体的にはサービス提供証明書(その月に提供したサービスの内容や費用を記載した証明書)を利用者に交付しなければなりません。利用者はこの証明書を自治体へ提出することで、立て替えた給付費分の支払いを受けられる仕組みです。逆に、法定代理受領を行った場合には、事業所がサービス提供の対価(給付費)を直接受領したことを利用者に知らせる代理受領通知書を交付する義務があります(毎月、各利用者ごとに交付します)。いずれの場合も、利用者負担額や給付費の流れを利用者に対して透明化し、金銭トラブルを防ぐことが制度の趣旨となっています。

事業所が受領できる費用の範囲(追加で徴収できる費用)

原則として、障害福祉サービスの対価は公定価格で決められており、事業者はその自己負担額(1割程度)以外に勝手な利用料を徴収することはできません 。しかし、サービスを提供するにあたり、サービス給付の対象に含まれない実費で利用者に負担を求めることが適当と認められるものについては、別途徴収が認められています。基準第54条第3項では、事業所が利用者から前述の自己負担額以外に受け取ることができる費用として、次の2種類を挙げています。

費用区分内容・具体例
日用品費利用者が日常生活で通常必要とする身の回り品の費用。例:歯ブラシ代、石鹸・シャンプー代、ティッシュペーパー代など。
※施設のトイレのトイレットペーパーや共用の石鹸・タオル等、事業所の備品に当たるものは利用者個人の「日用品費」として徴収できません(事業所が自前で用意すべきもの)。
その他の日常生活費
(日常生活において通常必要となるものの費用)
利用者の希望に基づき、サービス提供の一環として提供される日常生活上の便益に係る費用。例:クラブ活動・レクリエーションの材料費、利用者が希望する個別の娯楽サービスの費用、事業所が代理購入する日常生活品の実費など。
※サービスの公定価格に含まれる内容と重複しないものに限られます。


追加費用徴収の留意事項(曖昧な名目は禁止)

事業者が利用者から上記のような追加費用を徴収する際には、いくつか遵守すべきルールがあります。

  • サービスの対価(給付費対象)と重複しないこと – 本来サービス提供料として公費給付されている内容について、二重に利用者に負担させてはいけません。例えば「〇〇管理費」「△△補償金」など曖昧な名目で実質的にサービスの人件費や運営費を利用者に負担させることは認められません。
  • 費用の名目や内訳を明確にすること  – 曖昧な名目で一律徴収することは不可とされています。何にいくらかかる費用なのか、内訳が利用者に分かるように説明しなければなりません。利用者一人ひとりについて使った分を精算し、実費相当額を徴収するのが基本です。
  • 事前の説明と同意を得ること – 利用者から追加費用を徴収する場合、その使途や金額、請求の理由を事前に書面で説明し、利用者の同意を得ておく必要があります。契約書や重要事項説明書の中で明記し合意してもらうことが望ましいでしょう。

上記を守れば、利用者負担額(1割)以外に必要となる実費を利用者に負担いただくことが可能です。逆に言えば、これら以外の費用を勝手に請求することは制度上認められていません。運営基準違反となれば指定取消し等の処分にもつながりかねないため要注意です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 法定代理受領の原則:障害福祉サービスでは利用者の自己負担は原則1割で、残りは事業所が自治体から受領する法定代理受領方式が通常です。利用者に全額を一旦払わせる償還払いは非常に稀ですが、万一その方式を取る場合はサービス提供証明書の交付など利用者へのサポートを確実に行いましょう。
  • 契約時の説明と同意:利用者負担額以外に徴収し得る費用(上表の日用品費やその他の日常生活費など)がある場合、契約時に書面でしっかり説明し、同意を得ておきます。契約書や重要事項説明書に費用項目と金額を明記し、利用者が内容を十分理解できるようにしましょう。曖昧な名目での請求や、説明なしに後から費用請求することは厳禁です。
  • 適正な徴収と記録:日用品費等は利用者ごとに使った分だけを実費徴収するのが原則です。全利用者一律に定額を徴収するような方法は避け、個別精算に努めます。また、徴収したお金の使途がその利用者の利益に直接還元されているか確認し、不適切な転用をしないようにします。金銭の授受は領収書を発行するなど記録に残し、後から説明できるようにしておきましょう。
  • 利用者への通知・情報提供:法定代理受領により給付費を受け取った場合は、毎月代理受領通知書を発行して利用者に交付することが義務付けられています。また、月々の利用者負担額の明細や追加徴収した費用の内訳についても、利用者やご家族に分かりやすく伝えることで信頼関係を築けます。金銭に関する情報開示はトラブル防止の基本です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。