指定療養介護の取扱方針(基準第57条)をやさしく解説 – 意思決定支援とサービス品質の向上
記事の概要:
指定療養介護の取扱方針に関する解釈通知において、第2項~第4項では、利用者の意思決定の尊重やサービス内容の工夫、サービスの質の評価と改善について規定されています。本記事では、その通知の意図と実務的な意味を、専門用語をかみ砕きながら分かりやすく解説します。
▶︎ 療養介護 関連記事まとめページはこちら
利用者の意思決定を支援・尊重する(基準第57条第2項)
基準第57条第2項では、利用者の意思決定の支援について定めています。簡単に言えば、「障害者の方が自分の生活について自分で決められるように最大限サポートし、その意思を尊重しましょう」ということです。厚生労働省が示した「意思決定支援ガイドライン」に沿って、以下のような基本原則を踏まえるよう求められています。
- 本人の自己決定の尊重: 支援にあたっては、まず何よりも利用者本人の「自分で決めたい」という思いを尊重します。例えば、日々の過ごし方やケアの選択について、可能な限り本人の希望を優先しましょう。
- 選択の尊重: スタッフから見ると「それで大丈夫かな?」と思うような本人の決定であっても、それが他の人の権利を侵害しない限りはできるだけ尊重します。誰にも迷惑をかけない選択であれば、本人の個性や希望として受け止める姿勢が大切です。
- 意思を推定する工夫: 本人が自分の意思や好みをうまく表現できない場合は、本人をよく知る家族や関係者が集まって情報を共有します。そして、「きっとこうしたいのではないか?」という本人の意思や選好を根拠を持って推測します。専門職員だけで判断せず、みんなで話し合って本人の気持ちを汲み取る工夫が求められます。
また、利用者が実際の経験を通じて判断できるように、様々な体験の機会を提供することも重視されています。たとえば新しい活動を試してもらったり、選択肢を実際に見せたりして、本人が「やってみたらこう感じた」と判断材料を増やせるようにします。さらに、支援した内容や判断の根拠を記録に残すことにも努めましょう。どのような話し合いをしてどんな意思を確認したか、といった記録をしっかり残しておけば、後で見直したり他のスタッフと情報共有したりする際に役立ちます。
支援に必要な事項を計画に盛り込む(基準第57条第3項)
第3項では、「支援上必要な事項」を利用者のサービス計画に含めることとされています。難しく聞こえますが、簡単に言えば「利用者の生活全般に関わる大事なことは、サービス提供の計画にしっかり書いておきましょう」という意味です。具体的には、療養介護計画(個別支援計画)の中に以下のような内容を盛り込みます。
- 目標やサービス内容だけでなく日々の予定も記載: 支援計画には、その人の目標(どうなりたいか)や具体的なサービス内容だけでなく、日常の行事や日課なども含めます。例えば「毎朝の習慣」「週に一度の外出イベント」といった、その人の生活リズムや楽しみも計画に書き込んでおくのです。こうすることで、ケアの現場で職員が交代しても、利用者の一日の流れや大切にしている活動が共有され、支援漏れを防げます。
- 利用者の意向を反映したサービス提供体制: 計画を立てる際には、単に事業者側の都合でスケジュールを組むのではなく、利用者本人の意向(こうしたいという希望)をできるだけ反映した体制を整えます。例えば「夜は早めに休みたい」という希望があればスタッフの配置時間を調整する、といった配慮です。これは指定居宅介護(在宅での介護サービス)の考え方と同じく、施設であっても「その人らしい生活ペース」を尊重した運営をしましょう、という趣旨です。
ポイントは、机上の計画だけでなく利用者の実際の生活に寄り添った内容にすることです。利用者やご家族との面談を通じて、「普段どんな生活リズムなのか」「大事にしている習慣は?」といった情報を集め、計画に反映させると良いでしょう。そうすることで、利用者にとって安心できるサービス提供体制を築けます。
サービスの質を評価し、継続的に改善する(基準第57条第4項)
第4項では、事業者によるサービスの質の評価と改善について規定しています。端的に言うと、「事業者は自分たちの提供しているサービスの質を常にチェックし、良くする努力をし続けなければいけません」ということです。
具体的には、まず事業者自身による定期的な自己評価を行います。サービスを提供しているスタッフや管理者が、「支援の方法に問題はないか」「利用者さんの満足度はどうか」などを振り返り、評価する仕組みを持つことが大切です。例えば定期的にアンケートを取ったり、スタッフ会議でケース検討を行ったり、サービス提供記録を見直したりといった方法があります。
さらに重要なのが、第三者による外部評価の導入です。第三者とは、事業所とは利害関係のない外部の専門家や評価機関のこと。自分たちだけでは気づきにくい課題も、外部の目で見てもらうことで発見できます。外部評価の例としては、福祉サービス第三者評価機関による訪問調査や、外部の有識者に運営状況をチェックしてもらうことなどが挙げられます。「外部評価の導入に努め」とあるように義務ではありませんが、できるだけ取り入れていく姿勢が求められています。
こうした自己評価と外部評価を通じて見えてきた課題をもとに、サービス内容を改善していきます。いわゆる「Plan→Do→Check→Act(PDCA)サイクル」を回すイメージで、計画・実施・評価・改善を繰り返し、サービスの質を向上させていくわけです。常に「もっと良い支援はできないか?」と考え、改善を続けることで、利用者にとって安心・満足できるサービス提供者であり続けることがこの条項のねらいです。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者の意思を最優先に: 支援時には利用者本人の意思決定を尊重し、自己決定を支える工夫をしましょう。他者に危害が及ばない限り、本人の選択をできるだけ受け入れる姿勢が大切です。支援の過程や本人の意向は記録に残し、情報共有と振り返りに役立てます。
- 生活丸ごとの支援計画: 療養介護計画(個別支援計画)には、目標やサービス内容だけでなく、利用者の日課や行事予定など生活全般に関わる事項も盛り込みます。計画策定時には利用者の希望やペースを聞き取り、サービス提供の体制に反映させましょう。
- 質の評価と継続的な改善: 自事業所のサービス品質を定期的に自己評価し、不備や改善点をチェックします。可能であれば第三者による外部評価も受けて客観的な意見を取り入れ、サービスの質を向上させ続けることが重要です。「評価して終わり」ではなく、評価結果を次の改善に結びつけるサイクルを回しましょう。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
